上下水道

環境は人間を包含しない外的なものですが、その中には、それなくして人間の生命や健康の保持すらできないと考えられるものがあります。それが水です。人は食物なしでもかなり長期間生きながらえることができますが、水なしでは数日の生命を保持することすらできません。古来、人間が水を求めて移動したことは、人間生活と水とが不可分のものであることを示しています。由来、日本では水は天与の恩恵として最も潤沢に用いられました。高温多湿でしかもアジアモンスーン地帯にふくまれていることが、稲作という水田耕作の技術を発展せしめたのです。年間降水量は1,600mmで、世界平均740mmと比較してもまた欧米の諸都市に比べてもはるかに多いのに、近年は全国の都市において深刻な水不足に悩まされるにいたっています。多雨地帯にありながら水不足に悩まされるというのは皮肉なものです。

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水の絶対量は決して不足していないのに、人間の利用に供されるのはわずかに10%程度とされているのは、水の管理がきわめて困難な状態にあることを示しています。山岳国で平野部が少ないため河川が急流をなしているところでは、水の統制は困難です。ダムを造れば数年ならずして土砂で埋められ、貯水池を設けても降水量の季節的変動がはなはだしいため水量は著しく不安定というのでは、水の統制は困難です。それに慣行水利権というものがあります。都市化がすすみ、農地の潰廃の傾向はますます加速されているのに、水利権による用水量はいっこうに減少しないのです。加えて大都市では都心に取容できない人々が周辺部にあふれ、大規模団地が地元の事情におかまいなしに造成されることから、水不足にさらに拍車をかけているといっても過言ではありません。すべては計画もなく統制もされない混乱の結果です。自然的、地理的条件による困難もさることながら、人間社会の政治的条件がよくないために水不足にみまわれている点も少なくありません。
水は文化のバロメーターといわれるように、水需要は分明化、都市化の進度とともに上昇します。個人の消費量にはさほど変動はないにしても、冷暖房、水洗、洗車、洗浄と水の用途は多岐化していますが、これに工業用水まで加えればそれはますます増大の一途をたどります。
上水は人間の生存に欠くことのできないものであるだけに、その普及率は飛躍的上昇しました。しかしながら、同じ水でも、下水ともなればその普及率は著しく低いのです。汚水、排水、し尿といった人間ならびに人間生活の生理現象ともいうべきものの解決は、集団生活を可能ならしめる最低限の条件ともいえるのに、日本では、これほど捨てて省みられなかった分野はありません。
下水道の発達がおくれているだけに、日本の都市はさながら巨大な貯糞場にほかならないとされています。そこには様々な要因が関連し合っていることも否定できませんが、根本的には人間の生命や健康を尊重する人本主義の発達がみられなかった点に原因があるといえます。一人の人間の生命は地球より重しとする思想は、明治期の興業殖産という段階には存しませんでした。しかも、根幹は富国強兵です。衛生状態の改善に努力するよりは、大砲、軍艦の建造に重点がおかれました。労働者、庶民の生命が召集令状の送料1銭5厘にくらべられた当時においては、必然の結果だったのかもしれません。こうした風潮の中では、地下にあって衆人の目にうつらない下水の整備にいかに精力をついやしても、世間的に高い評価をかちうることはできません。明治以来の立身出世主義の世の中で、道路市長は現われても、下水市長は現われがたい理由です。国の政策の重点が下水道に全く存しない状況の下で、地方だけがいくら頑張っても下水道整備はおぼつかないというのが実情です。下水道は市町村の固有事務なのです。国の補助金でもなければ下水道の建設など考えも及ばないという状態なのに、道路の方は優先しても、下水についてはそうではなありませんでした。
こうした事情のほかに、当面の要求から上水道優位の考えが支配的であったので、下水は後まわしとなり、さらに排泄物を貴重な農業用肥料とすることが水洗化を妨げ、環境衛生施設が整備される前に細菌学、防疫学の発達をみたことも下水道の整備をますますおくらせるにいたった原因となりました。目先の派手な仕事には予算がふり向けられても、地道なものはとかく敬遠されがちなのは人情のつねともいえますが、地方政治の場合でもこのことに変わりはありません。下水道の普及率が低い点は、まさにこのことの反映です。

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