家風の喪失

現在、住み手にとって問題とされるのは、家風の喪失ともいえる事態の発生です。封建時代は身分や位によって、そこでの動作や片づけは、礼法や、しきたりとして固定化されていました。その本質は、封建的な秩序の遵守であることは問うまでもありません。しかし、その一面、節約、倹約の精神から住まいを大切に扱っていく側面があることは、現時点においても高く評価されねばならない点です。それらは、片づけの内容にしたがって日々のきまりや年中行事のなかに組み込まれ、さらに世代的には躾や奉公によって後世に伝えられていきました。そしてそれらが、個々の家の家業と結びつき、その家の特色に対応した家風として形成されていいました。敗戦を契機として、急激におしよせた民主化の波、反封建的な感情、封建的家族制度の解体にともなう世帯の細分化、サラリーマン化のなかでの家業の消滅等々は、新しい住み方を生み出すうえで、ひとつの大きな契機となりました。しかしそれはまた、古い居住慣習のもっていたところの、伝えていくべき好ましい側面をも否定する傾向をともなっていました。

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反封建的な感情は、時としては、たらいの産湯と共に赤ん坊まで流してしまう激しさをもっていたし、世帯の細分化は、親子の同居期間を短縮し、嫁姑の同居の機会を消滅させることにより、そこでの躾や居住慣習の居住技術の継承を困難なものとしました。また一方で家業の消滅と全体的なサラリーマン化は、画一的な生活様式を生み出し、これにアメリカ的生活様式の皮相な模倣が加味されて、これまでの家風にみられる個別的な色彩を薄くしました。
こうして、封建的な性格は有しながらも、一面では個々の家庭の主体性の下に確立されていた管理、片づけのシステムは、歴史の激しくゆれ動く過渡期のなかで、住み手のなかからかき消されていったのです。そのため、現在主として住み手の側にあらわれている問題点は、次のような点で指摘されます。
第1は、住み手が住まいを整えていくための管理、片づけ上の知識や技術にうとく、それを創造的に習熟、発展させていけるようなシステムを有していないことです。つまりこれは、敗戦を契機にしてこれらの知識や技術の継承が断絶したにもかかわらず、新しくこれを生みだしていく制度がまだ確立していないためです。小・中・高校における家政科教育、大学における家政学研究は、いずれも住み手に必要な科学的な知識や技術を生みだし、これを伝統的に教育に組みこむことによって、創造的な住み手をつくりだしていく上で、きわめて不十分な内容しかもっていません。また、民主的な人間関係の未成熟さが住み手の相互交流を阻害して、かつての縦の継承にかわる横の交歓、交流がまだ生みだされていません。こうしたなかで、未熟な住み手が、誰からの協力もえられずそのまま放置されています。
第2は、この孤立、分散された住み手に対して、マスコミ、メーカー、商業資本の攻勢がすさまじい勢いでかけられ、住み手の判断はこれらの売りこみ、宣伝に絶えず左右されて涅乱を深めていることです。しかも住み手が孤立すればするほど、売りこみの武器であるテレビの効果は大きくなり、いわゆる高度大衆消費社会の根なし草的大衆として操作されていきます。結果は果てしない住まいの混乱と物の浪費です。
第3は、これらマスコミやメーカーの売りこみ攻勢が、単にテレビやラジオを通じて行なわれるばかりでなく、家庭科教育との名の下に、洋裁学校、料理学校等の各種学校における教育システムのなかに組みこまれてきていることです。道徳教育と結びついたかつての家庭科教育は、戦後全面的に否定されましたが、これにかわる民主主義時代の家庭料教育は未だ確立されていないために、この問隙をぬってこれらの各種学校があらわれたというわけである。住み手の多くは、このような教育とみずからを取りまく現実との間に大きなギャップを感じています。
第4は、住み手のこのような非主体的な態度、流行的体質は、さらに一層民主的で発展的な共同生活に対して大きい障害を生み出していることです。現在、次第に一般化しつつある集合住宅の管理における住み手相互の、あるいは住み手と管理人との様々なトラブルに典型的にみられるように階段や廊下の掃除、アパートの周辺の草取りや再帰除、あるいは共同施設の管理運営など、これを民主的なルールで処理するシステムがまだ生み出されておらず、またその道のりは遠く、結果は無用な人間関係の対立や、あるいはその正反対の全くの無責任体制となって、住環境の悪化をもたらしています。

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