生産性の向上と建築費の変化

建築工事における生産性の向上とはいかなる意味を持つのでしょうか。一定量の仕事に対して使用労務者数が減少すれば一般には作業者の生産性が向上したといわれますが、元請にとっては人工数の減少がコストの低減につながらなければ無意味です。とすると職員1人当りの工事消化高が増加し、完成工事金額が高騰し、資本の回転率が上昇したということになります。作業方法をいかに合理化したかは建築工事の場合、主として設計の問題に属します。設計段階で工法が想定されるということです。従来の造り付けの木製間仕切りをやめて、設計上工場生産のパネルを取り付けるとき、これを組立部品の使用とみるか否かということになります。建築のある部分の工事が、部品化されて工場生産に移され、現場作業としてはその組立作業のみが残されたとすれば、初回は生産性の向上として扱われても、次回からその部品は材料費として計上されます。工事費のうちで材料費として予算に組まれると、もはや現場における合理化の余地は極端に少なくなります。生産性をどのようにとらえるかによって建築費を引き下げたかどうかを判断することになります。

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建築生産において従来からの慣習的工法を改めて、工業化工法の採用や生産性の向上を考える目的は、生産コストを引き下げて内容を充実するか、公費の場合は同一予算内で建設戸数を多くしようとするためです。このような新技術の開発のために要する試験研究費はどのようにして回収されるのでしょうか。一般にはある建材が施工されるためには図面、仕様書が作製され、従来一般に使用されていた建設機械や工法にょって積算され、工事予算が算出されます。新工法で安くできれば企業努力として認められ、高くなったときは危険負担として請負人の損失となります。しかし、一般にに新工法が一度成功すると、次からはその新工法を想定して積算され、施工しても開発利潤が得られないばかりか、投入費用の回収すら困難になることが多く、新しい工法に特許をとると、特許に制限されてひも付きになり、公正な競争が阻害されるという理由でその新工法は採用されません。合理化や工業化を進めるにあたっては研究投資が利潤に結び付くか回収できる方法を考えておかなければなりません。建築費を引き下げるために他人の努力に期待するようでは成果はあがりません。
建設産業の工業化が進まず、他産業に比べて立ち遅れが著しいといわれます。その主な原因は数々の努力も量的にまとまったアパート、団地などでなければ適用できないとか、単一の建物では超高層建物のように巨大な数量をもたない点で工業化工法が有利でないとされます。また注文生産であることにおいて造船業と比較され、その生産条件で異なる点は造船業が固定的な工場生産であるのに対し、建設生産は屋外的、移動的、分散的であるといわれます。したがって、予知することの困難な自然現象の影響を受けることがきわめて大きく、建設場所は一定しておらず、期間的にも永続性がなく、職人は定着性を欠き移動が激しいという論があります。
しかし、このように移動的、分散的なことは、建築物が土地に固着している限り宿命的な条件です。この前提条件のもとでは建築生産の工業化は、定置的な生産設備の採用ではなく、生産設備を移動式にすることによって現場作業を工業化することができます。建設機械の能力も造船用機械設備のそれと大差ありません。しかも定置式でないため工程の進行に応じて最も適合した種類と規模の建設械を利用できる利点があります。資材を輪送する問題も、作業者が通勤する問題も、場所は一定期間移勤しないために工業化を妨げる要素ではありません。

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