家屋の使用目的の特約

店舗を借り受け、果実店を始めましたが、売行きが思わしくなく、まもなくやめました。そして、こんど、洋品店を始めましたところ、家主は、果実店として貸すことを契約したのだから、契約違反のため解除するといってきました。このような場合はどうしたらよいのでしょうか。
家主は自己の建物を借家人に貸したかぎり、その建物に投下した資本を回収できればそれでよいのであって、例外的に自分自身がその借家をぜひ必要とするとかその他正当の理由がある場合、もしくは、賃料不払や家屋毀損ないし無断譲渡などによって、資本の回収が不可能になるおそれがあるときにだけ、建物(借家)の明渡しを求めることができる、というのが現行法のたてまえといえます。

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建物のある環境やその構造によって、ある程度その利用方法が決まってくることは当然でして、居住用に貸したのに、商売をし、店舗向きに改造されたり、いろいろ工事を施されたりしたのでは、借家の痛み方もちがうでしょうしうし、明渡してもらう際思いがけない造作の買取を請求されて、家主が不利益を被るでしょう。ですから、家主が居住用にのみ使用することという条件で借家契約を結ぶのには、一応合理的理由があるとみられます。
しかし、店舗として貸した以上、そこでは果実店だけを営むのを認め、荒物商だとか洋品店ないし飲食屋などを営んではいけない、というようなことに、合理的根拠があるでしょうか。借家人が果実を扱っても、洋品を売っても、少々の店内改装を伴うだけで、家屋の利用方法にはほとんど差異を生じますまい。ですから、果実店として貸す、もし違反すれば解除するというような約束がかわされていても、それに違反したからといって、解除することはできず、この特約は法的に意味をもたない、と考えられます。
むしろ、果実店では生活を十分に支えきれないため、心機一転して洋品店をはじめられた本問では、家主としては家賃の取立の基礎が固まるのだから、むしろ歓迎すべきである、ともいえましょう。実際にも、アイスキャンデー屋から牛乳店、ついで果実商、雑穀商などを経ていうふうに、転々と商売を変え、ついに生活の基礎を確立した例はいくらでもあり、そのさい、この商人が借家人である場合には、家主がケチをつけた、という例はほとんど聞きません。借家人は、家主の申入を無視されてさしつかえない、と信じます。特に家主が強欲で、スキあらは借家人を追い出し権利金をとりたい人であることが、客観的に明らかであるならば、なおさら、家主の言い分には理由がありません。
しかし他面、店舗として貸りたのであるから、どんな商売をしてもかまわない、とはいえません。はじめの約束とちがう商売をするについて、家主との開の信頼関係を破壊するような事態が生じたときは、例外的に、借家人は立ち退かなければならない羽目に陥るわけで す。やや具体的に考えてみましょう。
まず、家主が隣りの自己の家で洋品店を営んでいるのに、また洋品店を開かれたときは、この行為は家主の洋品店の価値を奪うことになり、解除の原因となります。家主は隣りに洋品店がないことによって、その経営にかかる洋品店の収益力 経済的価値を手中にしていたのですから、借家を貸すことがその利用権能の借家人への譲与だと考えたとしても、その譲与はこの収益力を保持しつつなされたものであり、したがって、借家人による洋品店開業は、この制約をふみこえた背信行為とみられるからです。
また、比較的静かな地域でめるのに、やかましい音をたてる製材所だとか織物工場に使用したり、家の中で養鶏業や養豚業を営み臭気が近所の迷惑になる、というような場合にも、解除できると思われます。営業は自由ですし、音や悪臭を出したからといって、自分の家ならば追い立てられず、せいぜい損害を賠償さえすればよいのですから、借家人としても、これと異なる取扱を受けるいわれはない、とも考えられましょう。しかし、家主としても、貸したについては過失があると攻撃され、近所の人達から損害賠償の請求を受けたり、うるさいから臭いからといって近所の他の借家人から家賃をまけさせられたりする危険が十分ありますから、投下資本の回収が不能ないし困難となることを理由に、解除できなければ不都合と思われます。
最後に、洋品店を開かれるさいに、店内を改装されたとして、もしその改装が無断増改築で信頼関係を破る程度に達していると認められるときは、解除されてもしかたないでしょう。
日活国際会館の一室の賃貸借契約において、「本事務室を国際実業株式会社の名称により貿易及び投資を行う事務室以外の目的に使用することはできない」という特約がなされた場合に、巨大ビル内の一室においては、特に賃借当時の現状の保持が強く要求される、とした判決がありますが、これはビルの特殊性によるもので、本問については、あてはまりません。
要するに、先ほどあげたような特殊事情のないかぎり、家主の言い分には理由がなく、無視してもよい考えられます。

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