家主から不当な賃料値上げを要求されたらどうすればよいか

借家法第二一条、借家法第七条は、賃料決定後、相当期間を経過することによって、従前の額のまますえおくことを不相当とする事情が発生した場合、増減額請求が発生するとしています。そして、その不相当とされる事情として、

借地法
 土地に対する租税その他の公課の増減
 土地の価格の高低
 近隣の地域との比較

借家法
 土地または家屋に対する租税その他の公課の増減
 土地または建物の価格の高低
 近隣の家賃との比較

をあげていますが、これは単なる例示と解釈され、またこれらの事情があったからといって、必ずしも当然に増減額請求が認められるわけでもありません。
 つまり、増額請求が認められるには、このような事情が発生した結果、従前の額が不相当になったことが必要であり、たとえ土地価格が高騰したからといっても、従前の賃料が、特に高額であれば、増額請求は認められないこともあるわけです。また、近ごろのように一年とか二半の短期の契約期間は、賃料のすえおき期間とも解釈てきますから、期間中の増額請求はちょっと無理です。
 しかし、実際には、どの程度の額が相当な額であり、どの程度が不相当な額かが問題となります。
 判例の中には、地代の算定の基準として、次のような考え方を示しているものがあります。

{更地価格(時価)−借地権価格}×0.06×1/12+税金その他管理費用=適正地代(月額)

 これは、東京地裁昭38年7月5日判決、金沢地裁昭和38年9月18日判決などですが、こうした考え方の特徴点は、地代を適正利潤とみて、半五分ないし七分を適正利率とするところにあります。そして、投下資本の算定を、単純に更地価格とせず、借地権設定に当たり権利金等を支払っていれば、借地権価格を更地価格から控除するものです。したがって、前記東京地裁判決では、更地価格の二割を土地価格として、その年六分を適正利潤とし、固定資産税その他の管理費用をそれに加えたものを適正地代としています。
 家賃に関する判例には次のような考えをとるものがあります。

{(貸主の建物に対する投下資本×適正利潤率)+地代相当年額}×1/12=家賃(月額)

これは、松山地裁昭和38年1月8日判決などにあらわれていますが、また、

(建物に対する適正利潤+税金・管理費用+敷地の地代相当年額+土地の税金・管理費用)×1/12=家賃(月額)

とする東京高裁昭41年6月28日判決のようなものもあります。
 このような裁判例は、適正利潤率を、土地については年三分から五分位まで、建物については年五分から七分位とみています。さらに他の一説では、借家権価格を算定して、これを建物の敷地価格から控除して底地価格を算出し、これに適正利潤率をかけあわせ、税金及び管理費用を加算する考え方です。いずれの考え方でも、地主、家主側がよくやる、単純に更地価格の現価に利潤率をかけあわせ、税金分を上のせする考え方よりはましてすが、結局、いまのような急激な地価の上昇では、地主、家主側は労せずして賃料を上げていく仕組みになるわけで、不合理をまぬがれません。
 最高裁判所は、借地の地代増額請求に関して「借地浩一二条による増額請求があった場合、裁判所は同条所定の請契機を考量し、具体的事実に即し、相当賃料を確定すべきであり、その際、原判決の判示するような底地価格に利子率を乗ずる算定方法も一つの合理的尺度として使用できるものではあるが、この算定方法が他の合理的算定方法に比して本則であるとまで解すべきではない」と判示していますが、これは、単純な利回り方式による増額請求に対する反論として利用できる判例です。

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間取り

新規契約の場合の賃料と、契約継続中の賃料改訂の場合とでは、ある程度ちがいがでてくるのも当然と考えられます。賃貸借契約の場合、契約当時の土地建物の利用目的、利用状況、契約の長短、賃貸人の側の管理状況など、具体的なケースによって個別的事情がいろいろありますから、その適正資料というのはあくまでも個別的に判断するべきです。この点、原地代に、その土地価格の上昇率をかけあわせる、スライド方式を採用する判例もありますが、契約当初の事情をある程度重視する点で、利回り方式よりは合理的でしょう。しかし、現在のような地価の上昇では、この方式にもなお問題がでてきます。なぜなら、借地人の支払能力、負担能力が、賃料の上昇ほどに上がっていないからです。従って、賃貸借開始の時期が古ければ古いほど、先の判例で考えているような、経済的に考えた賃料と実際賃料とに開きがあり、格安にみえるようなことがあっても、それはやむを得ないと考えるべきでしょう。
 借地法、借家法は賃料の増額につき、当事者間に協議がととのわないときは、その増額を正当とする裁判が確定するに至るまでは、相当と認める賃料を支払うをもって足りるとし、受領を拒否された場合、その相当と認める賃料を供託すればよいのです。相当と認めるとは、賃借人が従前の賃料額を相当と考えれば、従前の額でよいわけで、増額請求の裁判で負ければ、超過額に年一割の利息を支払わなければなりません。
 地主、家主側から増額請求が訴訟提起された場合、裁判所は不動産鑑定士の鑑定価格を有力な手がかりにして判断する場合が多く、実際には地主、家主側の請求する額よりも高いという場合すらありますので、鑑定価格がいちばん問題になります。不動産鑑定士の鑑定の場合、先に述べたような、建物や敷地の現価を求め、これを元本として適正な利潤率をかけあわせ、税金や管理費や減価償却費など貸主の負担となる諸経費を加えて求める方法と、近隣の賃料事例を比較する方法とを関連させてやっていますが、現価の評価にもかなり差があり、利潤率についてもいろいろな考え方がありますので、賃借人としては、再鑑定を求めるとか、鑑定書の矛盾点をつくとか、借家人側としても鑑定士を依頼して鑑定書を提出するとかして、対抗する必要があります。
 ただし、近隣の賃料との比較という方法は、賃貸借関係はそれぞれにみなちがいがありますので、いちばん問題をふくんでいるようですから、充分注意する必要があります。
 このように、近隣の地代家賃がどんどん値上げされていくと、鑑定価格も高くなり、増額請求の裁判でも賃借人側は結局、押されていきます。こうした場合、借地人や借家人が団結して、借地借家人組合をつくり、組合として交渉に当たり、裁判も受けてたつということになりますと、また、情況はちがってきます。
 借地借家人組合は、困っている借地人や借家人の人たちが集まって、一定の規約、それも簡単なものでも決めて、実際に心を合わせ、団結して行動すればよいのであって、むずかしい法律上の定めも判限ももちろんありません。代表者は決めた方がよいのですが、その場合も、組合に集まった人たちが、何事も代表者まかせといった気分でいますと、その組合は決して強いものにはなりません。みんなが自由に発言でき、決まったことはみんなで守り実行していくということが徹底すれば、組合は地主や家主にとって大変こわい存在となるでしょう。
 また、近頃のように諸物価の値上がりがつづきますと、家賃をまったく値上げしないと頑張れない場合も少なくありません。そのような場合に、値上げの幅に争いがあるというだけで、時間や費用の かかる本案訴訟にもつれこむよりは、民事調停手続を活用するようにした方がよいことがあります。調停は借家人側からも申立てることができますし、本案訴訟になってからも、双方が同意すれば調停手続に移すことができます。また、弁護士を頼まなくても、本人だけて手続きをすすめることも充分可能です。

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