住み方の解説書

激動する住み方の過渡期にあって大きな役割を果たしてきたのが、住み方読本とよばれる住み方の解説書です。新家庭の本棚に飾られているこれらの解説書のなかには、平易な表現のうちに住み方の本質を考えさせるようなすぐれたものもありますが、その多くは、次に掲げるような様々な問題点を内蔵し、それが本当に住み手の住生活の変革を導いてきたかについては疑問が残ります。その第1の特徴としてあげられるのは、住み方の革新は、最近の電化製品の導入にありとする技術革新的観点です。この種のタイプは、百貨店などでよく開かれるハウジングフェアーなどと軌を一にし文化生活はすなわち、電化生活なりとする思想に貫かれています。したがって家庭機器は新しくて自動的であればあるほど革新的なのであり、新しい製品が開発されればそれを導入しないかぎり、第一線の流行から退くことになります。かつて、テレビ、洗濯機、冷蔵庫をもって三種の神器とした時代はもはや遠い過去と化したように、この種の技術革新的住み方は、これから果てしもない耐久消費財とのイタチゴッコをくり返さねばならなくなります。そしてこの耐久マラソンに敗れた住み手は、容赦なく欲求不満のなかに放置されるのです。

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第2の特徴は、豪華な家具や敷物などでなければ、洗練された住み方はできないとする文化芸術的観点です。家具や敷物などは、台所機器のようにそれほど技術革新のテンポが速くありません。しかし、その限界をのりこえて変化のテンポをはやめ、新しい家具や敷物をどんどん導入させるのは、すぐれたデザインや様式に対する住み手の感覚なのであり、それと結びついた住み方というわけです。これらはいずれも、住生活を構成する様々な要索のなかから、生活機器だげに焦点を合わせているという点で、住み方の本質、住むことの意義、住み手の主体性がどのようなところで発揮されるかといった点にほとんどふれないことで、人間不在の住み方として大きな危険性をはらんでいます。そしてこの背後に、メーカーや商業資本の手がのびていることはいうまでもありません。
第3は、これらの必然的な結果として、農村や各地の様々な特色を配慮しない都市生活的観点が生み出されます。労働形態が異なり、家族形態が異なる都市と農村、それも各地方により風土も伝統も異なる農村では、それらの生活様式に独自の性格があることはいうまでもありません。しかし、大量生産方式で生み出される様々な家庭機器は、住まいの条件の違いをのりこえて遮二無二突進せざるを得ない性格をもっています。しかし、そこから起こる様々な矛盾については、都市生活的住み方は、決して答を与えようとはしません。
第4は、都市生活的であるにもかかわらず、それが本当の都市生活的であるための条件、つまり住み方の共同化、社会化への方向はほとんど取り上げられていない点です。いわばそこでの住み方は、与えられた枠内での個別解決主義であり、したがって、住み手のおかれている基盤そのもの、住まいの条件やこれからの方向についてはふれようとしません。住み方を考える場合の重要な視点の一つは、住み方の果たしうる限界を明らかにすることです。つまり現在の住まいのなかで、住み方の独自性によって果たしうる限界、および新しい住まいでなければ不可能な住み方を明確にし、よりよい住まいの変革へと住み手の目を向けさせることです。しかし木賃アパートの住み方はあっても、そこでの住み方の限界と住まいとの関係についてふれているものは少ない。
第5は、個別的解決で満足な住み方を確立しようとすれば、当然、住み手の中心に婦人が、しかも家庭の主婦がおかれることになります。そしてそれらは専業の主婦にしてはじめて可能となるような内容であることが多く、主婦の献身的な努力によらなければ住まいがととのえられないとしたら、現在の広汎にわたる共稼ぎ、共働きの家庭においては、満足な住み方はほとんど考えられないことになります。もちろん共働ぎ家庭の住み方といったものがないでもありませんが、それらは、主婦のやるべきことから多少手をぬくといったものが多く、しかしそれをつきつめていくと、真の解決は、婦人が家庭で家事、育児に専念する以外にないこととなり、それでは、問題はいつまでたっても解決しません。婦人の社会的労働への進出が一般化しつつあるとき、職場と家庭生活の両立を可能とするような住み方こそが、現在求められているものです。

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