標準設計と住生活

特定の居住者集団を対象とする社宅や民間分譲住宅における標準設計はともかくとして、不特定の居住者を対象とする公的住宅においては、型計画にもとづく標準設計住宅が様々な側面で居住者の住生活との矛盾を露呈してきました。居住者の家族構成、家族人数に対応して設けられた平面型が、実際にはその想定された居住者に対応していないという問題があります。2DKのプランをとって、その平面と居住者のアンバランスから起こる住生活上の矛盾を具体的にみることにすると、まず、夫婦だけ、あるいは夫婦と幼児の家族であれば、DKを食事室、それにつづく6畳を居間、そしてもう一つの6畳を寝室にあてる住み方が可能となり、この段階では平面は予想された機能を発揮しているといえます。しかし、この幼児が成長して学齢期に達するようになると、教育熱心の親たちは、彼らが今まで寝室として使っていた部屋を子供の勉強室として与えることに躊躇しません。夫婦の寝室はかつての居問へと移ります。その場合、DKが食後の団らんに耐えるだけのスペースがあればよいのですが、そうでなげれば夫婦の寝室と団らんとの間に様々な軋轢、団らんの時間と就寝時間との交錯、居間の調度と就寝用具の片付けにともなう混乱等が生じてきます。さらに2人目の子供が生まれると、居間兼夫婦寝室は乳児の寝室ともなり、居間生活との矛盾は次第に大きくなります。その結果、団らんはDKの大きさや使い勝手のいかんに関係なくそこで行なわれざるをえなくなります。そして2番目の子供が成長し、しかも2人の子供が異性であると、夫婦、2人の子供に3室の寝室を与えることはできなくなります。この場合は、夫婦寝室の分解による解決以外に適当な方法がみつかりません。

スポンサード リンク
間取り

極端な例ではありますが、不良住宅地区の改良住宅などにおいては、息子や娘が結婚しても独立するだけの経済的なゆとりがないこと、あるいは職業や身分による移住の困難さ等の理由によって世帯分離がさまたげられ、2DKや2Kのプランに2世帯、3世帯がそれぞれの部屋に分かれて住むといったことまで起こっています。一方でこれとは反対に、最近高家賃で有名な公団市街地住宅などでは、3DKや3LKにたった1人で住むというケースが発生しています。これなどは、世帯用住宅である限り形式的には単身者は入居できない建前ではあるものの、入居手続上はそのような条件を形式的にみたしているに過ぎません。ホステスやマダムのねぐら、著述業の書斎、自由業の事務所、応接室あるいは郊外に自宅をもつ人の第2住宅等々といった住み方がそこにはみられます。2Kや2DKにおける過密と一部の3DKや3LKにみられる過疎現象はまさに現在の型計画、標準設計の基本的な矛盾を象徴しているともいえます。
生活の発展にともなう住生活の変化に対して、標準化された住宅が枠をはめているようなところがあります。最近でこそ、若干のL型プランがみられるようにはなりましたが、型計画の主流が食寝分離、就寝分離を軸とするDK型であることには変わりありません。居住者の側では、AV機器の出現、余暇の意識、民主的な人間関係などを基盤として、家庭団らんを中核とする生活が芽生えてきました。みんなの集まれる居間やその裏返しとして個々の家族の個室への要求が高まってきました。
よくみられることですが、2DKや3DKのプランでは、DKとそれにつづく部星の間仕切りをとり払って、LKのかたちにして使っています。分譲アパートのように改造の自由な場合には、ユニット全体をワンルームにすることまで行なわれています。これらの現象は、もちろん、現在様々なかたちで売りこまれている数々の耐久消費財の過剰な持込みによってもたらされたという側面もありますが、その基盤には家庭生活の本質ともいうべき家族そろっての団らんを積極的に確立し、その裏側としての個性の確立を図りたいとする前向きの要求があることを見逃してはなりません。こういう要求は現在団らんの発達を阻害している条件、長時間労働、夫婦の社会生活の体験、親子問の世代的ズレなどからの支配によって、次第に顕在化してくるものと思われます。
住生活の変化に対じて、型計画、標準設計が柔軟に対応できない矛盾は、住居管理制度の欠陥にも原因があります。現行の住居管理は単なる入居、移転、家賃収納、修理、保全等の住宅の建築物的側面に限定されています。本当の住居管理とは、当初意図された居住方式がどのような住み方として実現しているか、そこでの新しい矛盾はどのようなかたちとなってあらわれているか、その空間的解決はどうなるかといったことを絶えずしかも制度的にコントロールするという内容を含むはずです。現在はそれが行なわれておらず、したがって設計にフィードバックされていかないところに型計画、標準設計の硬直化をもたらす大きな原因があります。

間取り
敷地と設計/ 住宅と配置/ 配置計画と庭/ 敷地の隣地との関係/ 狭小敷地/ 自動車と住宅/ 住まいのプランニング/ 住宅建設の費用配分/ 工法と構造/ 設計の個性化と標準化/ 独立性と融通性/ 住宅の寿命/ 住宅設計/ 詳細の設計/ 設備計画/ インテリアと室内設計/ インテリア計画/ 伝統の工業化/ 一般設計と標準設計/ 商品住宅の設計/ 標準設計での型設計/ 住宅の型計画/ 型計画基準案の作成/ 建築での標準化の特質/ 建築標準化の体系/ 量産住宅の発展/ 標準設計と住生活/ 標準設計の生産面での意義/ 住宅の寸法調整/ 住宅の標準設計/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサード リンク

プライバシーポリシー