建築生産の近代化

建築が前近代性を多分に残した生産体制によって生産されているということが一般にいわれています。そのために、技術革新や生産性の向上が十分に図れず、価格の高騰や質の低下を招いているというのが常識化された理解です。住宅の生産については特にその問題が大きく、建築の生産構造は、大きく二分極化しており、巨大な建設総合請負企業による高度の技術を駆使した利潤も大きい産業建築と、零細な技能労働者を中心にする不安定な企業によって果たされる一般的な住宅建設とがその極点です。

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巨大な建築の巨大な資本による生産についても、様々な意味での合理化、近代化、あるいは工業化ということが図られねばならず、現に急速に進行していると見られますが、住宅建設の全般についてみると、それは今後の問題でもあります。もちろん、住宅の工業的生産という考え方の発生は決して最近のものではなく、第一次大戦直後の時代に遡ることができます。1936年刊行の図書には当時すでに200余種のプレハブリケーションが考案されていたとなっています。しかし、そのような着想や考案が現実の産業社会に根着いて、良質な庶民住宅が工業的な生産によって、大量に安価に供給されるようになるまでには、長い時間と多大な努力と、そして社会全体の大きな発展が必要でり、まだまだ継続的に必要とされます。
日本で、住宅の工業的生産が曲がりなりにも企業的に考えられ、かつ現実の生産が行なわれたのは、第二次大戦末期からその直後の時期にかけてでした。しかしこの時期の努力は、材料や資金やあるいは需要の条件がまだ十分に工業的生産を成長させる段階になく、頓挫してしまいました。
やがて、日本の経済が債権、復興の時期を過ぎて、急速な成長過程に入ると、様々な条件が複合して、建築生産工業化の必要性と可能性とをともに急速に強めることになりました。新しい材料の生産、需要の増大特に大規模建築や、住宅の計画的大量供給の増大、他産業における近代化の進行などが可能性を増大させた要因であり、労働力の切迫、天然材料の枯渇、建築や住宅そのものの近代化、質向上の要求などが必要性を強めた要因として数えられます。
建築の需要は、経済の成長、社会の発展に伴って、とめどなく増大し発展します。それに対して、従来の建築生産の基本的特徴は、一品、注文、現場生産であって、大量、見込、工場生産ではないために、技術進歩の成果を十分に活用して生産性の急速な向上を図りにくく、他の財物の生産一ついては、計画的、連続的、安定的、繰返生産によって資金、経営、労働、技術、設備等生産のすべての要素について着実な積上的進歩の途が開かれています。
一品、注文、現場生産の不連続性、不安定性に加えて、極めて複雑な累積、組立作業であって多種多様の技能と、大量な労働を必要とする建築生産の特性が建築生産体制の多様複雑性を必要とし、それがある面において前近代性を温存しているのですが、その結果、建築費の高騰、質の低下を招く事態になり、建築生産の近代化が強調されるようになったといえます。しかし、建築生産の近代化は、単に建築費の値上がりや質の低下というマイナスに対処するための防衛的手段としてだけ意義を持つものではありません。むしろ、日進月歩の経済と社会の変容に流動的に対応できる新しい建築、さらに広く生活と生産のための空間を創出するのに、一棟一棟の建物を建ててきた在来の生産手法からでは生れない新しい技術と体制を持った、工業的な生産手法が要請されているのだと考えるべきです。したがって、建築生産の近代化にしても住宅生産の工業化にしても、現場作業を機械化するとか工場作業に移行するとかいう局部的なことだけで考えるのではなしに、建築や住宅の需要発生の機構や供給のメカニズムまでを含めて、工業的生産を基調とする社会の全体に相応しいものに変革することとして考えることが必要になります。
近代化の瞬間はもちろん技術の進歩革新ですが、建築生産の近代化においては、まず技術の進歩革新が起り得るような、また起った場合にスムーズに現実の生産に発展的に採り入れられていくような体制の変革が必要です。それには建築生産が、安定性あり連続性のある企業体によって営まれるようにならねばなりません。
日本の建築生産は、巨大な企業と零細な企業の施工者等とに二分極化された形で営まれています。大型化する日本の経済規模、産業構造に見合った形での生産空間、流通空間の建築的生産については巨大企業による生産が対応し、まだまだ乏しい個々の家計に見合う住宅の建築が零細な施工者によって営まれています。土産空間、流通空問は世界の最高水準に達しようとしているのに、生活空間は中進国とさえいえるかどうかという状態にあります。この断絶をどう埋めつなげるか、それに有効に働く近代化、工業化を考えることが建築、住宅の生産に上課された問題です。

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