伝統の工業化

西欧パターンの住居形式の吸収が、ある意味で定型化へ向かう段階になった今日では、それらの現象の中で伝統的様式がいかなる形で存在しているかを考えるのに当を得た時期と思われます。少なくとも住居の意識と形態、住宅生産の大勢が西欧的基準に向けられ、いわば伝統否定の側で働き続けた中で具体化される伝統的様式は、意外にも新たな工業化の様相の中で現われてきました。端的な一例として、工業化への先瑞であるプレハブ住宅を取りあげて見ると、そのほとんどが構法として真壁収まりであること、庇が深いこと、そしてアルミサッシまでが引違い方式であること等が認められます。畳の部屋の存在が、これらに関係しているという見方もありますが、むしろ一般的見解としては、見慣れ、使い慣れた習性に対する精神的安定と考えた方がよいようです。真壁か大壁かの問題も,今日の性能的な建材や貼り廻らす仕上材等から考えて大壁指向であるにもかかわらず、真壁的な構法への傾向が強いのは、柱梁による架構に伝統的なよりどころを見いだしているからです。プレハブ住宅に限らず、一般のRC造でもこの傾向は根強く、壁式構造よりも、むしろ柱梁によるラーメン構造が木造技術の置き換えという意味で受け入れられやすい体質を持っています。

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アルミサッシにしても、気密性、経済性から片引き方式の優秀性があるにもかかわらず、引違い方式に拘泥しているのは、やはり特筆に値する現象です。引違いの概念には、建具は移動自由、さらには取りはずし可能という意識、いわば住居内外の融合が意図されています。個室には西欧化を代表する開き扉を設けつつ、外部建具は引違いという現象は結局伝統的様式に帰結する問題です。
これらの例を見ても、伝統的様式の根源は、インテリアを持たない、いわば架構のみの内外一体の空間形態から発しています。狭小土地でも箱庭のような小さな庭を作り、アパートなら幅90cm程のバルコニーを作り、これらと内部をつなげようとする執着がそれを如実に物語っています。また一方で建築材料や装備の生産が高度化するに伴って、様々な形態、模様、質感、色彩等の要求にも十二分に応えうるため、伝統的な様式がこの部分でも大いに現われています。土壁を模した吹付けの壁材、和風の肌ざわりの合成パネル、模様や材質に凝ったプリントの壁紙、日本調の型ガラス、それに天然材料の加工品としての集成材、合板、スライスした木目を張った壁紙、砕石や石粉を使ったプレコン。住居備品としての照明器具、敷物、カーテン、さらにドアの把手に至るまで日本的なパターンで登場しています。そして年々、精巧さと装飾性を強める工業化された伝統的様式のイミテーションは、中間的住宅を中心に普及されています。ここでは設計の操作は、これらの材料の選択と組合せに終始するといっても過言ではありません。こういう現状と、ますます生産体系の高度化によるこの傾向の助長は、認めねばならない確たる現象です。とはいえ、私達の生活の演出に当たる住空間の作られ方が、この手法でのみ果たして満足が得られるかどうかです。すでに高度に工業化に成功し、しかもこの工業化にかなり耐えうる体質をもっていると思われるアメリカ人の場合でも、近年こういった現象に抵抗を試みるいくつかの住空間の演出が現われています。それらの表現の中には、古い時代の道具や装飾や形態の原形か、またはその部分を住空間に持ち込んだり、工業化に抵抗する形態を表現したり、またある部分を手工芸で徹底させたりしています。それらの造形的な表現は、かなり個別的で幅は拡がっていますが、その共通点として考えられることは、なにか人間の住空間の意味性を探そうとしているようです。もちろん、彼らが深し出す問題とその表現自身を生活の伝統と社会的背景の異なる私達に移入することは意味はありませんが、こういった現象を見て考えさせられるのは、これからの住空間への挑戦です。
中間的な伝統的様式の工業化体制が徹底されればされるほど、その中で人間がさらに住宅に一つの欲求を感じ、なにかを求めようとすると、それは恐らくより強い心理的な刺激を投げかける空間ではないでしょうか。性能が高まり、設備を含めた装備がより完全さを示すような高性能住宅の中で、私達の生活をもう一つの地点から呼び覚ましてくれるものは抽象性をもった空間です。

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