家賃と修繕費立替金との関係

屋根がすっかり傷んでしまい、応急措置をしてもどうにもなりません。ところが、家主と交渉しても葺き替えてくれませんので、私から屋根屋に頼んで屋根を全部取り替えました。その代金を家主が出してくれませんので、私が立て替えて払いました。そこで、この立替金を家賃から差し引きたいのですができるでしょうか。なお、立替金額が多くて、たとえば、三回以上の家賃分にあたる場合は、どうすればよいでしょうか。さらに借家人は、家主が借家を修繕するまで家賃の支払を拒むことができるのでしょうか。
借家人は、家主に代わって立て替えた修繕費をどのようにしたら回収できるのでしょう。またその場合の修繕費が一回分の賃料にみたない場合と、本問のように三回分にも及ぶ場合とでは、その取扱はどのように異なるのでしょう。なお、家主をしてあくまで修繕させる必要がある場合は、対抗手段として、借家人は貸主が修繕義務を履行するまで、賃料支払義務の履行を拒絶することができますが、それはどのような場合に認められるのでしょう。
賃貸借は、無償契約である使用貸借と異なり、有償契約であり、貸主は、家貸のなかに修繕費を計上していますので、貸主は、特約のないかぎり、賃貸借の目的物を修繕する義務を負わされていると考えることができます。ただ、その賃貸借に地代家賃統制令が適用されている場合には、家賃が低額に抑えられているため、修繕費を負担させることは酷であるとして、家主の修繕義務を免除した事例もみられましたが、しかし、統制令が適用される場合でも、統制令は大修繕による家賃の増額を認めているのですから、本来家主の修繕義務を否定するような立揚にたってはいないといえます。
さて、賃貸借の目的物に修繕すべき部分がある場合には、民法六一五条は、借主がそのことを遅滞なく貸主に通知するよう定めています。
ところで、借家人がこの通知をしたけれども、貸主が修繕に応じてくれないため、自分で修繕をしなければならない場合とか、または修繕を早急にすることが必要であるため、借主がその修繕のためにみすから出費した費用は、立替金として家主から回収できるわけです。

スポンサード リンク
間取り

一口に修繕費の立替金といっても、それには家屋の維持保存のための修繕費、すなわち必要費にあたるものと、それ以外の修繕費、すなわち有益費にあたるものとがありますが、必要費は、賃貸借が終了しない間でも、いつでも直ちにその償還を求めることができますので、家主が必要費を償還してくれなければ、借家人は、必要費償還請求権と家賃債権とを対等額で相殺し、残額だけを支払えばよいのです。しかし、この必要費が賃料の三回分にあたる場合には、修繕をした月の賃料で相殺したとしても二回分に相当する必要費が未払のままで残るわけですし、もしその二回分の賃料の履行期が未到来の場合には、相殺をするには自動債権、受動債権がともに履行期に達していなければならないのですから、その時点では、相殺をすることはできないということになります。そこでその場合には、借家人は、翌月、翌々月の賃料債務の履行斯が到来したときに、その月の分を相殺すればよいわけです。なお、家主が修繕に応じないため、損害が生じた場合には、その損害賠償請求権と賃料債権とを相殺することもできます。
さて、家主としては、借家人からの必要費の償還請求に応ずるにしても、修繕に要した費用が明確にならないと困りますので、借家人に対して修繕に要した費用額の呈示を求めることができます。
必要費とみられる修繕立替金の範囲は、賃貸の目的物の原状を維持するための、あるいは、原状を回復するためのものばかりでなく、一般には、より広く、目的物を通常の用法に適する状態において保存するために支出されたものまで含めて理解しているようです。例えば支柱の取替えとか、数カ所にわたる大規模の雨漏り部分の修繕ばかりでなく、屋根の葺替え、壁の塗替え、床の張替え等の工事をし多場合も含めますが、しかし、賃借店舗の表入口の修繕工事費のようなものは、有益費にあたるとみられていますので、その償還請求権は賃貸借終了後に、延滞賃料債権と相殺することができるにすぎません。
判例には、古くから、建物の賃借人が建物の引渡しを受けても、賃貸人が修繕義務を履行しておかなかったため、その目的物が使用収益に過する状態を回復しえない間は、賃貸借の期間中でも賃借人は賃料支払義務を負担しなくてもよいというものがありますが、しかし、それに反して、目的物の使用収益を認容されている以上、修繕義務の不履行があるとしても、それは一部の義務不履行にすぎないため、修繕義務と賃料支払義務とは同時履行の関係にはないとするものもあります。
今日では、賃料支払義務の拒絶を正当と認めるのが判例の一般的傾向といえましょう。しかし、屋根の数個所にわずかな雨漏りがあり、その雨漏りが簡単な応急措置だけで十分防止でき、修繕が軽度のもので足りるという場合には、同時履行の抗弁権を行使し賃料の支払を拒絶することは、信義則に反し許されないことだとしています。
ところが、その他、学説には、時の経過とともに、過去の期間についての修繕は不可能となり、したがって修繕義務は履行不能となって消滅しますので、それについて同時履行は考えられないとし、損害賠償請求だけを認めるものがあり、判例にもそれと同じ立場にたつものがありますし、また家主が修繕義務を履行しないので、借家人のほうから家賃の支払を拒むことができるにしてら、反対に、家主のほうから借家人に対して賃料の前払があるまで修繕しないといって抗弁することができないので、修繕義務と賃料支払義務とは同時履行の関係にあるとは言い難いとする考え方があります。後二者の考え方は別にして、軽微な程度の修繕でないかぎり、その性質に異論があるにしても、支配的な考え方にしたがって、借家人は、家主が修繕をしないかぎり、家賃の支払を拒絶してさしつかえないと思います。

間取り
借家に適用される法律/ 間借りと借家法の適用/ 下宿と借家法の適用/ 使用貸借上の建物と借家法/ 借家のための事前調査と注意事項/ 借家契約書の形式/ 契約書のない借家契約/ 借家契約の特約の効力一般/ 個人の自由を制限する特約/ 本当の家主でない者との契約/ 代理人との借家契約/ 借家契約の保証人/ 契約の締結と建物の滅失/ 家賃の値上げと値下げ/ 適正家賃の算定/ 家賃の算定方法/ 家賃の値上げ、値下げ請求への措置/ 家賃を増減しない特約/ 滞納家賃の取立/ 家賃滞納を理由とする契約の解除/ 過大な催告/ 家賃滞納と無催告解除の特約/ 家賃滞納と失権約款/ 家賃支払の場所と時期/ 家賃受領の権限のある者/ 家賃の受領を拒絶されたときの措置/ 家賃の供託原因/ 家賃の供託手続き/ 家賃供託金の還付と取戻し/ 家賃と修繕費立替金との関係/ 権利金の性質/ 権利金の算定方法/ 新築前の権利金の前払い/ 権利金と借家権の譲渡、転貸/ 権利金の取戻し/ 家賃の滞納と敷金/ 家主の交代と敷金/ 新家主に対する抵抗力/ 借家人間の対抗力/ 借地権の消滅と借地上建物の賃借権/ 借家の修繕義務者/ 修繕に関する特約/ 借家の乱暴な使用/ 借家の無断増改築/ 借家人の敷地利用/ 借家の改装工事/ 家屋の使用目的の特約/ 一部類焼した借家の明渡請求/ 請負契約の解除/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサード リンク

プライバシーポリシー