階段の遊び

 階段を遊びの領域にまで拡げたのは、ヨーロッパでもルネサンス以降です。日本では高層の建物といえば、過去に於ては仏塔ぐらいのもので、これなどは上に登ること自体重要な目的ではないので、階段は全く脇役です。一般の住まいに至っては、平家建てが多いので階段などは全く実用の、それも多くは無理したものである。数層にもなる城郭も実戦向きです。もう少し城郭建築に平和時の遊びの要素が加われば、面白いものがあるいは生れたかも知れませんでした。
 ここでは通路という本来の機能以外の部分を主として採り上げてみたわけです。

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 回り階段をどこまでもぐるぐる登っていく。中世の石造や煉瓦造の塔などの階段は区切りがありません。見上げるような高い石段をもった山地の神社や仏閣などは、登り始めはよいが、途中で息が切れます。だがまだまだどこまでも続いています。目的が修行ならこれでも我慢もできますが、日常生活ではそうはいきません。
 適当な場所で階段を中断して床を設けます。これが踊場です。建築基準法でも、保安上から踊場間の垂直距離の制限を設けて、あまり多い段数になるのをさけています。
 独立した床であって、階段の段の幅が少し拡がったというのではかえって危険なので、階段の幅員に準ずることにしています。住まいの階段でも途中一ケ所の踊場はほしいものです。
 踊場は途中の小休止の意味と、もう一つ、階段の方向転換という役割も加わります。踊場をうまく利用すれば、そこを基点として、自由な方向に誘導することもできます。
 また踊場そのものを広くすることによって、小さな別の空間がつくりだせれば、登るのもまた楽しくなります。中二階とか、ギャラリーとよばれるものがこれに当り、ちょっとした読書コーナーにもなります。
 こうした空間利用の場合は、踊場下の高さが問題で、下を物入れにする場合などは自由ですが、通り抜け、広間、アルコープなど、その下に入って使うものだと、ニメートルー〇センチ以上の高さを必要とすることを考慮にいれて、踊場の高さを考えておかねばなりません。
 踊場を境として、ある角度をもった階段を、折れ階段、折れ階段のうち、一八〇度のもの、全く方向転換した階段を、屈折階段といいます。階段で最も一般的のものです。
 煉瓦造のように小さなピースを積上げた構造では、自由な曲線の壁もつくり易いので、壁面に沿ったなだらかな曲線階段も多い。曲線階段の曲線が円になったものを、回り階段といいます。いずれも、踊場を中心にして次の空間に自由な方向で連絡するもので、ここで立体的な感覚や方向感覚が眩惑されます。一回ぐらいの方向転換ではそれ程でもありませんが、二回三回と繰返され、それも登ったり降りたりさせられると、大抵の人はどちらに向っているのか見当がつかなくなります。
 複雑なホテルのロビーなどをぐるぐる歩いていると、どの階にいるのか見当がつかなくなることがよくあると思います。回り階段がこれに加わるとますます眩わされます。
 実際に歩いてそうなのであるから、設計図で理解することはなおさらむずかしい。普通、建築の図面は平面図にしろ、立面図一断面図にしても、写実的な表現なので、一般の人でも慣れれば理解し易いが、階段となるとそうはいきません。特に回り階段は、平面・立面では表現できても視覚的に誤って理解され易い。これは専門家でもそうであるから気を付けないといけません。だからこそ、狭い空間をうまく利用することもできるし、遂に広い空間ならばそれなりに自由に駆使することもできるわけで、空間の利用とか空間の遊びには恰好の素材といえるわけです。

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