借家の改装工事

借家人は私の家を事務用品販売の事務所に使用することで賃借していましたが、最近、私の承諾もえないで、内部をすっかり改装し、喫茶店を始めました。契約を解除したいと思いますができるでしょうか。
ここでは借家を事務所に使用する特約があったとみられ、この程の特約は一応有効とされています。用法を特約することは、環境や家屋の構造などからみて、それらに適した利用のしかたが望ましく、そうでなければ、家屋の寿命を縮めたり、家主や近所の人たちに迷惑をかけるおそれがあるために、それを避けるための特約には合理性があるといえますし、また、特約したからといって借家人を一方的に不利な地位に追い込まないからです。ですから、この特約に反したときは、借家人は用法違反ということになります。ただ、その違反の程度が、家主に重大な不利益を与え、客観的にみて信頼関係を破壊すると認められる場合にだけ、家主に解除権が発生するにすぎず、違反したそのことだけからは、解除できるという結論はでてきません。ところで、借家人は、用法に反したばかりでなく、無断で家屋の内部を改装したというのですが、このことは解除原因になるのでしょうか。

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解除を認めた例として、契約条項中に、家屋を居住用以外に使用しないこと、他人を同居させないことなどの条項があるのに、借家人が居住以外の宗教教会場として使用し、入込人と称する信者を同居させたり、借家人の失火で近所をさわがせたような事情のある場合に解除を認めた例、
借家人が喫茶店用に建物の一部を借り、その後、隣接の他の部分を倍増しし、家主の入院加療中無断で右二つの部分の壁を抜き、それに接続して増改築を行ない中華料理店を営んだため、家主使用の住居部分の壁に亀裂が入り、便所の汲取りにも支障をきたすようになったので、家主は借家人に壁の修理を要求するとともに賃貸借契約の公正証書を作成するよう申し入れ、借家人がこれに応じた事案について、裁判所は、借家人の違反行為につき家主がこれを承認したとしながらも、借家人が増改築部分を自己の所有であるとしてその内妻名義で所有権保存登記をしたことは、賃貸人に対する客観的に重大かつ悪質な不信行為であると断じて、解除を認めた例、
借家人が住宅として借りた家屋の玄関の幅一尺、長さ二尺の板敷、四畳半の居間のうち三畳の部分の床板、台所の板敷のうち幅四尺、長さ一間の部分をとり外し、これらの部分を土間として、ネームプレート製作の仕事揚としたため、ネー ムプレート製作による相当大きい振動により、家屋が次第に破損してゆくであろうと認められる場合に、解除できるとした判決などがあります。
解除を認めなかった例として、店舗兼住宅の借家の店舗部分を事務所や商品の陳列場として利用してきた借家人が、窮境打開のため店舗部分を家主に無断で改造して、その一部でスタンドバーに類する小規模の飲食店をはじめた場合、
門柱と生垣を備えた住宅向きの構造の家屋の借家人が、玄関の土間に板敷を並べ木箱を置き側壁に板棚を設けて商品を陳列し、その左側三畳の間を板敷にして表通りに面する窓ぎわに陳列ケースを置き、駄菓子、玩具類の小売営業を行なっている場合、
いずれも解除を否定しています。あとの場合について、判決は次のように説いています。住居用として賃貸された建物の一部を賃借人が店舗として使用することは、契約に違反するものと一応いい得るようであるけれども、契約の実態によって更に検討すべきであって、特に使用目的について別段の意思表示のなされない限り、建物自体の構造を変更し、または建物を損傷するような改装をしたり、原状回復を困難にするような付加物を毀損したり、その他使用の態様によって賃貸人に損害を与えるおそれがある場合の外は、賃貸人は建物の一部を店舗として使用することを許さない意思ではなかったものと認めるのが相当である。この判決は、家主の意思に、解除できない根拠を求めている点を除いては、まったく正当であろうと思います。
ここにあげた例からいえることは、最初に定めた用法とちがった用法とならんで、無断転貸とか無断増改築その他の欺まん的行為が加わって、借家人の義務違反が相当ひどい場合に、はじめて信頼関係の破壊があったとして、解除が認められているということです。ですから、本問の改装工事がどの程度のものであるかによって、結論がちがってくるわけで、解除の可否はいちがいにいえません。しかし、一般に事務所を喫茶店に改装する場合は、使用方法を勝手に変えたことを考え合わせても、解除するのは困難ではないでしょうか。
ただし、次のような場合には解除できるものと思われます。まず、家主と借家人間にはっきり事務所として使用する約束があったこと、借家人側に喫茶店を営まねばならないようなさしせまった事情のないこと、最後に、家屋全部にわたって大規模な改装がなされたとか、階下部分の改装ではあってもその全部に汲ぶうえ、柱を切り取ったり壁をぶち技いたりして、容易にもとの状態へもどせない状態にあること、これらの条件が揃ったような場合です。先に引用した、解除を認めなかった判決の逆を考えられればよいと思います。なお、そのときには催告はいらないと考えます。

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