権利金の取戻し

借家期間を一応五年とし、期間が満了したら更新できる旨を定め、権利金を払って契約をしました。ところが、二年目に隣家からの失火で借家が焼けてしまいました。権利金の取戻しはできないものでしょうか。なお、期間満了により、また期間の定めのない場合に家主の解約申入により、賃貸借契約が終了するときに、権利金は返してもらえるのでしょうか。
ごく古い時代からの借家契約を別とすれば、借家契約には必ずといっていいほど権利金が授受されています。権利金の授受されている借家契約が終了した場合、権利金はどうなるのか、つまり借家人は権利金を取り戻すことができるかという問題があります。権利金の返還を請求できるかどうかは、第一には、権利金がいかなる目的で授受されているか、つまり権利金の性格いかんにかかっていますが、それだけではなく、第二に、借家契約がどのような事由で終了したかにかかっています。

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まず、本問の場合、つまり賃貸借の目的物が借家期間の途中、家主、借家人のいずれの責めに帰すべき事由にもよらないで滅失した場合から考えてみましょう。家主の不注意で借家が滅失した場合には、家主は目的物を利用させる債務の履行が不能になるわけですから、借家人が目的物を利用できなくちこたことによる損害の賠償は当然として、権利金を少なく残存期間に相応して返還しなければならないといえるでしょうし、逆に、借家人の不注意で借家が焼失してしまった場合には、借家人は家主の所有物を滅失させた責任を負うとともに、権利金の返還を請求できないものと考えられます。問題は、したがって、借家の滅失につき、双方に責任がない本問のような場合だということになります。借主としては、五年間借りられるからというので、それに相当する権利金を支払ったのに、二年で借家が滅失してしまえば、利用できた二年分相当の権利金の返還は認められないにしても、残る三年分の権利金は返してもらわないと割に合わないと考えるわけです。特に本問の場合、期間満了の場合には更新できることになっていたわけですから、権利金は五年相当分以上たったともいえます。
ここで問題となるのは、この権利金がいかなる目的で授受されていたのかということです。場所的利益の対価としての権利金であるとされた場合に、判例は、権利金は賃借人から賃貸人に寄託されたものだから返還を求めうるとするものと、特約のないかぎり権利金の返還は認められないとするものとかあります。また、期間の定めのある賃貸借で、賃借人が破産したので賃貸人が解除して契約が終了した場合について、判例は、場所的利益の対価としての権利金は、期間に相応する価格であるから、これを按分し、残存期間相応分の返還が認められるとしています。場所的利益の対価という意味の権利金であっても、なんらかのかたちで 存続期間と関連があるわけですから、契約の途中、当事者のいずれにも責任のない理由で契約が終了した場合には、残存期間に相応した分だけの返還が認められるとするのが妥当な線であると思われます。権利金が賃料の一括前払の性格を持っているとき、借家の場合にはこういう権利金が多いといわれますが、当然期間に応じて 返還を請求できることになります。
第二に、期間満了の場合にはどうなるかを考えてみましょう。まず、賃料の一括前払という権利金の場合には、権利金の額は約定期間に対応して定められ、その期間が満了したわけですから、当然返還は認められたいことになります。場所的利益の対価としての権利金、特に営業用店舗のような場合が授受されていて、契約が終了し、目的物を返還するさいには、それまでの間に賃借人が積み重ねあるいは付加せしめた利益もあるわけですから、その分だけでも権利金が返還されてもよいとも考えられます。しかし、権利金は、期間に相当する場所的利益を買い取るというかたちのものですから、たとえその間に場所的利益が増加しても、権利金の返還ということは認められないでしょう。場所的な利益は、いわば無形の造作として、造作買取請求権を行使するかたちで賃借人に償還されるべきでしょう。
期間の定めのない契約において、家主の解約申入により終了するときに、権利金の返還を請求できるかどうかはむずかしい問題です。この場合には、権利金が、どれだけの期間に見合うものとして授受されていたかの問題になるわけです。両当事者それぞれに思うところがあるわけでしょうが、一般に予想されるより極端に短い期間で終了する場合以外は、権利金の返還は請求できないといえるでしょう。
存続期間の途中で転勤その他賃借人側の事情で引越さなければならない場合には、せっかく権利金を支払って借りたのに出なければならないということで一部なりとも権利金を返還してほしいところでしょう。とりわけ残存期間が相当あるような場合にはそういえるでしょう。しかしこの場合にもやはり返還の請求はできないでしょう。ただ、明らかに期間に対応して権利金が定められているような場合には、残存期間に相当する額の権利金の返還請求をしてみるべきでしょう。
存続期間の途中で明け渡さなければならなくなった場合、権利金をとって他人に借家権を譲ることも考えられます。しかし、借家権を他人に譲渡するには、家主の承諾が必要とされていますので、他人に譲渡して権利金を回収することはできません。ただ、承諾料という名目で金銭を支払えば、貸主が借家権の譲渡を承諾する場合もありますので、その場合には、承諾料を支払って他人に権利を譲ることができるわけです。

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