家賃受領の権限のある者

私は、Aから家を借りていましたが、BがAからこの家を買ったから今月分から家賃は私に払ってくれといってきました。ところが、Aは、Bは代金を全部払っていないし、所有権は留保しているのだから、自分にまだ所有権があるといい、家賃の支払を督促してきました。この場合はどちらに支払ったらよいのでしょうか。そして、どちらにも支払わないでいると、どうなるのでしょうか。
有効に弁済を受領しうる者は、原則として、債権者であることはいうまでもありません。しかし、一方では、債権者への弁済が有効とされない場合があり、他方では、債権者でなくまた受領権限もない者への弁済が有効とされる場合があります。
債権者への弁済が有効とされない場合は、その債権が差し押えられている場合、債権者が破産した場合、その債権の上に質権が設定された場合です。債権が差し押さえられている場合は差し押えた者、債権者が破産した場合は破産管財人、その債権上に質権の設定されている場合は質権者に弁済しなければなりません。
債権者でなくまた受領権限もない者への弁済が有効とされる場合は、債権の準占有者への弁済受取証書の持参人への弁済の場合です。
まず、債権の準占有者への弁済というのは、真の債権者ではないが債務者の立場からみていかにも債権者らしくみえる者に対して、善意、無過失で、債務者が弁済したときに、その弁済を有効と認める制度です。例えば、権判者でないのに貯金通帳や恩給証書と印をもって貯金の払戻しまたは恩給支払を求めた者に弁済した揚合、本当は相続権がないのにいかにも相続人にみえる者に弁済した場合、差押、転付命令が無効であったが、有効と思ってそれを得た者に弁済した場合などに、その弁済を有効と認め、弁済者を保護する制度です。次に、受取証書の持参人は弁済受領の権限を委任されたりたとしているようにみえますので、弁済者が善意、無過失で弁済したら、持参人が、例えば受取証書を盗んだ者のように、受領権限をもっていなかった場合でも、弁済者を保護しようとするものです。

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動産や不動産の売買の道程で、その物から果実が生ずることがあります。法律上、果実というのは元物に対する概念であり、天然果実と法定果実に分かれます。天然果実というのは、例えば土地に対して土地からの生産物、乳牛に対して乳牛から出る乳、牛馬に対して牛馬から生まれる子の牛馬などです。法定果実というのは、土地、建物に対してそれの賃料のごときです。売買の過程で生じた果実は売主、買主のいずれに帰属するかという問題が生じます。特約がない場合にそなえて、民法五七五条は、引渡しを基準とし、引き渡さないまでは売主、引渡ししたら買主に収取権があるとしました。物が第三者のもとにあるときは引渡しはふつう指図による引渡しでもよいのです。本問の場合は、指図による引渡しがあったかどうか不明ですが、とにかく、一般には、売買当事借間における果実の帰属は引渡しによって決着がつくわけです。しかし、第三者がどちらに法定果実たる家賃を支払えばよいかということは、当事者間の問題とは別になります。そこで、本問では、借家人の取りうる態度として、登記簿を調べて登記上の権判者に支払った場合、登記簿を調べないで適当と思う者に支払った場合、債権者の確知が不能として供託した場合、A・B間にはっきり決着がつくまで何もしないでいる場合が考えられます。
登記上の建物の権利者に支払った場合、AとBは、所有権が移った、移らないといって、家主たるの権利を借家人に対して主張しています。そこで、一つの方法として、登記上権利関係を調べ、現在の所有権者に対して支払うということが考えられます。判例は、賃貸不動産の譲受人は、登記をしなければ、賃借人に対し、所有権の取得、賃貸人たる地位の承継を対抗しえないとし、賃料請求の関係においても同じだとしています。学説も多くこれに賃成しています。もっとも、譲受人と賃借人との関係は対抗関係ではないとし、登記の有無にかかわりなく、真の所有権者は賃料の請求ができるという少数説もあります。理論的にはこのほうが正しいと思います。しかし、この説をとっても、賃借人が登記上の権判者に支払った場合、後に登記上の権判者が真の所有権者でないことが判明したとしても、債権の準占有者への弁済として、その支払は有効となります。
登記簿を調べないで適当と思う者に支払った場合、この場合は、支払後に真の権判者が決定し、支払が真の権判者への支払でなかったときに問題が生じます。いくつかの場合に分けることができます。第一に、借家人が登記簿をみないでAに支払ったが、登記上の権判者はAとたっていたものの、真実の権判者はBであることが後に決定した場合です。前述における判例、通説をもってくれば、Bは借家人に対抗できませんから、借家人の支払は有効となります。前述における少数説に立っても、債権の準占有者への弁済として、借家人の支払は有効となります。第二に、借家人が登記簿をみないでAに支払ったが、登記上の権判者はBであり、真実の権判者がBであることが後に決定した場合です。この場合は、登記の対抗力による理論を援用できませんから、借家人は、もっぱら債権の準占有者への弁済を主張するほかありませんが、登記簿を調べなかったことが過失と認定され、債権の準占有者への弁済も成立しない恐れもあります。しかし、ふつうの住宅の借家人に無過失たるために登記簿の調査まで要求するのはやや厳しいように思いますので、まあ債権の準占有者への弁済が成立するでしょう。第三に、第一の場合のAとBを入れかえた場合です。この場合は、第一の場合と同じ結果となります。第四に、第二の揚合のAとBを入れかえた場合ですが、この場合は、第二の場合と同じ結果になります。
債権者の確知不能として供託した場合、供託原因は、債権者が受領を拒絶したとき、債権者が受領不能であるとき、および債権者を確認できないときです。本問の場合は、確認不能として供託すれば、その供託は有効です。供託は現実に支払ったと同じ効果をもちます。供託金をAが受け取るかBが受け取るかは、借家人が関知する必要のないことです。
はっきりするまで支払も供託もしないでいる場合、この場合は、借家人は家賃の滞納をしていることになりますから、はっきり決着がついたのちに、遅滞なく借家人が滞納家賃を支払わなかった場合は、真実の権判者は契約を解除することができます。解除の前提として催告を要するかどうかは、決着がついたことを借家人が知ったときまたは当然知るべきであったときから、どれだけの日時が経過しているかによって決まります。決行がつかない前に、AかBかが履行遅滞を理由に催告なしに解除しても、その解除は効力を生じないと労えられます。近時の判例は信順関係理論により解除の有効、無効を決めていますが、信頼関係が破談されたとはいえないからです。決着がつかない前にAかBかが催告したが、借家人がどちらに支払わなかったので、契約を解除した場合にその解除が有効かどうかですが、不払賃料の多少その他の事情を考慮し、信頼関係の有無を判断した上で、決定されると思われます。

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