無断転貸を理由にした契約解除に対抗するには

私は、七年前から現在のお店を、家賃十二万円で借りて、すし屋を営業しています。幸いに今の店が好調なので、今度、本店を駅前に借り、この機会に店も大きくしたいと思っています。ついては、いまの店を前からいる従業員に委せることにしたいと思います。ただし、こうした場合、家主の方から又貸しとして、契約を解除されたりしないでしょうか。

 無断転貸だが契約解除理由にあたらないとされた例として、Wさんは未亡人で女手一人でクリーニング屋を、店舗を賃借してやっていました。ところが、過労、心労が重なって、胃かいようになり、何度か長期入院をくりかえすことになり、営業がほとんどできなくなったため、遠い親せきのYという男の人に営業補助者として、店の営業を手伝ってもらうことにしたのです。ところが家主は、これを無断転貸として契約を解除し、明渡裁判を起こしてきました。この裁判は、結局、Wさんが勝ちましたが、その理由は、簡単にいえば一応無断転貸にはあたるが、家主との信頼関係を破壊し契約解除するに至るほどの不信義な行為ではない、背信行為と認めるに足りない特段の事情がある、ということでした。
 店舗は解除通告前、数年前から賃借していたものであり、Wさんはその一部に居住していました。Yさんは、居宅を別にもち、店舗ももっていましたが、店名をかえ、包装紙に加えた店名を印刷して利用するなどし、自分の店の取次店としても利用しだしたため、転貸と認定したものと思われます。しかし、WさんはYさんから賃料や別益金をとったりしていたわけではありません。また、営業名義人もWさんであり、役所への届けもWさんのままで、WさんとYさん間では、Yを営業補助者とする念書もとり加わしていました。それに、Yさんは、手伝いを開始した頃、家主に挨拶に行きましたが、その時、家主は何の異議も述べず、解除通告はその一ヵ月後頃に来たのでした。
 こうした場合、一般的に解除権の行使はどういう場合に認められ、どういう場合に認められないのでしょうか。
 借地、借家の転貸、借地、借家権の譲渡は地主、家主の同意、承諾を要し、もしこれに違反して無断で譲渡し、転賃した場合、契約は解除されてもしかたがないことになっています。
 しかし、どういう場合に転貸ということができ、賃借権の譲渡といえるか、また、転貸、譲渡があれば、どんな場合でもすぐ契約解除ができるかという問題があります。

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判例や通説の考え方は、無断譲渡、転貸について、形式的外形的にそういう事実があっても、それが当然には契約解除の原因にはならず、賃貸人賃借人相互の基本的な信頼関係を破壊するような背信行為があった場合に、初めて解除できるものとし、背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合は解除権の行為は認められないとするものです。
 ここで賃貸料と賃借人間の信頼関係とは、まず第一に賃料の支払義務がきちんとつくされていることであり、第二はその賃借建物の使用状況上問題がないという、経済的利益です。しかし、この家主 の経済的利益に直接関係しなくても、賃借人が転借人に高額の賃料を支払わせて中間利得を得ているとか、将来の賃料支払いの期待をマイナスするような対人的な信用の低下とかが問題になっています。
 従って、賃借人と転貸人との間に親密な身分関係があるとか、個人経営から法人に経営をきりかえた場合などで、社会的には実態が変わらない場合などは、背信性を否定する特段の事情として強く考慮されます。
 Wさんの例のような店舗賃借人の場合、第三者と共同経営を始めようとした場合がいちばん問題になります。
 最高裁のこの点に関する判例としては、喫茶店をやっていたA会社がBとトンカツ屋を共同経営することになり、Bが調理販売を担当し、Aが場所や、什器、備品を提供し、Aが売上高の五%を利益金としてとる契約で始めたケースで、「BはAとの共同経営の契約にもとづいて、共同経営者の一人として、Aと対等な立場において建物の一階を飲食店経営のために占有使用していることがわかるのであって、Aの使用人その他Aの占有補助の機関として占有使用しているものでないことはもとより、Aに対して従属的な関係において占有使用しているものでないことは明らかである」として、無断転貸を理由とする契約解除を認めたものがあります。
 ここで示されている考えは、BがAの使用人、従業員であれば、全然間題にならないということであり、共同経営であっても、AとBが対等ではなく、Aが主導的立場にある場合は、必ずしも転貸にはならないということです。
 下級審の判例で、賃借人が使用人に店舗を完全にまかせて、賃借人が営業利益の三割を受けている場合に、家主の無断転貸を認め、賃貸契約の解除を有効としているものがあります。
 以上の説明でお分かりのように、本問の場合、その店を、使用人、従業員にまかせるということが、いわゆる「のれん分け」のようにして、その使用人に独立して営業をやらせ、その利益金の何割をとるといったかたちであれば、やはり転貸または賃借権の譲渡と認められ、家主の承諾がなければ、解除される危険があります。
 しかし、従業員にまかせるということが、純然たる支店であって、経営の主体は質問者であることに変わりがなく、従業員は給料を受けとるといった使用従属の関係にあるだけなら、その従業員は、質問者の占有補助者にすぎず、転貸にはあたりません。
 後者の場合、特別に承諾を求める必要はありませんが、家主にも挨拶にいって、経営の関係をよく説明し、トラブルを防ぐ配慮だけは必要です。
 いずれにせよ、なかなか難しい法律問題がありますから素人判断は危険です。事前によく弁護士などの法律専門家と相談しましょう。
 転貸について家主の承諾が必要だとみられるケースで、家主がなかなか承諾してくれないときには、調停制度や非訟手続を利用するのも一つの方法です。

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