田園都市をめぐる思想

人類は都市における住宅問題と都市そのものの問題とに対する革命的な対策として、住宅新都市ををつくることを始めました。これは生産中心の資本主義体制に対して、人間の生活を中心にすえたユートピア思想の中から生まれたもので、最初は都市生活の矛盾が先鋭的にあらわれた先進国イギリスに起こった運動です。しかし、徐々にその思想的性格を弱めて、より行動的、技術的に都市問題に対する処方箋の一つにすりかえられてゆき、第2次大戦後の世界的な住宅難を背景に飛躍的な発展をとげたのです。住宅新都市の建設という手法は、都市における住宅問題と都市問題の両方に対するアプローチであり、既成の都市区域内での様々な対策とは異なるかなり自由で革新的な試みが可能な方法です。したがって、多くの新都市達設ではそれぞれの時代とか社会の住宅や都市に対する思想を直接反映した計画がなされていると考えられるので、住宅新都市の計画を検討することからそれを生み出した社会的背景をある程度知ることは可能です。そこでは、住生活や家族関係、近所づぎあいやプライバシー、空気や緑や光、販やかさや静かさ、安全性や利便性、屋内空間や戸外スペース、都市交通やレクリエーション等々に対するその時代の理想像が、多かれ少なかれ描き出されているのです。

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間取り

ウェルウィン・ガーデンシティは近代都市計画の父といわれるE・ハワードによって提案された田園都市の思想のもとに、1920年、レッチワースにつづく2番目の新都市として建設され、設計はL・ド・ソワッソンが行ないました。第2次大戦後の世界的なニュータウン建設の爆発的な風潮にさきがけ、イギリスにおいて19世紀の後半から20世紀初頭にかけて地道に積み上げてきた新都市、田園都市建設の試みの頂点に立つものといえます。ウェルウィンは、約700haの市街地を中心にその周辺に約250haの農耕地をもって計画されました。また、市街地には住宅地のほか工業用地・商業センターが計画され、しかも市街地の密度はきわめて低く、緑地・公園等のオープンスペースが非常に多くとられています。この町に建設される住宅は、すべて庭つきの独立住宅です。ウェルウィンには、ロンドンと結ぶ鉄道が通り、駅も計画されてはいますが、この町の居住者を朝晩ロンドンに送り迎えすることは意図されていませんでした。
これらの計画内容は、とりもなおさず、一つの自給自足的な社会の実現を理想とする田園都市思想を表現したものです。その根底には、産業側の都合によってなされるあまりに多くの人々の集中が都市において発生する諸悪の根源であり、産業、職業による一般居住地域からの分離、労働者の家庭生活の崩壊、住居の土からの絶縁、遠距離の通勤などはここから生じているとする考え方がみられます。つまり大都市の否定であり、より小規模の社会でしか人間の人間らしい生活の保証は保たれないという思想です。そして、こうした考え方は、新都市の土地は市民が共同管理すべきであるとの提案と結びつき、空想的社会主義思想の実現として世界に広まったのです。
しかし、このような農業まで抱き込んだ新都市の建設が、加速度的に進行する大都市の都市問題や住宅問題に対して実質的な効果をあらわすとは考えられず、実際に後につづく時代に与えた影響は、その思想よりも、むしろここで描き出され創り出された住宅地環境や住宅地の計画水準によるものが大きい。いわゆる田園郊外とよばれる住宅地の開発は、20世紀の初頭から第2次大戦までつづくのであり、その形態はいずれも田園都市理論によって開発された手法の影響を強く受けています。

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