家賃供託金の還付と取戻し

家賃値上げをめぐって借家人との間に争いがありますので、借家人は六ヵ月前から、従来の家賃を供託しています。私は、値上げの意思をひるがえしたのではないことが分かるようにして、供託金を受領したいのですが、どうすればよいでしょうか。また、私は、この供託金の請求権を私の債権者に譲渡したいのですが、譲渡できるものでしょうか。借家人は当分供託を続けると思いますが、今後の供託金の請求権も譲渡できるでしょうか。
家主が値上げの意思をひるがえさずに賃料の払渡しを受けるためには、供託受諾、ただし賃料一部弁済受領の留保をする旨を払渡請求書に記載したうえで交付を受けるのが無難です。また、この交付を請求できる権利、すなわち、還付請求権は、譲渡することができますが、しかし将来の還付請求権は供託物が供託され、現実化されない以上譲渡できないことになっています。

家賃を供託しましたが、都合により、取り戻したいと思います。取戻しができるでしょうか。
もとより賃料を供託した借家人は、家主が受諾するまでなら、その賃料の取戻しを請求できますし、その手続は、供託所に対して、還付請求のときに使用するのと同じ払渡請求書その他の添付書類を提出すればよいのです。
さて、供託の申請によって始まった供託手続は、供託物の払渡しによって終了しますが、供託物の払渡しには還付と取戻しとの二つがあります。被供託者が、供託物の払渡しを受けることが還付、供託者が払渡しを受けることが取戻しとよばれています。

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この請求権については、取戻請求権のように法文上の根拠はみあたりませんが、そもそも供託というのは、第三者のためにする寄託契約なのですから、その契約の効力としてこの請求権が認められるわけです。しかし、そうであるとしても、被供託者が還付を受けるのに、通常の第三者のためにする契約の場合のように、特に供託物を受け取るという受益の意思表示をしなくてもよいのです。
被供託者が供託物の還付を請求しようとするときは、「供託物払渡請求書」に、請求者またはその代表者もしくはその代理人が記名押印して、それを供託所に提出しなければなりません。供託物払渡請求書の書式は、還付の場合にも、取戻しの場合にも共通ですが、請求書に還付または取戻しの別を記載する欄が設けられています。
供託物払渡請求書に添付すべき書面は、供託書正本または供託通知書、供託物の還付を受ける権利を証する書面、反対給付をしたことの証明書、代表資格または代理権限を証する書面、印鑑証明書ですが、そのうち、供託物の還付を受ける権利を証する書面は、弁済供託にあっては、供託書正本または供託通知書自体に、被供託者の権利の内容が明らかにされている場合には不必要です。また、債務者の弁済が債権者の給付に対応してなされるという場合には、債権者はまず自己の給付をしたのちでなければ供託物を受け取ることができませんので、反対給付をしたことの証明書も必要ですし、請求者が名義人本人であることを証明する資料として、住所地の市区町村長の印鑑証明書を提出しなければならないことになっています。
なお、判例には、被供託者が供託者に対して、請求額よりも少額の供託金を債権の一部に充当する旨通知し、そのうえ供託所に対してこのような留保の意思を明らかにして還付を受けたときは、供託金は、債権の一部に充当されたとみるものもありますが、単に留保の意思表示を供託所にするだけで、足りるとするものもあります。
実務上は後者の立場で処理されています。もっとも、古い判例ですが、被供託者が、供託された賃料の一部を、なんらの留保なくして受領したとしても、ただちに賃料請求権を放棄したことにはならないとするものがあります。なお、賃料として供託した金銭を損害金として還付請求することは許されていません。
還付請求権は取戻請求権と同様に、民法上の債権に準じて、これを譲渡したり、買入したりすることができます。この譲渡は、供託手続外において私人間の契約で行なわれ、これを供託所その他の第三者に対抗するためには、譲渡人から供託所に対して譲渡の通知をすることを必要とします。しかし、この場合には通常の債権譲渡の場合とは異なり、供託所が譲渡や買入の承諾をすることはないとされています。
被供託者の債権者は、被供託者が供託所に対してもっている還付請求権を差し押え、供託所をして直接、自已に還付せしめることのできる似付命令を裁判所からえたときにも、還付を受けるには、通常の還付請求に必要な書類をととのえねばなりません。
また還付請求権が消滅時効にかかる期間は、その請求権は一種の私権として扱われ、供託のときから一〇年とされています。
債務者は、債権者側の一身上の事由によって供託をしたといえますから、債権者をして、供託によってただちに供託所に対する確定的な権利をえさせる理由はないのです。とりわけ、供託後、事情が変更したり、債務の成立に疑いを生じた場合にも、供託者に救済の手段がないことは、不合理ですので、供託者に取戻請求権を与えています。すなわち、弁済供託の場合には、債権者が供託を受諾しない間、または供託を有効とする判決が確定するまでは、供託者が供託物を取り戻すことができます。ただし、供託法八条に定める供託の錯誤とは、要素の錯誤のことをいうのですから、要素の錯誤にあたらない、例えば賃貸借の継続を過信して賃料を供託した場合には、錯誤を理由に取戻しを求めることはできません。しかし、その他の供託の場合には、弁済供託の場合と異なり供託が無効となったり、還付請求権の不存在やその消滅を証明した場合にのみ取戻しを求めることができるのです。
いずれにしても供託者が供託物を取り戻した場合には、供託がなされなかったものとみなされることはいうまでもありません。取戻請求権も、還付請求権と同じように譲渡、買入をすることができますが、両者はそれぞれ独立した関係にありますので、取戻請求権が譲渡されただけでは、還付請求権にはなんの影響もないのです。
供託物取戻請求権が消滅時効にかかる期間も、還付請求権のそれと同じです。
ところで、供託者が供託官に供託金の払渡請求を求めたのに、供託官がその請求を却下したという場合、供託者はそのような却下処分が取り消されるまでの間でも、直ちに供託所の管理主体である国に対し訴によって供託金の払渡請求を求めることができるとする判例があります。

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