借家に適用される法律

建物に限らず、およそ動産、不動産等一切の物の賃貸借についての法律関係はまず民法に規定されています。
しかし、民法は所有権の絶対的尊重、契約自由の原則を基調としていますので、人口の都市集中化に伴い、土地、建物の需要供給の関係がアンバランスになりますと、住宅問題の紛争を解決するには、必ずしも適切な法律とはいえなくなるのです。すなわち、土地は有限なのに人口が次第に増加し、都市への集中度が激しくなると、土地、建物の価格が高騰し、いきおい、土地、建物を取得する資力のない借地人、借家人の契約締結における立場は、家主、地主に対して、卑屈で弱いものとならざるをえません。民法は人はみな、対等な人格者として、同等な競争能力をもっているという仮定のもとに、対等自由に契約させようと考えているのですが、現実に対等な能力を持っていなければ、真の意昧での自由な契約は結 ぶことができません。そこで、借家人、借地人のこれらの立場を考え、借家法、借地法、建物保護に関する法律、地代家賃統制令等の一巡の住宅確保についての社会立法が制定され、これによって、これらの関係における契約自由の原則に適当な制限を加え、その賃貸借関係の長期安定化と適正合理化とを図るうとしているのです。それは、ちょうど、労働者の地位の強化のために、労働基準法その他の労働法が制定されたのと同じ趣旨に基づくのです。

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借地法や借家法は、賃借人の地位の安定と土地、建物の利用関係の合理化を主眼とするるので、これを賃借人の立場からすれば、しごく結構な法律といえますが、他方、地主や家主にとっては、決して、ありがたい法律とはいえません。しかし、法の真に企図するところは、これらの立法によって人のあらゆる活動の源泉ともいうべき住宅関係における安定、平和を保障しようとするものであり、そのためには、地主、家主の所有権がかなり制限されることになるのですが、もともと、地主や家主をいじめるための法律ではないのですから、その運用解釈に当たっては、貸主の立場や利益は十分尊重しなければなりません。
ことに、弱いはずの借地借家人が、当該地主、家主に比べて、むしろ強者である場合には、これらの法の運用解釈には慎重な工夫を必要とすることとなります。また、これらの法律の運用解釈の態度が、いたずらに賃借人の利益を偏重する方向に走るときは、地主や家主は「もう土地は二度と人には貸すまい」「家は決して貸すものではない」と考えるようになるでしょう。一般の地主、家主がこのように考えるのは、賃料の統制、地価の値上がりというさらに強力な原因もあるのですが、こうなっては、せっかく借地法、借家法によって、土地、建物の賃貸借関係の安定とその適正化を図ってみても、その効果は収めえないこととなります。借家に関する紛争の和解や調停などの席上で、明渡義務のあることが明白であるのに、法外な要求をする借家人をまま見受けることがあります。そして、このような不当な要求のなされることが一つの風潮となっています。その原因の一つとして、法曹実務家が、家主の犠牲のもとに、借家人をいくぶん甘やかしすぎたことも事実であって、この点は今後反省すべきものと思います。
借家法 の各規定を通覧すると、この法律は、建物の賃貸借についてのみ適用されることが分かります。もし、賃貸物件が建物でないとすれば、賃借人は借家法による保護を受けることができず、民法の賃貸借の規定だけによって処理されることとなります。ある物件が建物かどうか、ということは、借家法の適用があるかどうか、をきめる基準となります。また不動産登記の関係でも、このことが問題となります。そして、これらの場合に、建物かどうかは、結局、その時代の社会通念によって決まります。一般には、建物とは、土地に定着し、周壁屋蓋を持ち、住居、事務所、店舗、物の貯蔵その他の用途に供することができ、ある程度の永続性のある建造物で、独立の不動産として登記できるものであると定義されています。借家法にいう建物もだいたいこのように考えてよいものと思います。こうした要件をそなえ、社会通念上、建物と認めうるぬのであれば、その種類、構造、大小等を問わないのです。高架橋の下を利用した倉庫なども、判例上は建物に該当するといわれています。
建物自体の構造様式から、客観的に営業用建物と認められる場合もあります。地代家賃統制令でその適用を除外されるのは、原則的には、このような建物です。しかし、建物利用の実際からみると、営業用の建物に居住することもあり、居住用のそれを営業用に使っていることもあります。ここでは、説明の便宜上、居住の目的で賃借し、現に居住している場合を居住用建物、営業の用に供する目的で賃借し、現にその用に供している場合を営業用建物とよぶことにいたします。
判例、通説は、建物の賃貸借であるかぎり、その建物の構造上の用途や利用の現況のいかんを問わず、つねに借家法の適用があるものと考えております。その根拠として考えられることは、形式的には、日本の借家法はドイツ、フランス等の立法と異なり、このような点についてはなんらの差異を設けていないこと、実質的には、営業用建物の賃貸借については、多くの場合、借家人は造作その他に多額の資本を投下しており、その営業上の得意先とか、いわゆる暖簾または老舗としての利益が建物に不可分的に付着するので、その建物の利用権を先うことは、賃借人にとっては重大な損害であるということであります。
しかし、営業用建物の賃借人の保護ということと居住用建物の賃借人の保護ということとは、保護される利益が異質のものです。前者の場合は、財産権の保護であり、後者の場合は、居住という生活権そのものの保護です。借家法は、家主の犠牲において、借家人を保護する点に特色があり、また、非難されるのもそれゆえです。借家法によってこうむる家主の不利益はかなり重大であり、それは所有権の制限でもあります。借家法が社会立法の一つとして、家主の犠牲のもとに成立しえたのは、住宅問題が一つの社会問題として大きく取り上げられたからであり、少し極端にいえば、住宅問題の政治的解決の貧困さがそのしわよせとして、家主の犠牲を招いたものともいえます。
証券会社が会社の支店として、ビルの数室を賃借したり、料亭が近隣の未亡人所有の邸宅を離れ座敷として賃借したりする揚合を考えてみましょう。これらの賃貸借は賃借人からすれば、企業経営の一環としてなされる商行為です。また、このような賃借人は決して経済的弱者とは申せません。このような、本来自由競争に任せてさしつかえのない賃貸借については、契約を自由に締結させ解約の制限なども必要でなく、賃貸借関係の維特存続はもっぱら当事者の自由対等な交渉に任せておくほうが、かえって公平な結果が得られるのではないかと思われます。しかし、売買は賃貸借を破らずと宣言する一条、造作買収についての五条、賃料増額請求についての七条等の規定は、これらの場合にも、別の観点から必要です。
判例、通説が、それにもかかわらず営業用建物の賃貸借にも借家法の適用を是認している理由を忖度しますと、それにはいくつかの理由も考えられないことはありません。すなわち、営業用建物の賃貸借といっても、実際には、小規模の営業であり、その借主が経済的弱者である場合がかなり多いこと、そして、そのささやかな営業の維持存続のための借家権を保護することが、居住権を保護する揚合と同様な必要性があること、さらに、八百屋、魚屋、駄菓子屋、理髪店などのように一つの建物を店舗兼住宅として賃借している場合が少なくないこと、究極的には、実際問題として、いわゆる弱者と強者との判別が決して容易でないこと等々です。
そこで、判例、通説に従って、営業用建物の賃貸借にも一応借家法の適用があるという立場をとるにしても、紛争の具体的解決にあたっては、営業用建物の場合には、家主に過当な犠牲を強いないように借家法を運用解釈する努力が必要だと思います。
例えば、正当事由条項の解釈については、その営業性(非居住性)が濃厚か稀薄かによって、適切な按配を試みることなどは、もっとも大切なことではないかと思われます。すなわち、営業用建物の賃貸借としての色彩がきわめて強い場合には、立法当初一般に採用された解釈態度がそうであったように、家主の自己使用の必要性が充足されれば、それだけで正当事由を充足するものと解し、その色彩が稀薄化し、居住性の色彩が濃度を増すに従い、借家人側の事情をも精細に斟酌検討するという態度が、立法目的に忠実であるうかと考えられます。
また、建物の一部の賃貸借については、その賃借部分をもっぱら営業用に供しているのか、居住用に供しているのかによって、借家法の適用を按配するのが妥当な態度かとも思います。すなわち、近時、ともすれば、借家法の適用から見放されがちな日本式建物のいわゆる間借については、その部屋がともかく家族の居住用として住みうるもので、しかも現に永続的な住居として居住の用に供されている事実があれば、他に、構造上および使用効能上の独立性を云々するまでもなく、借家法適用の要件をみたすものと解釈し、他方、営業用建物の一部の賃貸借については、借家法適用の要件として、建物の構造上および営業の施設、態容のうえから、その賃借部分の営業が他の営業者のそれと明確に識別できる程度の独立性を要求することが借家法に忠実な解釈と思われるのです。
これらの解釈態度を支持するものとして、営業用建物の賃貸借については、昭和二五年七月の改正以来、賃料の統制が撤廃され、また、併用住宅の賃料については、特別の配慮がなされているということは注目すべきことであります。

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