個人の自由を制限する特約

借家契約をみますと、特にアパートに多いのですが、子供が生まれたら明け渡すとか、男を連れこんだり、夜おそく帰ったり、騒がしいことをするなど、他人に迷惑をかけ、もしくは風紀をみだしたときは明け渡す。などという特約が結ばれている例がかなりあるようです。
このような特約が結ばれるのは、家主からの要望によるのですが、それは、なんらかの範囲で、ある程度、借家人の私生活上の自由を制限したり拘束したりするものであることに相違ありません。例えば、子供が生まれたら明け渡すという特約を考えてみましょう。もし、借家人が結婚している夫婦であれば、そのあいだに子供が生まれるというのは、自然の成りゆきです。ところが、借家契約にこのような特約があるけれども、その借家に住んでいたいというのであれば、自然な生活がそこなわれることにもなりかねないのです。そうすると、間接的ではありますが、この特約によって、私生活の自由が拘束される結果になります。
そのほか、先に掲げたような特約も、多かれ少なかれ、個人の私生活に干渉するものといえます。
ところで、個人の私生活は自由であるとか、他人の私生活に干渉すべきではないとよくいわれています。それでは、このような特約は、無効なものでしょうか。家主が、借家契約のなかに先に例示したような特約をいれるように要請するには、それに相応する理由があるはずです。

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借家人は、他人の家を借りているのですから、なるべく原状をそこなわないように、慎重な注意を払って、借家を使用しなければなりません。家主として、借家人に対し、このように借家を使用するように要求しうるのは当然であり、もし借家人がこのような注意を怠って、借家や造作を破損したり、痛めた場合には、その程度いかんによっては、契約を解除できることもあるでしょう。ところで、子供がいたり、小さな借家、借室に多人数が住んだりしますと、家や造作がふつう以上にいたみやすいので、なるべく家中造作の耐用年数を永くするため、子供のいない人や少人数の人に家を貸すこととし、そのために、子供ができたならば、家を明け渡すとか、入居者は、二人に限るというような特約を要求する場合がでてくるのです。
確かに、その考えにも、一理はあります。しかし、独立した人々の多くは結婚をしているものであり、子供を育てながら、夫婦としての共同生活を営むというのが、標準的な生活形態であるといえましょう。法律は、一般に、標準的な生活形態を基本として、人間の社会生活関係を規律することを 目的としているのです。
これを借家についていいますと、法律は、子供のある夫婦が家を借りて使うことを予想し、このような使用方法をも保護していると考えなければなりません。したがって、子供のある場合は、子供のない場合に比べれば、借家や造作を痛めやすいといえるかもしれませんが、法律は、子供がいることによって、多少痛みがひどくなることもやむをえないものと認めているといえるでしょう。つまり、ふつう子供のある夫婦が使ったならば生じたであろうと思われる程度のいたみであるならば、用法に違反したという理由で、契約を解除することはできないのです。
そうして、他方、子供が生まれたら家を明け渡すという特約は、不自然な結婚生活を強いることもありうることを考え併せますと、この特約に、法律的な拘束力を認めることは、法律全休の精神に反するといわなければなりません。したがって、子供が生まれたら明け渡すという特約をしても、法律的な効力はなく、この特約に違反したからといって、借家契約を解除できるものでもありません。
もっとも、子供が借家や造作をことさらに破損したり傷つけたりしているのを両親が放置し、そのために、家の痛み方がひど過ぎる場合には、それにより、用法違反を理由として、借家契約を解除できることもあります。
家主と借家人との間には、原則として、長期間にわたる法律関係が成り立つこととなりますので、相互に高度の信順をもって結ばれているということができ、したがって、お互いに、その信頼を裏切って、相手方に損害を与えることのないようにしなければなりません。これを借家人についていうならば、借家人としての義務を尽くすということのほか、一般的な私生活においても、家主の生活をおびやかすとか迷惑をかけることがないように行動することが要求されているといえます。
それですから、借家人が、例えば道義上非難される行為や、常軌を逸した行動をして、家主の市民生活をおびやかしたり、家主に直接、間接の不利益を与えたりして、借家人に対する信頼性がまったく失われたときは、家主は、明け渡しを求めることもできましょう。
特に、アパートにおいては、同じ家のなかで、数家族の協同生活が営まれているわけですから、その一人が常軌を逸した行動をすると、それによって、共同生活の秩序や風紀がみだれ、もしくは他の借家人の私生活に迷惑をかけることがあり、その結果、他の借家人から、立ち退かしてもらいたいとの苦情が出たり、もしくは自分のほうで立ち退くと申し入れてくる場合も考えられます。このような場合に、注意をしても改まらないときは、家主は、他の借家人や自分の利益を守るために、明渡しを求めることができると考えます。
そこで、そのように、信頼性を失わせる行動をとらないように借家人に要望することもできるわけですが、どういうことを契約書に書くかという段になると、かなりむずかしいといえるでしょう。といいますのは、借家人に対するその要望は、道義的なものがかなり多いからです。不貞の目的で男を連れこんではいけないという要望も、本来は、道義的なものです。ただ、その借家人の行動が、はなはだ非常識で、他の入居者の苦情が激しくなったというのであれば、これを放流 するときは、アパートの生活秩序がみだれ、借家契約の解約をするものもでて、ひいてはアパートの信用を傷つけることにもなりましょう。
このような場合には、家主から、そのような行動を改めるよう注意をし、それをどうしてもきかないのであれば、借家契約を解除または解約して、退去を求めるよりほかはありません。

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