居住環境の悪化

日本は都市計画においてもほとんど無策に近い状態にありました。日本の資本主義はその後進性を脱却するために、農業や中小企業における封建的生産関係を温存させながら、原始的な蓄積を強行してきました。その結果は二重三重の産業構造、およびその空間的投影ともいうべき工場、商店、住宅などを混在した、しかも環境条件の整備や社会的共同施設の皆無にひとしい市街地の存在をもたらしています。しかも都市では産業と人口の無秩序な過度集中がひき起こされ、災害、交通事故など公害による一連の環境破壊がすすんでいます。かつて狭い住宅を補完するものとして、夏の夕涼み、冬の日向ぼっこ、子供の遊び場などとして貴重な役割を果たしていた道路を含む住環境は、今や車にその空間を奪われることにより、住み手がそこから排除されようとしています。しかし、この車という物は、住まいのなかでの家庭機器とは全く異なった性格を有しています。それは、人が入れる以上の大きさだけの容量をもち、人の100倍以上の重量をもち、しかも人の何10倍の速度でもって動く物なのです。

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住み手の様々な行動のための空間、生活する空間としてかたちづくられた狭い日本の道は、もともとこのような車を受け入れるだけの体質をもっていません。そのようなところにもし車が入ってくるならば、人と車の動作は、生命の安全を守るため互いに衝突しないような原則、たとえぶつかったとしても、傷つかないような速さにコントロールされなければなりません。しかし車はその速さと積載重量が存在意義である以上、こんな原用はいれられはしません。人と車の空間の共用は、もともと不可能なことです。住み手は今、その生命の安全を守るために車に空間をゆずらねばならなくなります。
敗戦を契機として、日本の産業構造は、一時的に軍需産業から民需産業へ転回します。そしてその中心に登場するのが、電化製品、自動車を始めとする家庭耐久消費財メーカーです。高度経済成長期は、その生産の急激な伸びを可能とし、ここに欲しがらせ、無駄遣いさせ、捨てさせることを戦略とするメーカー、産業資本、マスコミの一体化した売りこみ攻勢が始まります。住み手は、これらの大攻勢に対してどのように対処し、そこに発生した住み方の問題はどこにあるのでしょうか。まずその第1は、数々の電化製品とありあまるほどの耐久消費財の持ち込みから起きる、居住空間の物理的な圧迫です。もともと家具や器具といわれるものは、住空間の機能を高めるものとして登場したものであり、空間と補完的な役割を果たすべきものです。また住まいもこれらを当初から考慮に入れて計画されるべきものです。したがって、この場合、全体の空間量とそのなかに入る家具類は、ある一定の対応関係、バランスが考えられています。いわば枠の大きさにしたがって、そのなかでの物は決められるといってよい。ところが現在のきわだった特徴は、枠である住まいがきわめて狭小であるにもかかわらず、ものはそのバランスを超えてどんどん住まいのなかに売りこまれてくることです。空間とのバランスを超えた耐久消費財は、居住空間を圧迫することにより、住み方の矛盾を一層激化させます。家具の谷間の生活が始まり、物が人を圧迫するのです。
第2は、無制限な耐久消費財等の持ち込みにより、整理整頓、片づけのシステムがこれに追いつけず、居住空間は圧迫されるばかりでなく、残された空間自体が、全体として無秩序な状態、つまり、物の散らかった状態におちこんでいくことです。整理や掃除は、一見簡単なようにみえながら、それが毎日の繰り返しであるだけに大変な労力を必要とします。それは個人的な努力や、思いつき仕事といったやり方ではとうてい対処しきれません。きちんと片づける整理整頓のシステムは、住み手の小さい時からの躾として慣習化され、しかもそれらが社会的にも規則化されなければ、なかなか実行されにくい。しかし、最近の生活革新、技術革新のテンポは、このような慣習が形成される余裕すらも与えず、次から次へと新しい生活機器を生み出してきます。そのものすごい速さに、住み手の慣習が追いついていけないのです。

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