借家の乱暴な使用

借家人は、自動車の修理工揚に動めていますが、家に帰るとオートバイの修理を内職でやっています。家が振動するのに平気で玄関の中でエンジンをかけて修理をします。そのうえ、子供たちは乱暴で、家の中で角力をとったりして暴れまわりますので、畳、建具、障子などは痛み、すっかり家が荒れてしまいました。借家人に立ち退いてもらいたいのですが、これができないなら、せめてオートバイの修理だけはやめさせたいのですが、どうすればよいのでしょうか。
借家人は借りている家屋を善良な管理者の注意、つまり、普通の人が通常払わなければならない注意をもって、保管する義務を負っています。また、家屋利用に関して借家人は、契約またはその目的物の性質によって定まった方法に従わなければなりません。この義務に違反した保管義務、用法遵守義務違反かどうかは、当事者の意思あるいは慣習などをも考慮して定められます。
ところで、この義務違反があった場合、家主は一応、相当の期間を定めて違反行為をやめるよう催告し、それでもなお義務違反を続けるときにかぎって、家主、借家人間の信頼関係が破壊されたことを理由に、借家契約を解除できる可能性がでてまいります。ただ、例外的には、賃貸借(借家)関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあった揚合で、この催告をしても意味がないと認められるときは、催告なしで解除できます。

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本問では、借家人が内職として家の中でオートバイの修理を行ない、家がタ震動するのを放置している、というのですから、本来居住用のためにのみ貸した家主にとっては、家が早く痛んだり、近所から苦情をもち込まれたり、やかましくて気がいらいらしたりすることは、なんとも耐えられないことと思います。ですから、やかましく音を立てないよう要求するとか、オートバイの修理を止めるなら家を貸さなかっただろうから、修理をやめてくれ、ということは、当然法的にも認められます。借家契約の際、特にオートバイの修理はしないと約束していなくても、いいわけです。家主の要求に借家人が応じたなら、それでお しまいですが、もし、相変わらず修理を続けるようでしたら、信頼関係の破壊を理由に、借家人に立ち退いてもらうことができるでしょう。それなら、止めてくれという催告なしに、借家契約を解除できるでしょうか。おそらく、この理由だけからではできないと思いますが、子供たちがはなはだ乱暴である、という事情を加えて考えると、どうなるかを、次にみてみましょう。
小さい子供が家の中で角力をとったりすることは、そう目くじらをたてるべきではないかもしれませんが、中学生にもなっているのに、暴れられたのでは、家屋の寿命も短くなり、畳、建具類の損耗は無視できません。借家人は保管義務を負い、その家族は借家人がこの義務を履行するのにあずかっているわけですから、家の中で子供が乱暴な行為をすることは、借家人の義務違反になります。したがって、そのために痛んだ畳、建具類を修繕する 義務は家主になく、かえって損害賠償として、借家人に修繕させたり、修繕に要する費用の支払を求めることさえできるでしょう。それだけでなく、先にも述べたとおり、もっとふつうに使用してくれと請求し、それでも借家人側が態度を改めなければ、借家契約を解除することができます。
借家人の妻が勤務のため昼間はほとんど在宅せず、留守中にいたずらざかりの男の子三人が室内で野球などをするのを放任し、また、妻子は燃料に窮して建具類を燃料代わりにした結果、ガラス人格子戸二枚、腰高障子戸二枚、襖五ヵ所計一七枚、障子二枚、ガラス二枚、二畳間の床板、外壁数ヵ所が破壊ないし除去され、二階各室の入口まで土足で出入する状態になっており、さらに、水洗便所を使用不能にし、マンホールで用便して近所の非難を浴びたり、室内もろくろく掃除せず、塵の積もるにまかせ不潔きわまりない、という場合に、催告がなくても解除できる、とした判例があります。本問での子供の乱暴は、これに比べると、まだずいぶんましでしょうから、乱暴だけを理由に催告しないで解除するのは、無理かと思われます。
オートバイ修理行為と子供の乱暴とをあわせて考えてみても、現在ではまだ、信頼関係は破壊されていないとみられますから、すぐに借家契約を解除して、立ち退いてもらうことはできない、と考えます。というのは、他人に貸した以上、家主は家賃を受け取り、それが借家に投下した資本の回収になっているかぎり、借家人のすることにいちいち干渉すべきでない、とするのが、今日の原則的な考え方だからです。つまり、投下資本の回収を不能ないしひじょうに困難にする危険のある行為が、主として、借家契約の解除原因、信頼関係破壊となりうるのです。そうすると、オートバイ修理も子供の乱暴や借家人の義務違反ではありますが、まだこの程度にまで違しているとはみられません。
しかし、現在はそうであっても、先にも述べましたように、このような違反行為が続けられるとしますと、近い将来に、必ず投下資本の回収を困難にするでしょうし、オートバイ修理は家主を含めた近所の人達に精神的苦痛を与えるにちがいありませんから、オートバイ修理をやめ、善良な管理者の注意を払って子供に乱暴させないよう、借家人に催告できるはずです。このような催告にもかかわらず、借家人が態度を改めないときに、はじめて立ち退いてもらうことができましょう。なお、借家人に対し、「あなたのオートバイ修理は、家屋の保管、用法遵守義務に反するから、やめてもらいたい。もし、今後一ヵ月以内にやめられないときは、借家契約を解除する」と催告されたならば、おそらく借家人は、修理をやめるか、あるいは、玄関の中でエンジンをふかさないようになる、と思います。ただ、裁判所へ直接、借家人はオートバイ修理をやめろ、という訴訟を起こされても、現在では、家主の請求は認められないことをつけ加えておきます。

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