家賃の値上げと値下げ

家賃の額は、地代家賃統制令の適用される借家でないかぎり、家主と借家人との間の契約で自由に定めることができます。一旦定められた家賃も、両当事者の話し合いがつきさえすれば、自由に値上げまたは値下げをすることができます。この場合には、借家期間の途中でも、また一定期間家賃の値上げまたは値下げをしない特約があっても値上げ、値下げができるし、その額にも特別な制限はありません。
しかし、家賃というものは家主と借家人との利害が正面から対立する問題ですから、話合いで円満に解決することはなかなか困難です。そこで借家法七条は、一定の要件がそなわっていれば、家主または借家人からの一方的な申出によって、相手方の承諾 がなくても家賃の値上げまたは値下げができる制度を設けました。これを家賃の増額請求権といいます。
借家法七条によれば、従前の家賃が、土地平建物に対する租税その他の負担がふえたことによって、土地や建物の価格が高くなったことによって、あるいは付近の建物の家賃と比較してみて、「不相当」に低くなった揚合には家賃の増額を請求できることになっています。これらの三つの要件は、家賃が不相当に低いものになる原因の代表的なものを例示的にあげたにすぎませんから、三つ全部そなわっている必要はなく、どれか一つ認められればよいし、またこれら以外の原因がある場合でもよいのです。要するに経済事情の変動その他なんらかの原因で家賃が不相当に低いものになっていればよいということになりますが、学説や判例では、そのほかに、従前の家賃が定まってから相当の期間が経過していることが必要であるとされています。

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家賃を定めるときにはある程度先までの見通しをつけているはずですし、短い期間の間に家賃があがることは借家人の地位を不安なものにしますから、家賃の値上げをするためには、従前の家賃が定まってから、いいかえると最初に家賃を定めたときまたはこの前家賃をあらためたときから相当の期開か経過していなければならない、とされています。ただし、従前の家賃を定めたときに、家主が詐欺にかかったり強迫されたり錯誤におちいったりしていたために低い額にしてしまった、というような事情がある場合にこれをあらためるのは、それぞれの規定によることで、ここにいう値上げとは違いますから、相当の期間の経過は必要ではありません。
具体的に相当の期間とはどの位かということは、建物の種類、住宅か営業用かの契約を結んだときの諸事情、経済事情変動の程度、家賃の低さの程度、その他それぞれのケースにおける様々な事情によって違ってきますので、一概に何年と断定するのは困難です。
土地や建物にかかる租税としては、固定資産税、都市計画税、水利地益税があります。これらのうち都市計画税と水利他益税とは建物の「利用」に対して課せられるものだから、これらがあがれば家賃をあげる理由になりますが、固定資産説は建物の所有に課せられるのだから、本来家主が負担すべきもので、それがあがっても直ちに家賃にはねかえらせるべきではないという説があります。しかし実際に家賃を定めるときには固定資産税も計算にいれられることが多いようですから、まったく無視するわけにはゆかないでしょう。ただ、固定資産税のあがりかたはそれほど大幅なものではなく、値上げの口実にはよく使われますが、実はそれだけで家賃値上げが必要となることはあまりないはずです。むしろ、税金があがることは土地や建物の価格があがったことを示すものとして意味を持つでしょう。
土地についての租税が上がったときは、本来家賃のなかに含まれている地代の増額が生じますので、結局、家賃にはねかえることになります。
貨幣価値の下落や地域開発の進行で、土地の価格は一時ほどではないにせよ、やはり上がる傾向にあります。これに対して、建物の価格は年数がたつにつれて下がるのが原則なのですが、建築資材や賃金があがることによって建物の価格も上がることがあります。また、土地の価格が上がると地代が上がることによって家賃にはねかえってきます。ただ地価は投機的なあがり方をする場合があるので、それをそのまま地代や家賃に響かせるわけにはゆかない、とされています。
家賃がはじめから付近の建物のそれらにくらべて低いときには、家主と借家人とが親戚あるいは友人であるとか、家主が以前に借家人に世話になったことがあるとか、なにか特別の事情があるのが普通です。このような特別の事情がなくなったときには、付近の建物なみに家賃を値上げできてもよさそうですが、借家人のほうでは一度に家賃が高くなるのは困りますから、上げる方法や限度を考えねばなりません。判例にも、そのような場合に値上げを認めたものと認めなかったものとがあります。
その他、地代が値上げされたことや建物の利用価値を増すような改良を家主が加えたことなども、家賃値上げの根拠として認められましょう。
以上のような要件がそなわっていても、家賃が不相当に低いということにならなければ値上げは認められません。不相当かどうかは、その建物の適正家賃と考えられる額と比較して判断されるわけで、これも具体的なケースごとに公平の立場から考えられるるのですから、一律に基準を定めることはできません。

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