使用貸借上の建物と借家法

二年前に、親戚の子Aが上京して大学に入学しました。そのさい、私の家で頼まれて預かり、二階の六畳を提供し、毎月一万円だけもらっています。食事はつけないことにして、外食させています。ところで、私の子供たちも大きくなって、勉強の必要上、二階を使用したいのですが、Aに明渡しを請求しても、法律上無理なことはないでしょうか。
Aを預かることを頼まれて二階の六畳をAに提供したことは、お互いの間で約束を守ることが必要なこととして取り決められている以上、これは法律上の契約、つまり拘束力のある契約とみるべきであって、単なる紳士協定ではないと考えます。
親戚の者から大学に入学するAを預かることを頬まれたのですから、Aの行状や勉学の状態についても、一応の監督を頼まれているかも知れません。けれども、その点は多くの場合、若い者だからよろしくお願いします。などという儀礼上の言葉とみるか、ないしは拘束力のない紳士協定だと解するほうが穏当であって、Aに起居勉学の本拠を与えること、つまり、二階の六畳間を提供し、Aがこれを独占的に利用することに、契約の主眼があると考えるのが妥当だといえましょう。食事は出さないことになっています。寝具はおそらく、Aは自分のものを自宅から持ってたのでしょう。また、Aの必要な日常の生活用品は、Aみずからが調達することとなっていることでしょう。そうすると、本問の場合は建物の一部である部屋の貸借それ自体が契約内容となっているものといえます。
ところで、毎月一万円だけ相手方から貰っているので、これが、もし、部屋代すなわち賃料の約定にあたるものとすれば、この場合の契約の性質は賃貸借であり、賃貸借の規定に従って解決すべきことになります。しかし、それが賃料ではなく、単なる謝礼の意味しか持ちえないものとすれば、使用賃借となりますから、使用貸借の規定に従って解決すべきこととなります。
また、契約の性質が賃貸借であるとしても、本問の場合は、いわゆる建物の一部の賃貸借ですから、借家法の適用のある場合と、そうでない場合とが考えられます。

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使用貸借と賃貸借とは、いずれも、貸主が借主に物を使用収益させることを約する契約ですが、前者の場合は無償であるのに反し、後者の場合は、借主が賃料を支払うことを約する点において差異があります。
賃貸借の要素としての賃料は、必ずしも、金銭にかぎらず、穀類とか、有価証券とか、その他有価物でもよいのです。通常は、月末払とか、年末払というように、定期に支払うことを約束しますが、必ずしも定期払である必要はなく、一時払の約束でもよいのです。しかし、それは、物の使用収益という給付に対する反対給付としての意味をもつものでなくてはなりません。いいかえると、使用収益の対価として支払われることを要します。対価とは、いわば、代金です。取引において、一方の当事者が与える給付に対し、相手が交換的な代償として、しかも、完結的な、あるいは究極的な代償として与える場合が対価です。取引は、義理、人情、恩恵、感謝という感情と対立します。利害の打算が契約内容として前面にあらわれているのが取引です。
物の使用収益に対して、借主が貸主のた め一定の労務に服すること、あるいは、貸主の営業に一定の協力をすることを約する場合のように、物の給付以外のかたちで反対給付をなし、しかも、その反対給付が、先に述べた意味において取引としての対価にあたる場合は、有償契約ですから、使用貸借ではありません。このような場合は、賃貸借類似の無名契約といわれます。そして、その場合の法律関係は、原則として、賃貸借の法理に準拠して律せられます。
また、借主が、物の使用収益に対して、なんらかの給付をなすことを約した場合でも、契約締結の事情、それらの給付の内容、客観的価値等から判断して、その給付が、取引上の対価とは認め難い場合には、それは賃料とはいえません。この場合はその法律関係は賃貸借ではなく、負担付使用貸借とよばれる特殊の使用賃借なのです。そして、その負担の内容が、本問の場合のように、金銭の支払である場合には、その額が取引通念から考えて、借主の受ける利益に比べて、かなり低額な場合でも、多くの場合は、賃料と認めるのが妥当であるといえましょう。といいますのは、金銭による給付は、他の給付とちがって、その価値は、誰に対しても客観的な等価値を持つものであり、取引決済の典型的、代表的な手段であるからです。
取引においては、給付相互の間に価値の均衡があるのが常態ではありますが、賃料の揚合でも、その他の対価の場合でも、その均衡性は不可欠の要件ではありません。とはいうものの、その均衡性が著しく欠ける場合は、そのこと自体が、対価としての性格を否定すべき重要な認定資料となることもまたやむをえません。
本問において、例えば、部屋代はいただかないが、暇なときには、中学生の勉強をみてもらうという約束があったとしても、その家庭教師的な仕事の約束は、暇なときにはという条件がつくかぎりにおいて、法的拘束力を認め難いから、法律上、負担付の契約ともいえず、この場合の閣員は、純粋な使用貸借です。
しかし、この場合、毎週二回ないし三回、合計五時間ぐらい、中学生の勉強をみてやるという約束がつくと、これは法的拘束力があるでしょう。そして、この負担が、前に述べた意味において、部屋使用の対価と認められる事情があるとすれば、この場合の間貸は、賃貸借類似の無名契約であり、その法律関係には賃貸借の法理が適用され、ひいては、借家法適用の可能性も生ずるわけです。しかし、反対に、なんらかの事情で、全体的な契約が取引としての色彩に乏しく、その家庭教師としての給付が、法律上の負担とは認められるが、部屋の使用の対価とまでは認められない場合には、この場合の間貸は、負担付使用貸借となり、使用賃借の法理に服し、借家法適用の余地はまったくないことになります。

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