契約の締結と建物の滅失

私とAとの間に、Aの所有家屋につき、賃貸借契約が成立し、私は権利金および敷金を渡しました。家賃は月末払という定めですので、払っていませんでした。ところが、契約成立後引渡しを受けるまでの間に、その家は、付近の失火により類焼してしまったのです。私は権利金や敷金を返してもらうことができるでしょうか。
家の賃貸借の場合には、家主は、借家人に対して、家を引き渡して、これを使用させる義務を負い、また、借家人は、家主に対して、その家を大切に使用し、家賃を支払うという義務を負っています。そうして、家主の義務と借家人の義務とは、一方が、その義務を果たしているから、相手力も自分の義務は果たさなければならないという相互依存の関係に立ち、相手方が、その義務を果たさなければ、自分も、義務を果たさなくてもよいということになるのです。他方、借家契約は、特定の家を貸すことを内容とするものですから、借家が火事で焼失したり、水害で流出してしまうなどして、滅失してしまった場合には、家主は、借家契約を履行できなくなり、賃貸借契約は終了すると考えられます。そうすると、このようにして、借家が滅失して、借家契約が終了したときは、借家人の家賃などを支払うという義務は、どういうことになるでしょうか。それが、本問で問題となっているところです。

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まず、他人の家から出た火事によって、借家が類焼したというように、家主の責任に属さない原因で借家が滅失した場合には、賃貸借契約は終了します。それでは、賃借人の立場は、どうなるでしょうか。本問では、契約成立後引渡しを受けるまでの間に借家が焼失したというのですから、原則としては、家賃を支払う義務は、まだ発生していないということができます。ただ、家主のほうで、その家を使えるようにして、引き渡す準備を終え、入居するようにいっているのに、都合で引渡しを受けていない場合には、家主が入居を促したときから家賃を支払う義 務が発生します。それですから、このような場合には、家賃の支払義務が発生した日から、借家が焼失した日までの家賃を支払わなければなりません。
次に敷金は、賃貸借中に、借家人が家賃を払わないとか、借家を壊したりして、家主に損害を与えたりすることを予想し、家主が、その家賃や損害を補填することができるように借家人から預かっておくもので、家主がなんら損害をこうむらないで賃貸借が終わったならば、これを借家人に返さなければなりません。本問についていいますと、家賃の支払義務がないものであるならば、敷金全額の返還を請求することができ、もし、家賃を支払う義務があるものであれば、それを敷金から差し引いて、残額の返還を請求することができます。
さらに、権利金について考えてみましょう。一口に権利金といっても、それには様々のものがあるのですが、通常は、家賃の失払その他、借家を使用することの対価と認められる場合が多いといえます。したがって、この種の権利金は、賃貸借が終了しても、借家人には返さないのが本来のたてまえです。しかし、この権利金は、借家人が、当初契約したとおり家を使用することができるという前提のもとに、家主に交付されたものということができるのですから、本問のように、借家の引渡しを受ける前にその家が焼失してしまって、全然その家を使う余地がなかったというような場合には、家主に対して、その返還を請求することができると解釈するのが、公平であると思われます。
ただ、その権利金の一部を借家の建築費の一部にあてるという約束があり、現にそれに使ってしまったような場合には、その分の返還は、請求できないでしょう。
家主が放火したとか、不注意によって火を出し、これによって賃貸借は終了するといわれています。
この場合における家賃についてみますと、借家が類焼した場合と同様に考えてよいのです。すなわち、もし、その借家の引渡しを受けうるにかかわらず、これを受けなかったということで家賃の支払義務が発生していたとしましても、借家が焼失したときからは、その義務がなくなります。また、はじめから焼失するまで借家の引渡しを受けうる状態になかったとすれば、家賃は、全然支払わなくてよいのです。次に敷金も類焼した場合と同様の方法で、返還しなければなりません。
さらに、権利金も、家主の責任で借家を使えないようにしたるのですから、これを返さなければならないということがいえます。
類焼した場合と一番違うのは、もし、その借家の焼失によって、損害をこうむったならば、その損害の賠償を請求できるということです。例えばその家を借りるために、不動産斡旋業者に、手数料を支払ったような場合には、これが損害となり、家主に、その賠償を請求することができます。
賃貸借を締結する前に、すでに借りようとしている家が焼失してしまっている場合には、契約は成立しません。したがって、その家が焼失していることを知らないでこれを借りる契約を結び、家主に、権利金や敷金を払ったとすれば、その返還を請求す ることができます。

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