家賃の値上げ、値下げ請求への措置

家主から、今まで一カ月三万六千円であった家賃を、来月から六万円に値上げしたいという請求を受けました。少少の値上げはや行をえないと考えていますが、一年前にも二割値上げされたことだし、付近の家の家賃に比べてあまり高すぎますので、要求には簡単に応じたくありません。どうすればよいでしょうか。また、家主がどうしても六万円でなければ受け取らないといいますので、しかたなく三万六千円の供託を続けました。ところが五ヵ月目に、家主は、毎月二万四千円の債務不履行だから、五ヵ月分の不足額を支払わねば契約を解除すると通知してきました。どうすればよいでしょうか。
借家法七条は一定の要件がそなわっていれば、家主は家賃の値上げを請求できるし、借家人は家賃の値下げを請求できることを認めています。この場合、要件さえそなわっていれば、家主または借家人の側からの一方的な値上げまたは値下げの意思表示だけで、適正家賃類に値上げまたは値下げがなされたことになると考えられています。しかし、値上げまたは値下げの要件が十分にそなわっているかどうか、そなわっているとしても家主または借家人の申し出ている家具類が適正なものであるかどうかは、たやすく決められない問題であり、実際上、一方からの値上げまたは値下げの申出に対して相手方がなんらの異存もなく応じるという場合はあまり多くないといってよいでしょう。これらの点について家主と借家人との問の話合いで解決がつかない場合は、結局、裁判所によって判断してもらうことになります。借家人が払う家賃額が足りないことを理由に、家主から契約解除をしたうえで明渡請求の訴訟を起こし、その前提として家賃額についての判断がされる、というのがふつうです。この判決が確定するまではかなり時間がかかりますが、その間、家主と借家人は家賃についてそれぞれどのような態度をとればよいのかというのがこの場合の問題です。問題点は、値上げ、値下げの双方についてたいたい同じですが、値上げのケースが実際上ほとんどだと考えられますので、これを中心としてお話したいと思います。
家主からの家賃値上げの請求に対して、六万円というのは高すぎるが少々の値上げはやむをえないと考えています。そこで、払ってもよいと思われる家賃額をかりに四万五千円としましょう。借家人としては、家主のいう六万円を認めるわけにはゆかないし、かりに六万円持ってゆけば家主の言い分をそのまま認めたものととられるおそれがあるので、従前どおりの家賃三万六千円か、せいぜいのところで四万五千円を払おうとされるでしょう。これに対して家主のほうでは、だまってそれを受け取ってしまうとそれで満足して六万円の請求はひきさげたものととられるおそれがあるので、六万円でなければ受け取らないというか、受け取ってもそれは六万円の一部分だという留保をつけるでしょう。そして、借家人がどうし ても六万円は払わないと頑張れば、差額分請求の法的手続を取ったり、またそれとあわせて債務不履行を理由とする契約解除の意思表示をすることも考えられます。この場合も結局は訴訟になるのが通例です。

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家主が借家人の持参した家賃をどうしても受け取らないとき、そのままほうっておいたり、翌月心どうせ家主は受け取らないのだからとなにもせずにいると、裁判上借家人に不利となるおそれがあります。それはこういうことです。借家人が家賃を家主の家へ持参するのは、債務者として弁済の提供をしたことになります。債務者がこの弁済の提供をおこたると債務不履行として契約解除の一つの根拠になります。債権者、この場合の家主の受け取らないという意思が非常にはっきりしているときには、債務者(借家人)は必ずしもそのつど弁済の提供をしなくてもよいという判例がありますが、反対の判例もあり、また受領拒絶の意思がはっきりしているかどうか、弁済の提供をしたかどうかが争われることが多いので、借家人としては家賃の供託をしておいたほうが安全です。家賃の供託が有効なものとなるためには、家主が受取を拒んだことが必要ですから、しょせん無駄とは分かっていても、一応家賃を持参する旨を口頭で伝えておかれたほうが無難です。供託は法務局または地方法務局にするのですが、裁判所のようにどこの法務局でなければならないということはありませんから、お近くの法務局または地方法務局ヘゆかれて、その辺にある代書星さんで書類を作ってもらって手続すればよいと思います。
本問の場合毎月四万五千円ずつ供託をすることになりましょう。そうしますと、裁判の結果毎月五万四千円が適正な家賃額だという判決が出た場合にどうなるでしょうか。この判決は家主が家賃の値上げを申し出たときに彼はどれだけの家賃を請求する権利があったかを確定するものですから、裁判確定の結果、家賃は家主の値上げの申出があったときから、つまりその翌月の分から五万四千円だったということになります。その結果、四万五千円の供託では毎月九千円ずつ足りなかったことになり、一部の債務不履行を理由に家主が契約の解除もできるかという問題を生じます。判例のだいたいの傾向をいえば、借家人が従前の家賃額だけを提供または供託したときには解除は有効ですが、家主の値上請求額が不当に高類なときや従前の額と適正家賃額との差が小さいときは、解除は認められないとしています。また、借家人が従前の額そのままではなく若干値上げして自分が相当と思う額を提供ないし供託したときは解除は許されないでしょう。
昭和四一年の借家法改正で、同年七月一日以後に家賃値上げの請求がなされたときは、このような問題は生じなくなりましたが、このような点について十分注意しておく必要があります。

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