敷地があいまいな公有地にまたがる建物の撤去要求にどう対応するか

ある公団の用地のすぐ近くに建っている古い店舗を買い取り、ずっと営業していました。土地は、Aという人物の所有地で、地代として月一万五千円ずつ支払ってきましたが、その公団から、不法占拠の建物だから取りこわして、土地を明け渡せといってきました。どうやら、Aの所有地と公団用地との地境がはっきりしないところに、私の買った店舗が建っているらしいのですが、どうしたらよいでしょうか。

 古い店舗などのうちには、戦後間もなくのドサクサの頃、国有地や公有地上に、店舗が建てられたり、地境上に建てられたりしていたものが少なくおりません。以前このような例示ありました。
 東京、東中野の駅前は、終戦後、いわゆるヤミ市ができ、ほんとうのバラックの店がひしめきあっていました。依頼された方々のお店は、ちょうど、国鉄の線路脇、崖に沿って建てられていたものです。
 この店舗は、そのヤミ市マーケットの一部分であり、N組という、この地域のいわば実力者が建てたものでした。店は、当初は、形ばかりの車をつけて、屋台をよそおっていたというのですから、間ロー問半、奥行一間がせいぜいです。しかし、この屋台からいつの間にか車がとりはらわれ、戦後二十数年、駅前通りの商店街としてにぎわってきました。そして、国鉄当局から、ちょうど本問のような内容証明郵便が来、N組からは、かなり強圧的に店舗の明渡しを要求されたしたのです。その時点で商店街のみなさんが相談し、借家人組合、T会というのをつくり、規約も定め、それぞれのかかえている間題もみな会に持ちだして相談しあうことにしました。
 借家か借地か、ということは、この間にたいへん複雑な経緯があったからです。営業している人たちの中には、古い人もいれば、比較的新しい人もいましたが、古い人たちの話では、当初、場所代のようなものをおさめていたが、数年ほどしてN組から店を買ってくれといわれ、ある程度まとまったお金を支払い、それからは、地代としてN組に、月々一定額のお金を支払っていたというのです。ところが、その後また、数年ほどしてから、N組は家賃という名目でしか、月々のものを受け取らなくなり、しかたなく、家賃として支払ってきたというのです。新しい人は、そうした事情は知らず、譲渡権利金のようものを支払って、前営業主から店舗の権利を買い、家賃として最初から支払ってきた人もいます。借地人組合というべきか、借家人組合というべきか、迷ったのもそんなわけでした。

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N組や、国鉄から急に立退きを要求してきたのにはわけがありました。その頃、東京都の都市計画として、駅前広場造成計画が本決まりになり、事業計画ももちろん決定し、できるだけ安上がりに、そして弱い権判者は早くふるいおとそうとする計画がそのうらにあったと思われます。
 会と私たちは「国鉄が不法占拠たというならその根拠を示せ」と、管理局に交渉におもむき、国鉄側の図面の呈示を求めました。二、三回、交渉のやりとりのうち、国鉄側の示した図面では、用地上にかかる店舗もあれば、ほとんどかからない店舗もあるという状態で、しかも、その線びきの根拠は、応対にでた係員も説明に窮する程度のものでした。私たちは、長期戦を覚悟し、N組関係者である土地の登記名義人宛に、地代として賃料を供託することにしました。
 N組、国鉄、そして東京都を相手とするこの争いは、足かけ九年に及び、結局、土地についても一定額の補償を得、円満に解決しました。
 解決に至る経緯をもう少しくわしく述べましょう。まず、N組、国鉄のゆさぶりの後、やってきたのが東京都の都市改造部係員でした。そして、最初は、あなたがたの土地占有が不法占有であれば、土地の補償は何もないということであり、争いがあれば、都は補償金を供託してでも、収用手続はすすめられる、ということでした。私たちは、直接、都の都市改造事務所にも出向き、国鉄用地とN組との地境といっても不明な点が多いから、是非、都の方でも国鉄やN組と会員との交渉の仲立ち役になって欲しいと要請しました。
 しかし、その当時の都市改造部改造事務所の態度は、権利の争いは当事者どうして解決すべきだという、まるで木で鼻をくくったような態度でした。当時、会と私たちの態度は、こうした都の態度からみて、できるだけ頑張る以外ないということ、国鉄から裁判を起こされてきたらこれに受けてたつこと、Nから占有妨害でもされてきたら仮処分でも申請して、これと対抗する以外ないということでした。そして、都の任意買収の協議には簡単に応じないことを決めました。なぜなら、土地に権利がなければ、補償金などふけばとぶようなものだからです。
 そして、その通りの筋道となって、東京都の任意買収が、崖ぷちでない、駅前、仲通りの業者についてほぼ完了した頃、国鉄当局から、家屋退去、土地明渡し並びに多額の土地使用損害金請求の本訴が起こされ、買収に応じた店舗の取りこわしにからんで、共同施設や、通路の占有妨害等が予想される事態になりました。私たちは占有保全の仮処分を申し立て、N組とは裁判上和解し、占有は妨害しないことを確約させ、国鉄との本訴が続けられていくことになりました。そうした事態の中で、東京都の買収の交渉もだんだんと比較的、適切な態度に変わり、地主N組とも都自身が交渉にのりだし、会員業者の占有土地面積に応じ、一定割合の袖償をN組が都からもらう補償金から出させる了解をとりつけ、会員業者も都の任意買収に応じたのです。国鉄の本訴はこれにより取下けとなりました。
 その間、足かけ九年近く、こうした、複雑な権利関係の中で、一応は土地占有関係について一定の補償金もとれたこと、その間、誰におびやかされることなく、平穏に営業をつづけられたことなど、個人では決してできなかった成果をかちとれた点で、よかった例といえます。
 一般に地境のはっきりしていない土地で、長年建物の敷地となっている部分まで、自分の土地部分として、明渡しを求めることは容易なことではありません。なぜなら、登記簿上の坪数の表示なり、登記所に備え付けてある公図上の記載が、実際の坪数なり、地形、境界と異なることはよくあり得ることだからです。そしてこのことは明渡しを請求するものが国であれ、公益法人であれ、地方自治体であれ、変わりはありません。
 この民有建物による土地の占有を公有地を侵害する不法占拠として、明渡しを求めるには、やはり民事訴訟法の定める手続によらなければならず、その立証責任は明渡しを求める側にあります。そして、土地収用法に基づく強制収用の手続によることができるのは、同法第三条一項各号に規定する公共事業の遂行上必要な場合に限られます。
 本問のような場合、まず公有地上に建物があるという公団側の主張の根拠について、出来るだけ充分な説明を求め、その根拠となっている図面などがあるのか、ある場合にはその写しを請求するなどの調査活動が必要です。そうした調査活動の結果、相手方の根拠があいまいなものなら、訴訟はうけてたつという気がまえをつくっていく以外ないでしょう。ただ、建物の占有について長い年月がたっているなら、古い時期にはどんな状態であったのか、建増し、移築などの事実はないのか、公団側、あるいは古い所有者など関係者の文書なども残っていないかどうか、関係者の証言を求めてテープにとっておくなど、証拠蒐集活動も必要でしょう。
 いずれにせよ、相手がお上だからと萎縮してしまってはなりません。落ち着いて専門家と相談し、適切な対抗策を着実に講じて行くことが肝心です。
 なお、公団側のいい分が疑問の余地のないものであり、買った建物を取りこわす以外ないような場合、売主の瑕庇担保責任にもとづき、民法第五六六条あるいは第五七〇条を類推適用して、このような事実を知ったときから一年以内に、売買契約を解除し、売主のAに対し代金の返還請求をするとともに、損害賠償を請求することが可能と解されています。

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