建築工事差止の仮処分

建物建築により日照を妨害され、その建築を止めさせたいと考えている人は、通常は、まず建築主側に直接工事の全部または一部を中止するよう申入れます。その申入れを聞き入れてくれればよいのですが、聞き入れてくれない場合には、実力行使によって工事を中止させることは許されず、裁判所へ申立てて中止させるほかありません。自力救済を禁止し、権利を有している者でも、それを実現するには民事訴訟の手続を経なければならないとされているためです。

スポンサード リンク
間取り

そこで、建築工事差止請求の訴えを裁判所へ提起することになりますが、訴訟は最終的に判決という形で結果が出ますが、判決が下されるまでかなりの年月が費されるのが普通で、早期に解決する例は極めて稀です。それは、裁判所での権利の存在の判断に誤りがあってはならないために、民事訴訟法では、第一審、控訴審、上告審という三審制を採用し、かつ各審級において慎重に判断されるからです。また訴えを提起しただけでは建築主側に工事を中断する義務は発生じません。
したがって、訴えの提起後も、工事を続行されると、判決が下される前に工事が完成してしまい、工事の差止めを求めるとの訴えの目的が失われ、完成された建物の撤去を求める訴えに変更せざるをえなくなります。一度、建物が完成してしまうと、その撤去請求は困難となり、また撤去請求が認められても、完成から撤去されるまでの間、日照の妨害を受けてしまいます。
このような訴訟遅延による不都合を回避するために認められている制度として仮処分があります。
仮処分には、係争物に関する仮処分と仮の地位を定める仮処分とがあります。係争物に関する仮処分は、金銭以外の物の給付を目的とする請求権について、その物の現状を維持して将来勝訴判決を得た際の強制執行の保全を目的とする仮処分で、仮の地位を定める仮処分は、争いのある権利関係について、訴訟による解決までに発生する回復しがたい損害や危険を回避するため、当事者間に紛争解決までの間の暫定的な地位を定めるものです。
建築工事差止めに関する仮処分は、この仮の地位を定める仮処分で、日照の妨害を受ける被害者が建築主側に対し工事差止を請求できる地位にあることを暫定的に定め、建築主側に工事差止を命じる仮処分です。
工事差止など仮の地位を定める仮処分が裁判所で命じられるためには、裁判によって確定されていない権利関係が存在すること、及び権利関係が未確定のために生じる著しい損害を避けたり、急迫で極めて乱暴な行為を防ぐなどの理由で、暫定的な権利関係を仮に定める必要があることが要件となります。
したがって、工事差止の仮処分申請では、日照妨害の程度が受忍限度を超えるもので、建築工事の差止請求権が発生すること、及び差止請求権を保全するために仮処分によって工事を差止ておく必要があることが要件となり、それらの事実について主張しなければなりません。差止請求権の発生については、受忍限度の各判断要素について具体的に主張することになります。
差止の必要性については、通常差止の対象となっている建物の部分が完成してしまうと、その部分の撤去は困難であることから、被害者の反対にもかかわらずその部分の工事を建築主側で強行しようとしていることや、工事の進行段階を主張する程度でかまいません。
仮処分申請が裁判所で認められるためには、この主張した事実を証書、人証その他の証拠によって疎明しなければなりません。疎明とは、裁判所に一応確からしいとの心証を与える程度の立証をすることで、訴訟で必要とされる証明より立証の程度が低くてよいとされています。その理由は、仮処分は訴訟で権利が確定するまでの暫定的な処分を命ずるものであることから、迅速な処理が要求されているからです。
疎明できれば工事差止が認められますが、その差止めの範囲については、建物のうち、受忍限度を超える被害を与える部分に限定されるので、ほとんどの場合に建物の一部ということになります。ただ建築主側と被害者との間で被害者の同意なしに着工しない旨の協定があり、この協定にもとづいて差止を求めている場合などでは、建物全部につき差止めが認められることもあります。

間取り
建築予定の告知/ 日照紛争に関する交渉/ 建築制限の合意/ 分譲地における建築制限/ 借地上建物の増築による日照被害/ 建築工事差止の仮処分/ 建築工事差止手続の準備/ 建物取壊し請求/ 塀による日照妨害/ 損害賠償請求の法的根拠/ 日照妨害による損害/ 公共施設による日照被害の補償/ 建築工事の妨害禁止/ 建築主側からの損害賠償の請求/ 眺望の価値/ 一般住宅の眺望/ 観光旅館と眺望/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサード リンク

プライバシーポリシー