家賃の滞納と敷金

借家契約においては、必ずといってよいほど敷金が授受されています。敷金は、賃借人の賃料支払債務を担保する目的で、賃貸借契約が終了したさいに、借主に賃料債務その他の債務の不履行があれば、それを差し引いた残額を、不履行債務がなければそのまま借主に返還するという約束のもとに、借主から家主に支払われる金銭をいいます。日本では、明治以前から広く行なわれてきたものです。
賃貸人は、借賃その他、賃貸借関係より生じた債務につき、賃借人が建物に備え付けた動産のうえに先取特権を持っているわけですが、それだけでは賃料債務の担保には十分でないうえ、先取特権を行使して弁済を受けるのは手続上面倒なため、より簡単で確実な敷金をとるわけです。
敷金の額は、通常は、家賃類を基準として家賃何カ月相当分という計算のしかたをします。三ヵ月分というのが多いようですが、なかには六ヵ月分、一年分ということもあります。要するに当事者間の合意できめるわけです。

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敷金はいかかる法律的性質を持つかについて、債権質、すなわち賃貸人が賃借人の自己に対して有する敷金返還請求権のうえに質権を有するとみる考え方があります。これは、敷金の担保的作用に注目し、法律的にも担保物権とみるのですが、種々の点で無理な説明が必要となり、現在ではとられていません。現在、一般にとられているのは、停止条件付返還債務を伴う所有権移転という考え方です。すなわち、これによれば、賃貸人は賃借物返還のさいに賃料の延滞その他、賃借人に債務不履行がないことを停止条件として、不履行債務があれば当然それを控除して、返還することを約束して、金銭を受け取るとみるわけです。
敷金によって担保される主たる債権は、賃料債権であることはいうまでもありませんが、賃料債権の元金だけではなく、その遅延賠償債権つまり遅延利息も含まれます。賃料債権のほか、賃貸借契約に関して賃貸人が賃借人に対して有するにいたった一切の債権にも敷金の効力は及ぶとされています。
契約は終了したが賃借人に債務が残っている場合、敷金が差し入れてあれば、敷金は当然に債務の弁済にあてられることになります。つまり、賃貸借終了時に存する債務は、敷金によってカバーされる範囲内において、当事者がその旨の意思表示をしなくても、弁済されて消滅したことになり、賃貸人は、延滞賃料のうち敷金額を控除して残る額しか賃借人に請求できないことになります。賃借人としても、債務をカバーして残る額についてしか敷金の返還を請求できません。
ここにみたように、敷金は賃貸借契約終了時における債務の清算を目的とするものですが、賃貸借存続中に、賃借人が、家賃を支払わないで、敷金から家賃を差し引いてくれと請求できるかと問題がでてきます。敷金は、契約終了時における賃料債務その他を担保するのですから、賃貸人がみずから充当することは自由ですが、賃借人から控除充当を請求することはできません。もし、賃借人からの控除充当が認められると、賃借人は、つねに敷金をゼロにしてしまうことができることになり、敷金の担保的作用がなくなってしまうからです。つまり、賃貸人としては、いつも敷金額だけの先払を保留する権利があり、それを意に反して奪われないことになります。したがって、敷金からの差引を請求することはできません。
賃借人が家賃を滞納すれば、債務不履行になり、賃貸人は履行を催告したうえで履行されなければ、契約を解除することができます。敷金がある場合、滞納額が敷金でカバーできないときにのみ解除できるのか、敷金額とは関係なく家賃の滞納があれば解除できるのか問題がでてきます。
まず、延滞賃料額が敷金額の二倍あまりあった場合につき、判例は「賃借人が賃貸人に差入れたる敷金は特別の定なき限り賃貸借の終了せざる以前に於ては当然に延滞賃料に充当せらるべきものに非ざるを以て賃貸借契約解除の前提として債務者に対し延滞賃料の履行を催告する場合に於ては該賃料より敷金を控除せざる金額に対し其の支払を求むる」ことができるとして、滞納賃料全額の請求を認めています。また延滞賃料額が敷金額に満たない場合、延滞賃料の支払を催告し、履行がなければ解除できるとするのが、判例です。これに対して、延滞額が、敷金額に達するまでは、そもそも解除の前提となる債務不履行にならないという批判もありますが、この批判のように解すると、賃借人は敷金額に達するまでは、賃料を滞納しうることになり、その結果、期間中に敷金からの控除充当を認める場合と同じく、敷金額を切り下げうることになるわけです。しかし、これは、敷金の担保的作用をなくするものとして、不都合だということになります。したがって、滞納があれば、敷金額をこえるかどうかに関係なく、催告のうえ、解除できるとすべきでしょう。ただし、一ヵ月あるいはニカ月賃料が遅れたからといって、ただちに催告のうえ解除することは判例法上必ずしも認められていません。

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