権利金の性質

独立家屋にしろ、アパート式の室にしろ、店舗にしろ、新しく賃借するにあたっては、契約締結のさいに、家賃とは別に、多額の金銭が授受されることが多いようです。このなかには、家賃支払債務を担保する目的をもつ敷金のほかに、権利金、礼金その他の名目で授受されている金銭があり、これらをふつう権利金と呼んでいます。権利金は次のような沿革で発生してきたものです。
家を借りたい、家を貸したいという、需要と供給が合致すれば、家賃はいくら、期間はどれだけという契約条件のもとに、借家契約間係がはじまります。需要と供給のバランスがとれていれば、このようなかたちで借家契約が締結されることになるわけですが、多くの人々にとって、自ら家を所有することが、経済的に不可能に近いという事情に加えて、社会が動態的になり、人の動きがはげしくなってくると、特に都会においては、借家に対する需要が、きわめて高くなってきます。借家の供給も、需要に伴って伸びれば、需給のバランスはそれほどひどくは崩れないわけですが、住宅は大量生産ができるものではないうえに、資金的にも、採算のうえからいっても、簡単には高需要に追いついて供給を高められるものではありません。そうなると、どうしても住宅需要が供給を上まわる、という状態が恒常化することになります。
そこで、限られた供給量をめぐって、需要側が競争することになるわけです。ここに、いずれからともなく、より高く出すなら貸す、より高く出すから貸してくれ、という現象が生まれてくることになります。当初は家賃の額での競争ですが、契約締結のさいに、一時的に多額の金銭が授受されるようになったものが、権利金、つまり借りる権利の代価だということになります。
ごく一般的にいえば、借家の場合にかぎらず、借地の場合でも、権利金は、以上のような需給関係を反映し、需要過多、供給過少のうえに基礎をおいているわけですが、賃貸借の目的物がなんであるかによって、権利金といっても、かなり違った意味内容と沿革を持っています。

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まず、借家のうちでも営業用の店舗の賃貸借の場合には、明治時代以来、その建物の有する営業上の利益が、賃賃借契約締結のさいに、権利金として授受されてきています。とりわけ当該店舗が、以前から老舗として有名であったという場合には、暖簾代とか、得意先をも含めて財産的な価値を持ち、いわば営業権の譲渡というかたちで、権利金が授受されるわけです。ま。たく新しい場所にできた店舗であっても、その場所が駅の近くだとか、目ぬき通りにあるといったように、商売上きわめて有利な揚所にある場合には、そうしたことを折りこんで家賃が高いわけですが、そのほかに場所的利益としての権利金が授受されるわけです。つまり、店舗のような営業用の建物の場合には、建物自体の利用の対価としての家賃とは別に、場 所的な利益があるものとして、その対価としての権利金が授受されるわけです。
なお、借地の場合には、借地法によって借地権がきわめて強い権利として保障され ているため、いったん貸すと容易に土地を返してもらえなくなることから、いわば地主の土地所有権の一部が削られてしまうかたちになり、その代償として、はじめに権利を設定するにあたって、その対価としての権利金が授受されることが多いようです。土地をいったん貸すとなかなか返してもらえないのなら、売却してもいいが、売買すると一時に多額の税がかかってくるという理由で、売買価格の七〜八割、多いときには八〜九割とい高い権利金をとって、実質上は売買と同じですが、かたちのうえでは賃貸ということも行なわれます。
一般の居住用の借家について、権利金の授受が行なわれるようになったのは、昭和一五年に地代家賃統制令が制定されてからだといわれます。地代家賃統制令は、戦時下の住宅供給の激減に伴う住宅難に対処するため、地代と家賃の類を統制する目的でつくられたものです。統制令によって家賃の類がおさえられて、家賃のレベルでの競争が封じられたため、低い家具類をカバーするために、契約締給のさい、一時的に金銭の授受が行なわれるようになったわけです。もとより統制令も、家賃類の統制だけでは実効性がないことを予期し、なんらの名目をもってするを問わず統制類を免れるような脱法行為を禁じていたわけですが、実際上、家賃とは別個に一時的に授受され、しかも受領証がほとんど出されない権利金を取り締まることは、不可能に近く、統制額が物価上昇とともに敏速に上げられなかったため、実情とかけはなれてしまったという事情もあって、低い統制家賃類をくぐるための、したがって賃料の前払の意味をもつ権利金の授受が、 一般化することになったわけです。とりわけ、終戦後、戦災による住宅の大量破壊と、外地からの引揚げや復員による人口の増加に伴う未曾有の住宅難のもとにあって、権利金の授受は常識化したわけです。地代家賃統制令が、昭和二五年七月以後新築の建物および九九平方メートル以上の建物については適用されなくなって、家賃の統制のある借家が相対的に少なくなってきたあとも、高い家賃のほかに、権利金を授受する慣行が、家主の既得権益のようなかたちであとをひき、現在も住宅の需給のアンバランスを背景にして、借家はもちろんアパートについても、授受されているわけです。
また貸主が、採算にあうだけの家賃をとりたいと思っても、借主側ではある限度までしか支払能力がないため、毎月の家賃類はある限度におさえるが、その代わり契約当初に、ある程度まとまった金を、権利金としてとって、借主は一時的にどこかで工面する、バランスをとる、というかたちの権利金もあるようです。
いずれも住宅難が緩和していけば、権利金がなくなるとまではいえないにしても、賃料の一括前払の性質を特つ、ふつうの権利金などは、その額が小さくなっていく方向ヘ向かうでしょう。
権利金の額は、ふつうは、賃貸借の存続期間に対応してきめられることが多いようですが、期間が満了した場合に、再び権利金を請求されるというわけではなく、契約を更新するにさいしては、更新料といって、契約更新の対価が授受されているようです。借家契約の期間が満了しても、家主に明渡しを必要とする正当の事由がないかぎり、契約は法律上、当然更新されるわけで、なんら更新料の支払は必要ではありませんが、権利金に相当するものとして、少額の更新料が授受されているわけです。

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