一戸建住宅の願望

多くの人々が便利な都会を避けて効外を望み、高層住宅よりも一戸建を好むのでしょうか。人々が庭付き一戸建住宅を望むには様々な理由が考えられます。まず第一に考えられることは、郊外ということです。効外というからには、太陽、緑、空気、閑かさ、空間といった自然環境のよさを人々が希望しているからです。それは誰しも望むところです。自然的な環境条件だけをとってみれば、ゴミゴミした都心よりは郊外の方がいいにきまっています。将来、いかに科学技術が発達して都会の自然環境が改善されたとしても、自然の恵沢にまさるものとは思えません。しかし、それだけの理由で郊外を選ぶとしたら、郊外よりはもっと田園や田舎の大自然の方がさらによいのではないのでしょうか。しかし、人々が都市またはその近くに集住するのを望むのは、都市の便利さをはじめとするもろもろの魅力が、人々の心を捉えてはなさないからです。つまり、都市の魅力と、田舎の自然環境のよさとの両方が融合したものとして、都市の郊外が浮かび上がってきます。この都市と田園の両方に対する人々の要求の強さというものが、人間のおかれた時と場合の条件によって少しずつ変化するということに注目してみる必要があります。

スポンサード リンク
間取り

第2に、庭付きということを考えみると、いうまでもなく、高層住宅には個人の庭というものはありません。一戸建住宅が人々に望まれる理由の一つに、この庭つきという理由のあることは確かです。この日本の住宅における庭というものに、二つの意味があるように思われます。一つは庭いじりという、人間の住生活における一種の創造行為です。日本の都市住宅は古くから様式化されていて、個人の好みによって自由に設計できる余地は少なかった。戦後登場してきたモダンリビングなどは、個人の自由な設計が可能になりましたが、それはごく最近のことです。そういう中にあって、庭は比較的、個人が自由に動かしうるほとんど唯一の空間であるといえます。石を並べたり、盆栽を育てたりする楽しみというものを庭は与えてくれます。それ自身が一つの芸術的な創造行為なのです、これに反して、高層住宅や西洋の住宅のベランダに並べられる植木鉢の花々には、個々の花の美しさ、そしてそれらが咲きそろったときの艶やかさはあっても、それらを構成して一つの空間である庭を創造するという行為はありません。庭づくりにたんせいをこめるという行為そのものが存在しないのです。植木鉢の花は自然に咲くものですが、庭は人間がつくるものであるという相違がそこにはあります。
もう一つの庭の意味は、それが住宅の中にしつらえられた自然のシンボルであるということです。日本の庭は、その石組から、池、川、樹木の配置まで、大自然を模して構成されています。そしてその庭の花が咲き、木の葉が落ちるたびに、人々は季節の移りかわりを知ります。日本の庭は、そこで何かして遊ぶというよりは,見る庭ですが、それは実はこの自然のシンボルであるということに起因しているようです。都市住宅の、わずか3坪ぐらいの坪庭にも自然をしつらえるという高密度な生活技術を私たちがもっているということは、無視しえない日本住宅の特徴であるといえます。このような自然のンンボルである庭は、また住宅そのもののシンボルにもなっているのではないでしょうか。赤い屋根の家や大きな飾り窓のある家とがいういい方は、しばしば西洋の住宅に対してなされますが、日本の住宅では、生垣に囲まれた家とかいう表現がとられることが多い。日本の住宅の中での庭のこういう比重の高さは、住宅の理想像を考えるときにも十分考慮されなければならないことのように思われます。個々の住宅の中に庭を求める席民の気持を、一概に非近代的なものとして、退けることはできません。ただこれも先の場合と同様に、人間の時と場合の条件によって、その欲求が強い時とそうでない時とがあることはいうまでもありません。若い人々にとっては、座敷から眺める庭よりは、そこで遊んだり、運動したりする空間を欲するはずです。したがって庭付きということもまた住まいの絶対的な理想の要件にはならないのです。
第3に一戸建ということを考えてみると、一戸建は要するにプライバシーを保つということ、他人の生活と隔絶した自己または自己の家族の生活というものを確立しようということにあるのではないのでしょうか。慌ただしい世の中で、せめて住宅の中だけは自分が主人となって、自分の思いどおりにことが運べる城にしたい、城としての独立性を保ちたいということでしょうか。しかし、単にプライバシーを保ち、独立性を保持するということだけなら、高層アパートでもできないことではありません。そうなると一戸建が望まれるのは、プライバシーのほかに、家そのものをオーダーしたり、自由につくりかえたりすることができるという側面を見落とせないように思われます。現在は巨大なものを生産する時代です。そのため社会組織が極度に分業化されてきました。その結果、人々は生産感覚、これこそ自分がつくったものだという生産感覚をだんだんともちえなくなってきています。そういう中にあって、家づくりは現代人が個人としてなしうる最大の生産といえないこともありません。誰にきがねもなく、自らの創造性を発揮し、同時に生産感覚を味わえる最大の場であることはたしかのようです。目本の各種の建築雑誌はその内容において、また装丁において、世界的な水準の高さを誇るものですが、その建築雑誌の多くが、数々の大規模な、または問題作の建築作品を外して、年に数回は小住宅持集をやるようです。その理由は小住宅特集をやるともうかるからです。多くの庶民は、いつかは自分の家を建てたいという夢を持っています。建築雑誌は、その夢をいっそう大きくふくらませてくれます。

間取り
住み方の課題/ 暮らしと住まい/ 住まいと住み方/ 日本の住まい/ 狭小過密住宅/ 居住環境の悪化/ 家風の喪失/ 住み方の解説書/ 応接セット/ 動線理論/ 家具の機能/ 家具の配置/ 物の分類/ 住まいの物の共有化/ 住まいの物の保有量/ 整理収納/ 住まいの管理、サービス制度/ 住まいの理想/ 一戸建住宅の理想/ 一戸建住宅の願望/ 住宅の理想像/ 住宅の将来/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサード リンク

プライバシーポリシー