一部類焼した借家の明渡請求

Aは建物所有者Bから、飲食店を開業する目的で建物を借り受け、一部を店舗とし、残りを居住部分として使用していました。ところがこの建物が隣家からの出火によって、一部類焼してしまいました。AはさっそくBに修繕するように申し入れましたがとりあってくれないばかりか、逆に、明渡しを求められました。どのようにしたらよいでしょうか。
Aの店は、場所柄やAの営業努力のおかげて固定客もつき安定した商売を営んでいましたから、この店をやめて明け渡すことはAの生活問題にかかわり、とてもできない相談です。Aは従来どおり使用したいと考えておりました。幸い全焼は免れましたので、屋根と壁の一部を修繕すれば元通りになります。Aはとりあえずテントを張り、ベニヤ板などを打ちつけるなどして自分の手で応急修理をし、雨露をしのぐ程度にした後、Bに修繕の請求をしました。これに対し、Bは、Aの営業が深夜まで続き、オートバイを乗り回す若者達が騒ぐなどして、周囲の人から騒音やその他の苦情がもち込まれておりましたので、かねてから全面的に明渡しをしてもらいたいと思っておりました。
そこでBは類焼という機会をとらえてそのことを持ち出したわけです。修繕費も多額であることもBの考えを強めました。そこでBはAの申出をはっきり拒否する一方、一切建物に手をつけてはいけない旨申し入れ、近所の大工などにも、Aの依頼で建物の修繕などをしないようにと申し入れました。
Aは、Bにも火災の責任がない以上、修繕をする義務があるといえるのかどうか疑問でしたし、もし義務があるにしてもBが応じない以上どうしたらよいか、また賃料も従来どおり支払わねばならないのか法律上の意見を求めるため友人の紹介で弁護士のもとを訪れました。

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類焼の場合でも、原則として修繕義務はあります。本件のように全焼ではなく一部焼失であり、少なくとも多少の不便を伴うものの居住に耐えうるるのであれば、屋根や壁をつくるなどして修繕をする義務があります。修理に多額の費用を要するとしても、新築建物の建築費用に比較すれば少額なことは明白でしょう。家主がどうしてもやらない時は、A自らが行ないその費用の償還請求をすればよいのです。
賃料の支払いは、相手方が受領しないことが予想されますが、その場合は供託し、現実にAが修繕費を大工などに支払った後、先の費用償還請求権と相殺すればよいでしょう。
弁護士の意見は以上のとおりでしたが、弁護士は念のため現場におもむき被災状況を見分しました。その結果、被災の状況はAが弁護士に話した程度よりもひどいことがわかりました。修繕費はAの見込みよりかなり上回りそうですし、それに、従来のAの賃料は近隣から比較しても低額であること、半年後に借家契約の期間が満了し、従来のAの使用状況などを総合的に判断すると、かりにBが相当の立退料の支払いを条件に明渡請求を裁判所に申し立てると「正当の理由」ありとされるかもしれません。そこでお互いの譲歩によって話合いをすることになりました。
Aは弁護士の勧めもあり、Bと話し合った結果、騒音防止と店舗ムードを一新するため店舗内の改装を行なうこと、賃料は従来どおりとして今後三年間据え置くこと、半年後の期限到来のときは更新料の支払いをすることなく、契約を更新することなどを条件に、修繕代金の半額を負担することにしました。
修繕代金は、幸いにして火元である隣家の主人が見舞金としてその一部を負担してくれましたので、Aの負担はそれほどではありませんでした。
借家契約のように人的なつながりにもとづく継続的関係は、日頃の双方の意思の疎通が大事であり、示談の成否もそうした面に左右されることが多いといえます。

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