近隣住区理論による宅地計画

大都市の否定からはじめられた田園都市は、むしろ大都市就業人口のための住宅地を郊外に建設する場合のパターンを提供するという皮肉な運命をたどったとはいうものの、現在までつづく住宅地計画理論の形成にはきわめて大きな役割を果たしたのである。そして、その後の住宅地計画に対する様々蓄積は、第2次大戦後、ふたたびイギリスにおいて労働党内閣の手による新都市法によって大きく結実するのです。ハロー・ニュータウンは、新都市法によって指定された15のニュータウンのうちの代表的なものであって、設計はF・ギバードによるものです。ここでは、2カ所の工場用地とタウンセンターを除く大部分の土地は住宅地であり、住宅地は大きく四つのグループに分かれてそれぞれ大きなグリーンゾーンで分離されていました。それぞれのグループには、その中央に中規模のセンターがあり、それはさらに3から4の小学校と小規模なサプセンターを待つ住宅群に分けられています。鉄道は町の北端を通っていますが、ロンドンからは約35km離れていて、そこへの通勤は考えられていません。人口は約8万人とされ、居住密度は都市全体で約30人/ha、住宅地についてみれば120人/ha程度です。住宅は依然として庭付きが主流を占めていますが、独立住宅は影をひそめ、一部に中高層アパートが混合されています。

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間取り

ここでは、他のニュータウンと同様に、20世紀の前半世紀にかけて築き上げてきた近隣住区理論がそのままきわめて模式的に空間化されているのです。小学校とサブセンターを中心にした人口約6,000人の住戸群は、地域社会を構成する基本的な単位集団として特殊な意味を与えられています。そして、近隣住区を最小単位とし、住宅地全体は生活額域の拡大に対応した明瞭な段階的な構成すなわち住区、地区、都市という構成を示しています。都市建設そのものは、田園都市の思想を基盤においてその矛盾を修正する立場に立っており、大都市への通勤都市の形を否定し、職、住をセットした大都市からの人口分散改革の一環をなしています。田園都市との大きな相違は、都市センターの計画と密度の上昇ですが、いずれも、田園都市が大都市の欠陥のみに目をむけてその田園性、自足性を追いすぎたことと都市の利点をも失ったことに対する反省から出ているのです。
ハローをはじめとするニュータウン群の計画は、第2次大戦後に深刻な住宅難をかかえて公共的住宅供給の比重をこれまでになく高めた世界各国に大きな影響を与え、一部からあまりに形式的であるとの批判は受けながらも、住宅地計画の教科書として利用されたのです。大阪府による日本最初のニュータウンも、全くハローの計画手法によっており、建設・計画中の多くのニュータウンもすべてイギリスのニュータウンの強い影響下にありました。しかし、これらの影響もまた、田園都市の場合と同じく、計画の手法や水準の面でのものであって、新都市の自主性や母都市への通勤否定の思想は、多くの大都市にとって非現実的な方法として受け入れられていません。1960年、イギリスは、15年間のニュータウン建設の成果と州議会反省のうえにたって画期的な一つのプロジェクトを発表しました。それはロンドンによるフック計画で、LCC内に設けられたH・ベネットのひきいる計画チームがマスタープランの作成を行なったものです。
この計画は、近隣住区、職、住併存、自足性など、イギリス新都市の伝統的思想を受けつぎながらも、自動車時代への適応、センター規模の拡大と集中化、住宅地の高密化と変化の多様性、新都市外への通勤の配慮等のかなり思いきった内容をふくむものです。そのためにこの計画は実現が断念され、単なるプロジェクトに終わったにもかかわらず、世界の都市計画界にセンセーショナルを起こし、新都市建設の歴史に一つの新しい要素を加えました。フックのタウンセンターは、長さ1.2km、幅400mの多層構造という強大なものであり、新都市人口10万人の2/3はここから800m以内の徒歩圏に居住してインナータウンを形成するなど、ここでは都市らしさが追求されています。また、1世帯1.5台の自家用車保有率を前提とする自動車道路綱と駐車場はきわめて壮大なものであり、同時に、歩行者のための通路網がセンターから住宅地末端まで徹底的に計画されていました。住宅地はその位置に応じて、250人/ha、175人/ha、100人/haの3種類の密度で構成され、住宅も庭つきとアパートが組み合わされ、また低中高層建物の組合せで計画されました。

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