住宅の標準設計

かつての庶民住宅の大部分は大工棟梁の手によって建てられました。都市住宅の7割から8割は借家であり、家主の経営的条件と需要者の経済的負担力との上に、大工棟梁のもつ木造建築技術のシステムを利用して建築されてきました。持家にしても、不動産としての価値が重んじられたため、家族の住み方に適合させるよりも、売買のしやすさに対する配慮の方が強く働きました。庶民住宅は自然に類型化され、標準化されていきました。標準化の基礎をなしていたのは設計ではなく、庶民住宅の伝統であり、大工棟梁に体化された木造建築の技術のシステムであったといえます。庶民住宅の計画を科学的基礎のうえにすえ、近代的な材料と構造を用いて建設するための手段となったのは標準設計でした。近代的な設計は伝統的な木造建築技術のシステムを毀すとともに、科学的な原理のもとに新しい建築技術を再編成し、標準設計は設計の庶民住宅への適用を可能ならしめたのです。大工まかせの住宅から、設計された住宅に引き上げた標準設計の功績は著しく、それは住宅生産の歴史的な発展の一段階を画するものでした。そしていま住宅生産の一層の発展によって、このような形の標準設計はその歴史的使命を終え、新たな段階に突入しつつあるかにみえるのです。

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間取り

住宅生産に対する現代の要請は、生活空間の全体系のなかに正しく位置づけられた便利で快適な小空間を豊かに供給することです。これを具体的な実践目標の形に直せば、住宅の品質向上、多様性の確保、コストダウン、大量供給などとなります。そして、その実現には住宅生産の工業化以外になく、典型的には、部品、部材、スペースユニットの量産化とそれらの組立ての形態をとることは、ほぽ共通して認められています。都品、部材、スペースユニットの製造に当たっては、まず、性能目標が標準化され、ついで物の形においても標準化が行なわれます。標準化された部品等の組合せのなかに最大限の多様性を求めようとしますが、従来の標準設計による方法、つまり住戸全体を設計の形で標準化し、型系列の展開を通じて多様性を与える方法と大いに異なる点です。
標準設計は、発注者側にたつ設計者によって作成され、生産者はそれにもとづいて生産しました。この場合、標準設計は絶対的かつ非競争的であり、生産者と需要者とは直接の接触がありません。量産方式では、生産者が開発、製造した部品等を需要者側が選択し組み合わせることになるため、生産者間には競争原理が働き、需要の動向に生産者は敏感にならぎるをえません。ただし、今後の都市住宅は中高層の集団住宅の形式が主流となり、建築プロジェクトの単位は住戸ではなく、住戸を多数まとめた住戸群となります。したがって、実際上の生産者の相手は個人需要者ではなく、主に住戸群を集約してプロジェクトにまとめる中間需要者であるに違いありません。中間需要者とは現在の住宅公団や地方自治体あるいは民間建売、分譲住宅業者がそれであって、その機能は需要者要求の動向と技術進歩の最新の成果をよくつかんで、住宅の性能発注を誤りなく行なうところにあります。こうみてくると、住宅公団等がこれまで果たしてきた生産者的な機能はむしろ捨てて、住宅経営の主体として、さらには住民の生活改善に対する主体的なとりくみの高まりにつれて、居住者の要求を組織化し、これを住宅生産、住宅政策に反映させる住民の要求の代弁者として、需要者と生度者とを結ぶエージェントの役割に徹することが望まれるかもしれません。
将来の住宅生産のシステムをこのように画いてみると、住宅計画や設計の仕事も当然変化を受けざるをえません。住宅設計は在来のような包括的な設計ではなくなります。まず部品、部材、スペースユニットの設計とそれを組み合わせて住戸にまとめる組立設計とがあります。組立設計に体系性と一般性をもたせるものとして、住宅システム設計があります。住戸ユニットを利用した住戸群の計画は、建築設計者と都市計画者の共通の仕事の領域になります。住宅の構成は基本的には居住者に任されるべきではありますが、家族型に適合した住生活がうまく営めるように専門的な立場から助言、指導する住生活コンサルタントが出現することも望まれてきます。このような住宅の生産の企曲、計画から管理にいたる全プロセスの展開の中に、在来の標準設計の過程で蓄積された方法と経験がうけつがれ、発展させられることになります。
この変化の過程で、新しい量産住宅の生産主体が現在の建設業者よりもむしろ建築関連企業から生まれでる公算が大きいのですが、これら生産主体と、さきにのべた経営主体とのからみあった発展の中で、従来、建築生産と経営の全域をむすびつける重要な役割を果たしていた建築家が、形のうえでは、多様なポジションで異なった役割を営む専門技術者に分解されていくことが予測されます。

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