住み方の課題

住まいと住み方の間には、長い間にわたって次第にかたちづくられてきた一定の伝統的な対応関係が成立していました。階級的、身分的制約、それと結合した家業、その地方の気候、風土、建築材料などを背景として、これに徒弟奉公によって継承される建築技術が結びつけられ、通り庭式の町家、四つ間取りの農家など、典型的な住宅の型が生みだされてきました。それと同時に、住宅の型と表裏一体をなすところの、住み手が課せられた生活条件のなかで営々と築いてきた生活の型、また礼法にまで規範化された住み方の型も存在していました。一見無性格にみえる日本の住まいは、この住み方の確立によって明快な機能構成を実現していたのです。しかし、これらの住まいと住み方の伝統的な関係は、次にのべるような様々な要因によって急激に変化し、あるいは現在全く破壊されつつあるのが実状です。

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原因の第1として戦後の激しい住宅難、それにひきつづく急激な都市化にともなう住宅難を契機として、旧い住宅の型は完全に破壊され、これに変わって住み方の工夫の余地もないような、狭小粗悪住宅が横行していたことです。
第2は、対米追随政策にもとづくアメリカ文化のとうとうたる流入が、文化生活との名の下に、これまでの旧い住み方を封建的として否定したことです。アメリカ的生活様式の皮相な模倣とともに、電化製品を中心とする耐久消費財が無批判に旧い住宅に持ち込まれ、伝統的な住み方はかえりみられなくなりました。
第3は、テレビを尖兵とするマスコミの広汎な普及が、都市生活を無秩序に地方や田舎に持ち込み、その地方独特の住まいや住み方のつながりを断ちきりつつあることです。
これらの結果は、結局これまでの旧い住み方や住宅の型を破壊し、住まいと住み方の関係を混乱した状態に陥れました。特に勤労大衆の生活においては、その生活水準の低さゆえに一層のその混乱の度が深められています。このような混乱の中で、真に生活の向上を約束するような住まいと住み方の対応関係は、いかなるかたちとして確立されるべきか、バランスのとれた対応関係を再びとり戻すためにはいかなる方法がとられねばならないか、住宅計画のなかに住み方と管理の存在する意義がここに問われねばなりません。住宅計画は単に構造物としての住宅をつくるだけでなく、住宅を通じて生活の創造に参加するからであり、生活の発展、向上は、住まいと対応した住み方の確立によってはじめて達成されるからです。住み方は単なる居住の技術だけではありません。それは住まい、住宅を合理的に使いこなして、新しい生活創造を実現する住み手の主体的な行動の体系です。よって、より良い生活のためによりよい住み方、そしてそのためのより良い住まいが求められることとなります。
その一方で住まいは住み方にとって、その発展的創造を保障する必要にしてかつ十分な条件になりうるかどうか、という問題が残ります。つまりよりよい住まいができれば、住み方は自動的に新しい方向に変革されていくかという問題です。
馬鹿でも間違いなく安全に使えるという言葉があるように、それがすぐれた道具や機械の代名詞となっているように、ここでは物のもつ性格が使いかたを大きく規定していることがわかります。しかしそのことは、道具、機械と使い手の間の関係の一側面を論じているだけであり、道具、機械一人の系の発展を、歴史的に把握しているものではありません。使い手である人間が馬鹿であれば、道具や機械は発展しないで現状で固定化されてしまいます。生産の対象や条件が変化してきたとき、それに対応してどのようにすぐれた使いやすい道具、機械を作り出すかということは、やはり使い手である人間の創意工夫によらねばならず、また事実、そのような努力によって道具、機械の発展は導かれてきたのです。使い手である人間には、現在与えられた道具や機械をいかにうまく使いこなすかという技術や技能の修得と同時に、それをもっと使いよくしていくには、あるいは違った条件の下で使うためには、どのように改良、工夫していくべきかという、観察、実験、調査などの一連の思考作業が要求されるのです。
住まいと住み方の関係についても同様であり、住みやすい住まいがなければ、どれほど住み手が努力してもその結果には一定の限界があります。しかしよい住まいがあれば必ずよい住み方が生まれてくるとは限りません。同じ住まいでありながら、住み方いかんによってはその空間はいきいきともするし、全く死んでしまうこともあります。すぐれた機械や道具を使いこなすためには、その操作に熟練したすぐれた労働者が必要であり、場合によっては、切れないハサミも使いようによっては切れるのです。いわば住まいと住み方の関係には、身体の動きに密着したかたちをとる衣服と人体との関係などとはちがってある程度のゆとり、相対的な行動の自由度があります。このことが住まいからの住み方の相対的独自性を可能とし、そこに住み方の工夫、課題が生まれてきます。

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