応接セット

一般に、マスコミなどで宣伝される家具や器具の配置は、居問や台所、食事室、あるいは寝室、子供室といった、住まいを構成する個々の部屋についての説明が多く、これらの配置論の裏には、住まいはかくあるべしとするイメージ、生活の機能分化に対応したユニットルーム・システムがあり、それを基礎として家具類の配置も考えられています。今そのいくつかの代表例を紹介すれば、それはおよそ次のようなものになります。まず住まいの各部屋のなかでも、最近の花形は居間です。それも和風は流行遅れで、焦点はなんといっても洋風の居間にあります。そこでの配置に当たっては、部屋一杯に敷きつめられた絨緞と、その上にテーブルをはさんで差し向いにきちんとならべられた5点セットのソファーや肘掛け椅子が原則になっています。そして余裕があれば、壁際にピアノやステレオ等が装飾用としておかれ、またその周辺には、こまごまとしたマガジンラックなどの小間物がきれいに点在しています。

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しかしこのような傾向に対しては、すでに多くの批判があります。その第1は、セット主義とよばれる、家具類の導入のしかたに対してです。居間は家族の交流の場である以上、家具の数やかたちは当然その人数と構成によって異なってくるはずです。また居間の大きさにしても、個々の住まいによって同じであることはありえません。大体8畳から12畳といった居間に対する標準型家具といっても、インテリアデザインの段階では、少しの寸法の違いが全体の配置を大きく狂わせることも多く、柱のわずかな角や、入隅のおさまりの悪さがどれほど部屋全体を使いにくいものにしているかは、住み手の誰もが知っていることです。しかし、なんとか家具を売らねばならない資本主義制度は、バラ売りは好みのせん。そこにセット主義が流行する根本的な理由があります。家族みんなが異なった椅子を持っていてもよく、またいろいろな姿勢になれる椅子を別々に買ってもかまいません。家族の人数と構成、そして居間の大きさを考えて家具の導入を考えること、このことが気をつけねばならぬまず第1の点です。
第2は、5点セットの椅子がまた応接セットと呼ばれることに象徴されるような、生活不在の並べ方が流行していることです。居間は家族の団らんの場であり、みんなでなにかをして楽しむ場であり、子供の遊び場でもあります。それはまた個人の読書や休息の場としても好ましく、このような多様な要求にこたえるためには、それらの行動に最もふさわしい家具のならべ方があるはずです。子供が小さい家族で、彼らの自由に動きまわれる空間を確保するため、家具類は壁際によせて、真中の空間を大きくあけてやることが求められます。テレビが団らんの大きな役割を果たしているならばテレビチェアといった高品名は別として、テレビの見やすい家具配置があるはずです。また家族の動きを見ながらゆっくりくつろぎたい人がいるならば、コーナーをとればよく、要するに団らんという居間での行動の種類、内容をたしかめ、それを具体化する動作のパターンを把握すること、そしてその動きにあわせて、家具を並べることが重要なのです。
加えて、日本では今、家族の間に動作の約束、エチケットが確立されていないことの影響も大きい。つまり家族の間の様々な行動として、様々の形で展開される動作が、一体どのようなきまりの下に規制されるべきか、ということがはっきりしていません。この動件のきまり、エチケットの不在が他人行儀といわれる固くるしい応接型配置をいつまでも存続させている原因であり、同時にそれは、全く正反対の傍若無人の動作を横行させている基盤でもあります。
形式的な家具配置論が氾濫するのは、日本の居間生活が本当に定着しているのではなく、あこがれの段階にあることを物語っています。生活の体験こそこれらの誤魔化しを破るなによりも大きな力である以上、究極的に応接型配置といった家庭生活不在の家具配置を打破していくためには、家庭団らんが日常的に確立されていくような条件をつくることが必要なのです。

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