商品住宅の設計

数多くもしくは繰り返し同じタイプの建設される建築のなかには、特定の建築主が自ら使用するものもありますが、そうでない建築が多数あります。賃貸や分譲の形で供給される住宅はその最も良い例です。建築主が自ら住むためにではなく、不特定の需要者の利用を目的とするこのような住宅を、個別の建築主のための注文住宅と区別して、商品住宅とよぶことができます。商品住宅の設計の条件は,一般の建築の場合のように建築主からすべて与えられるのではなく、設計者の側が不特定の需要者の要求をつかんで設定しなければなりません。家族構成、住居費負担能力、生活様式などの基礎的条件の想定から出発して、住戸の規模、構造、室の種類と配置、設備など、設計の前提となる条件は設計者の側で設定します。そして商品住宅設計は個々の家族の条件に合わせるのではなく、居住者の総体に適合する標準設計の形で与えることになります。

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間取り

商品住宅は、年間建設総戸数のうちでどれぐらいの割合をしめるのでしょうか。それを直接示す統計はないので推量するほかはありませんが、住宅の利用関係別にみて、貸家や給与住宅はすべて商品住宅であると考えられます。これが総住宅建設戸数の約半数にあたります。残りの半数が持家で、またその半数程度は建売、分譲住宅とみられるので、結局総戸数の7割から8割が商品住宅、残りの2割から3割が個人の注文住宅と推定されます。注文住宅の場合には、個別に設計が行なわれますが、そのうちかなりの部分は建築家による実質的な設計ではなく、建築基準法に定められた確認申請の手続きを満たすに必要な書類として、最低限度の図面が建築士事務所によって作成されるに過ぎません。建築家の手になる場合でも、設計密度は実に様々です。
住宅設計は建築のなかでも難しいタイプとされており、建築家協会の設計料率においても、記念建造物や社寺等についで高い料率が規定されています。設計者にとっては、住宅は設計が難しいうえ、建築主との折衝に手間がかかり、しかも工費が安いから設計料が少ないという割の悪い仕事です。ごく少数の住宅建築家を除いては、住宅はあまり歓迎されません。一方で建築主にしてみると、乏しい予算のなかから1割の設計料を支払うのはなんとしてもつらいく、規模が小さく、予算単位も低い自分の住宅の設計に、それだけの設計料を払う値打ちがないと考えています。そして実際には設計サービスと設計料との間に低い水準での均衡関係が成り立っています。つまり、設計料は少額しか払われない代わり、設計、監理サービスにもなんらかの省略が行なわれます。在来の木造技術を利用するかぎり、かなり簡略な設計で用が足りることが、こういうやり方を許しています。この場合、注文住宅の設計でありながら、本来それが持つべき個別サービスの性格は著しく後退しており、設計は商品化されてしまっています。本格的な設計は恵まれた条件にある邸宅について行なわれているに過ぎず、その数は全体からしてみるとごく限られています。これは日本に特有の事情ではなく、欧米諸国においても、建築家の設計による個人住宅はおそらく、数%ないし十数%程度を出ないはずです。
商品住宅の標準設計は居住者の側にも設計社の側にも利益をもたらしました。居住者は低い費用で設計の恩恵を受けます。設計者は設計が繰り返し利用されることによって設計料収入を増やし、設計に十分な労力が注げます。標準設計は庶民住宅の設計方法論として、きわめてすぐれた性質を持っているのです。

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