部屋と庭との境目

 部屋と庭との一体化の考えは、暑いところに発達するようです。南欧スペインの、テレスを通じての中庭への誘導など、建物と庭とは全く一体の良い例です。石造とか煉瓦造のため、大地と住まいとの境目が定かでないから、なおさら一体化がうまく解決されています。
 日本の場合は、暑さを防ぐ意味で南面が開放されているため、庭との一体化は原則として南側に集中されます。日本における中庭は、庭との一体といっても、南面の主庭に対して別の目的があります。

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 住まいの南面は外に対しては、開放しているときは無防備に近い。不思議と庶民の間には、同一民族の気高さから、外敵に対してはそう神経質ではなかったからでしょう。そのうえ、床下の換気という点からも、床高はやや高床に属するので、一体化はここでも不利です。
 素足で歩く、畳という、大地から見れば全く異質の床から、庭への接点は、高床という不利な条件にもかかわらず、いくつかの媒体を使って巧みに解決しています。底面からの南面のたたずまいの高低に富んだ脚部の構成は、日本住宅の見事な特色をなしています。桂離宮の古書院から広縁、月見台、沓胆石のあたりのたたずまいは、その代表的なものでしょう。
 部屋と底との境目を演出する仕掛けの上は、強い日射を防ぐためや、雨を防ぐために、出来る範囲で軒の出を深くとるようにします。この屋根の出を延長したものが日本での土庇であり、イタリーのロジアです。独立柱を立て、前方は開放の屋根付きの外廊状のものです。これに床が設けられると縁側になり、建具が嵌め込まれ、部屋に組入れられるようになると、本来の目的からはずれて振出しにもどることになります。
 土庇の豊かさと快適さは使ってみないとわかりません。贅沢のようだが日本の気候にも合い、底と部屋とのつながりは絶妙です。
 建物で底を囲んだ中庭は、日本では一般に主底ではありません。大きな平面の家では、採光や通風のためにも、中庭を設けると平面計画がっくり易い。そしてここは全く外部とは縁が切れているか、あるいは建物に準ずる塀によって囲まれた空間です。部屋の一部としての考え方はこの方がより濃厚ですが、ここは庭に出て使うというよりも、視野の上から部屋との一体感を味わうという意義の方が強い。だから比較的小規模です。
 スペインのパティオは同じ中庭でも主庭です。ここに出て部屋と同じように使う。周囲は建物であるいはしっかりした煉瓦とか、石の塀で囲まれた、全くの別天地である。外に拡がった庭というよりは、建物に囲まれた生活の場です。かつては外敵からも退避できたであろう別の空間です。
 イタリーなどの都市に多く残っている広場も、都市という拡がりの中でのパティオのような市民の生活の場でした。広場の周囲は高い建物で囲んで、全く他の部分とは別の世界をつくっていた。同じ考え方です。

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