住宅生産の性格と技術

生産技術は生産対象により大きく規定されます。そして住宅生産の場合、その生産対象はまた住む人々の経済的条件にも大きく支配されます。つまり、生産対象としてみた住宅の最大の特色はそれが本質的に消費財であり、個人の家計に密接に関わりあっているということであって、少なくとも最近まではそこには生産手段、設備投資の場合におけるような意味での境界といったものは存在しえなかったのです。その評価はあくまでも個人の家計の中での相対的な高い、安い、質素、贅沢の域を出ず、したがって、その供給が社会問題となるほどのことでもないかぎりその価格が問題とされることもなかったのです。

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一方これを升としてとらえれば、その性格上いつの日にも相応の需要、したがって工事量があったわけですが、それは個別的であり、またその材料、生産方式からしてもかなり第一次産業に近いものでしかありえませんでした。すなわち、材料の採取から加工、組立まで住宅生産は殆ど手作業で労働集約的に営まれ、労働力の低廉さと相侯ってそこにば資本投下によるメリットも期待できず、そのためそれは国民総生産の中ではかなりの比重をしめ、かつかなりの地域的集中をみせながらも企業化され得なかったものと思われます。したがって産業的にも国家的要請といったものもなく、長い日本の歴史でも、各時代とも産業的にそれは非常に大きな分野であるにもかかわらず、今でいう住宅産業が国家政策的な意味で問題になったのはようやく最近のことにすぎません。
住宅生産ないしは住宅産業はその生産対象が本質的にもつ消費財的性格から、またその資源、技術的性格ないしは産業的性格からも、そしてこれまでそれらのおかれた社会的条件からも、本質的な意味で国家的ないしは国民経済的レペルで政策的に考えられたことはこれまでなかったということなのです。これがすなわちこれまでの日本の住宅生産、住宅生産技術の成立基盤でした。ところが、第二次大戦を境として、戦災による住宅の大量焼失と戦争による滅耗補充の停滞、戦後の家族の細分化、人口の都市集中、生活水準一般の向上、政府住宅政策の拡充といった事情によって、実質的に大量のかつより集約的な住宅需要がかなり急激に生じた一方、供給側では産業構造変化、経済発展による建築労務の不足、自然材料の枯渇と工業生産材料の流入、工業生産部品の流入などの事態が生じ生産の対象、その生産体制に大きな変動が生じるに至り、したがって生産技術の成立基盤にもまた大きな変化が生しることになりました。これからは様々な意味で住宅はより多く工業生産的な方法で生産されるであろうし、そのためにその生産物自体だけでなく生産過程そのものがより大きな社会的意味、影響力をもつ存在となるはずです。
産業全般のなかで建築生産は最も自然発生的に放置さたものの一つですが、そのなかでも住宅は最たる物いうことができます。最近まての住宅生産技術の担い手は大工なり、左官であったといえます。この場合、設計技術と施工技術は殆ど同一の人に帰属しています。つまり棟梁は施主と間取り、多少の仕上の程度などについて打ち合わせを行なって、あとはかなり棟梁の考え方で工事がすすむというのがふつうでした。こうした生産技術者である棟梁をはじめとする各職の再生産、養成、技術の継承は、若干の訓練所などをのぞいてはすべて企業内、産業内に委ねられ、放置されてきました。徒弟制度、年季奉公の制度がそれになります。
このような状況を住宅生産技術の担い手としての、また一つの職業階層としての職人の環境の面からみると、まずその特徴的な条件は、発展する建築学との交流の事実上の欠除を含む技術の発展の停滞であり、その業務の対象としての住宅そのものの停潜であり、人間関係に残る封建性であり、一品受注生産であり、生産過程の手工性であり、その扱う材料の自然採取性、加工度の低さであったといえます。
このような条件のもとでは、その担い手の側からする技術の発展は殆ど不可能で、各自は技能をみがき、名人芸を競うことで満足するほかなかったのも無理からぬところです。しかし、いまやこれら住宅生産の諸条件の変化とともに住宅生産技術、技術の担い手も大きく変わろうとしています。とりわけ、住宅生産の工業化、建物全体のプレハブ化と在来工法への工業生産部品の流入の二方向から、この流れは今やことの善し悪しは別として主要な住宅生産の担い手を棟梁からメーカーヘ、零細企業から大企業ヘ、そしてその生産技術の担い手を職人から技術者ヘと移行させつつあります。その傾向は、かなり進行したとしても、特に個々の一戸建住宅を建てる現場などでは、やはり数人の技能者を中心としたチームの形態を残すことではあるはずですが、それは町の小売商が、かっては多かれ少なかれ自ら売る商品を一部にせよ自ら加工し、また少なくとも自らの目で吟味し、品質を確認して仕入れ、それらの商品に対して十分の知識をもっていたのに対して、今日では単なるメーカーの取次や流通組織の未端的存在に近い店が増えているのに似た変化がおこりつつあるとみるべきです。

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