下宿と借家法の適用

一口に下宿といっても、素人下宿もあり、旅館類似の下宿もあり、まかないのある場合、ない場合等いろいろの態様があると思います。これらの下宿は大ざっぱに観念的に分けると、次の二つの類型になるかと思います。
(1)下宿人の住居として、下宿人に独占的に一定の部屋部屋を利用させることが、契約の主要な内容となっている場合。
(2)旅館類似の関係で、部屋自体の貸借というよりも、食事その他の物的、人的サービスの提供のほうに重点がおかれている場合。
後の場合は、たとえ一定の部屋が定まっていても、部屋の賃貸借という要素が稀薄なので、借家法の適用はありません。
前の場合には、まかないの付く場合と付かない場合とがありますが、もっとも、用語例として、まかない付きの場合を下宿とよび、そうでない場合を間借とよぶこともありますが、ここでは下宿を広い意味に用います。まかないの付かない場合は部屋の賃貸借であり、まかない付きの場合は部屋の賃貸と食事の提供との混合契約です。いずれにしても、(1)の場合は部屋の賃貸が主な要素をなしているので、賃貸借としての法理が適用されることとなります。しかし、そうだからといって、この場合には、つねに借家法の適用があるとは一概にはいえません。といいますのは、この場合は、建物の全部の賃貸借ではなく、建物の一部の賃貸借が要素をなしているからです。そして、建物の一部の賃貸借については、その賃借部分が、構造上、他の部分と障壁等で区分され、使用の効能上も独立した住居と同様な役割を果たしうる場合、例えば、アパートの一室には、借家法の適用があるとし、そうでない場合、例えば襖で仕切られた一間だけの賃貸借は借家法の適用がないというのが一般の考え方のようです。

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私は、生活の足しにするつもりで、二階の二部屋、階下の離れ一部屋に、それぞれ、学生を下宿させて、まかない(食事)も付けてやっています。下宿人の一人が、生活が だらしないので、今月の初めに、来月から出て行くよう申入ましたが、彼はごてて、借家法の保護があるため追い出せないと言い出しました。下宿の場合にも借家法の適用があるのでしょうか。
この場合、おそらく食事その他のサービスの提供が主眼ではなく、むしろ、部屋の独占的利用が主であって、食事の提供はその従であろうかと考えられますので、建物の一部の賃貸借についての考え方を適用すべきものと思います。そして、その学生を下宿させている部屋が建物の他の部分と明確に区分されて、住居としての独立の使用に堪えうるものと社会通念上考えられる場合には、借家法の適用があり、そうでない場合は借家法の適用はないと、一般に解しているようです。そこで、借家法適用の有無により、どのように法律関係に違いを生ずるかについて、次に簡単な説明をしましょう。
借家法の適用のない場合。この場合には、期間の定めがあれば、期間の満了により契約は当然終了します。また、期間の定めのない場合には、正当の事由がなくても、いつでも解約できます。そして、この場合は解約後三ヵ月の経過によって契約は終了します。
借家法の適用のある場合。下宿契約で期間を定めておいた場合でも、期間満了によっては当然契約は終了せず、借家法二条により、期間満了前六ヵ月ないし一年内に更新拒絶の通知をすることが必要で、もしこれを怠ると、期間満了と同時に契約は更新され、従前どおりの契約が続くことになります。
また、契約で期間を定めなかった場合には、いつでも解約の申入をすることができ、その解約申入の後六ヵ月経って契約は終了することになっています。そして、重要なことは、この更新拒絶の通知の場合でも、また解約申入の場合でも、家主がその部屋の使用を必要とする等その他正当な事由を必要とします。正当の事由がなければ、更新拒絶の通知も解約申入も効力はありません。
本問によれば、下宿人の「生活がだらしないから」出てもらいたい意向ですが、たとえ生活がだらしなくても、それが本人の不利になるだけで、他の下宿人や下宿させている方に迷惑をかけないかぎりは、解約の正当事由にはなりません。同じく迷惑をかける場合でも、その程度がひどく、例えば建物を毀損し、または毀損するおそれのある行為をしたり、あるいは、深夜に騒音を出して他の人たちの安眠を害するというように、他人の平穏な生活に著しい障害を与えるような場合は、正当事由になるうかと思われます。
本問の場合、建物が持家か、それとも他人から借りているのかどうか分かりませんが、もし、借家であったとすると、一つの問題があります。
借家は賃貸借の場合でも、使用貸借の場合でも、家主の承諾がなければ、他人にその建物の全部はもちろん一部でも使用させることはできません。もし、これに反すると、家主は契約の解除ができます。
そして、この揚合、他人に使用させることにつき、賃料をとる、とらないは関係ありません。しかし、親戚、友人などを一時同居させることは解除の理由とはなりません。解除の理由となるのは無断転貸の場合であり、転貸というためには、貸主が借主に特定の部屋を独占的に利用させる関係であり、借主が部屋を占領し、これを支配する関係です。
いわゆる間貸や下宿人をおく場合は、借家法の適用のある場合と、ない場合が考えられますが、転貸になるかどうかという関係においては、これらの場合はいずれも部屋について独占的支配権を与えるのが通常ですから、原則として転貸になります。したがって、家主に無断で間貸しをしたり、下宿人をおけば、家主から契約を解除される危険性があります。

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