住宅生産の歴史と将来

住居の歴史は大まかにいって穴居前、横穴、堅穴と簡単な架構による住居という過程を辿るとされています。しかし、今日的技術を考えるとすれば、例えば地面にスコップ程度の道具でひこみをつくるとか、立木の枝を払って丸太をつくり、これをなにかで結び合わせる。萱で屋根を葺く、といった程度のこと自体は問題たりえないことは明らかです。少なくとも比較的近年までは、住宅の生産は明らかに農業技術よりはるかに技術的要素が少なかったとみるべきです。というのは農業生産では少なくとも気象、生物、水利といった各方面の知識を総合し、6カ月から1年先の見通しに立って諸般の手順をふんでゆかなげればならないことを思えば、その段階での住居の生産、建設はその材料の得難さその他からの労働消費的な面はともかく、技術的にははるかに日常的であったに違いありません。こうした住宅生産の分野に今日的に考えて技術らしい技術が登場するのは、日本では戦後の集合住宅、ことに近年の高層集合住宅や工業生産住宅の時代に入ってからであるとみるべきです。そして、なかでも工業化住宅に入ってはじめて住宅生産技術は永年の二重構造的停滞から脱却し、建築生産技術全般の中でもトップ技術の座につこうとしているのです。

スポンサード リンク
間取り

丸太を繩でしばるような段階からはじまって、木造の柱、梁、小屋組によって構造を形成し、荷重を支え、土で壁を造り、萱、藁などのかほん科系の草または瓦で屋根をふくという日本の木造建築の技術は、その源を原始時代にまでさかのぼりますが、それは例えば屋根がアルミニウムになるとか、窓にガラスが用いられるといった多少の未節の変化はあったとしても、その大筋は殆ど変らず、日本固有の伝統的技術であるといえます。日本の住宅は一部にコンクリート造のものが現れたことを除いては、つい最近までその木造の骨組を中心にそれに各時代での現代的な技術、材料をつけ加えながら進んできました。そしてそのことは、その材料、気候、生活様式と水準といった各種の条件によって裏打ちされてきたのですが、気侯を除いてこれらすべての条件は今や大幅に変ろうとしています。
木造の柱、梁による構造による方式、和風の技術の流れの中に、明治開国とともにレンガや石を積んでつくる重厚な壁を中心に構成される洋風、全く異質の技術の体系が突然に流れ込みました。そして、それらは当初主に官庁、商工業関係の建物に広く普及していきましたが、一般の住宅には殆ど用いられませんでした。
輸入されたものは一部の木造は別として当初は梁柱とは無縁のレンガ造の技術であり、つづいてはそのかたちを自由に成型できる鉄筋コンクリート造の技術でした。前者は日本の木造と同じく自然発生的なもので、地震の多い日本ではその構造に多少の理論づけが行なわれもしましたが、まもなく主流の座は鉄骨、鉄筋コンクリート造に移行しました。いずれもその材料、構造の考え方、組立の詳細、それによる建築の様式などが全く木造とは異質なものでした。ことに後者のコンクリートは本質的には耐火的で、現場で自由に成型できることを特色とし、様式的にも大きな意味を持ち、さらに日本ではそれで住、梁をつくる構造方式が特に発展し、その耐震性、耐火性により、地震の多い日本での大規模、ことに中高層建築の主流を占めるに至りました。これらのうち、住宅に広く用いられるようになったのは,いうまでもなく鉄筋コンクリート造ですが、その使用の本格化は第二次大戦後になってです。木造、組積造、コンクリート造は本質的に各々異質の構造方式であり、異なった技術体系を持つものではありますが、後二者が輸入された時点では三者とも構造学的な理論づげは殆どできていませんでした。そして、その後になってこれらに科学的な理論の裏付けが行なわれ、また、輸入の二者、ことにコンクリート造は広く普及してゆくのですが、その理論、技術の形成過程において、それは在来の建築技術の担い手である大工とは殆ど無縁になり、よって大工は新しく学問を授って登場した技術者に従属するように勧められていきました。
つまり当時としての在来的な建築技術である木造建築の技術の延長のうえにではなく、それとは全く別個のところにコンクリート、鉄骨などの技術が成立し発展していきました。それは企業面でも、企業の発生史的にはともかく、実質上それらを主軸とする建物の普及と機を同じくして発展してきた近代的な大、中のゼネラルコントラクタがかつての建築生産の主要な担い手であった大工を自らの手足として従属させながら成長してきたことは、日本の近代の建築生産の歴史の特色の一つでもあります。それまでの支配的な建築生産技術の担い手である大工と技術者との間に生じている越えがたい断層は単に、各々の扱う材料や対象の規模の故のみに帰するわけにはいきません。
一般に生産、企業活動というものは関連する新しい材料、技術理論の出現やそれらの発展などを、かなり異質のものまでをもそれまでの基盤に加えてとり入れながらすすんでゆくのが通常です。また日本の二重構造の経済の中にあっても技術者自体は企業規模にさほど支配されないのが一般ですが、建築では大企業、鉄骨、鉄筋コンクリート中心の場合と、小企業、町場の大工の場合とではすべてが全く違い、両者の間に交流、共通の基盤は殆ど存在しないのです。そして、もちろん大企業の施工する大規模な鉄骨、鉄筋コンクリート造の場合といえども、多数の大工が活躍するのですが、それはその元請であるゼネラルコントラクタの技術者のもとで単能的にその技能と労働を提供しているにすぎない場合が多いのです。こうした事象は様々な意味で日本の社会構造、経済構造と結びついた問題として今後の解明を要するものです。

間取り
住宅生産技術の体系/ 居住性の技術/ 材料生産の技術/ 住宅生産技術/ 住宅生産の性格と技術/ 建築技術一般での住宅生産技術/ 住宅生産の歴史と将来/ 住宅のプレハブ化と工業化/ 住宅生産工業化/ 工業化工法の発展/ 宅造技術と住宅生産技術/ キュービックシステムの普及/ 設計・監理費/ 建築材料と施工の機械化/ 建築の部品化と工業化/ 生産性の向上と建築費の変化/ 住宅の種類と設備工事/ 材料費の比率と変動/ 賃金の上昇と作業内容の変化/ 建築生産の近代化/ 住宅建設の実績とネック/ 住宅工業化の歴史/ 住宅生産工業化の方向/ プレハブ住宅の概念/ プレハブ住宅の種類/ 工業化とプレハブリケーション/ 住宅問題とプレハブ住宅/ プレハブ住宅企業化/ PC工法による企業化の発展/ プレハブの範囲と区分/ プレハブ住宅の生産と販売/ 家族構成と生活空間/ 住居空間/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサード リンク

プライバシーポリシー