一時使用の賃貸借の特性

Aが、学童の夏期講習に使うから貸してくれというので、たまたま空家になっていた私の貸家の一軒を賃貸しました。ところがAは夏休みが過ぎても家を返してくれず、逆に、いったん借りた以上は借家法で保護されるのだからむやみに明渡しはできない、しいて明け渡せというなら教室用に間仕切りをしたり、硝子戸を入れ替えたりしたからこれを買い取れといって難題をふっかけてきました。このような場合はどうしたらよいのでしょうか。
学童の夏期講習に使用させる目的で、建物を賃したとのことですが、賃貸借の目的が、夏期講習を行なうことだけに利用するためであり、したがって、その期間は日時までは明確でないにしても夏休み中に限っているものといえます。このように、数週間とか数カ月とかの短期間に限定して、契約を継続させない趣旨がそれ相当の理由から客観的に明示されている一時的な賃貸借を一時使用の賃貸借といいます。そして、このような使用関係には、借家法の適用はないものとされています。したがって「借家法で保護されているから明け渡さない」といっているAの主張は借家法の誤った理解によるものだといわなければなりません。賃貸人である家主は、夏休みが過ぎた今では、すでに約束の期間が過ぎているのですから、Aに対して明渡しを求めることができます。また、Aが借家期間中に夏期講習の使用に適するように建物に間仕切りをしたり、硝子戸を入れ替えたりした、いわゆる造作を、賃貸人である家主に買い取るように請求してきたことについても、Aには借家法上の造作買取請求権はなく、ただ、Aは自分がつけたもの、すなわち、間仕切りとか硝子戸を収去する権利および義務を持っているにすぎませんから、家主にとってはAのいずれの主張にも拘束されることはありません。

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間取り

家の賃貸借は、一般に借家法の適用を受け、また、賃料については地代家賃統制令の制限を受けます。本来賃貸借の内容は当事者が自由に取り決めることができるのが建前なのですが、家の貸借は人の日常生活の基盤となるるのであって、この関係が不安定ですと生活関係にもいろいろと悪い影響がもたらされる性質のものであるので、この関係を当事者の自由な話合いだけにまかせておいては、経済的に弱い借家人は家主にだけ都合のよい条件での契約しか獲得することができないと思われるからです。このため、家主の立場をいくぶん押えて借家人の立場を保護したのが特別法です。しかし、建物の使用の目的が、一時的で、そのうえに生活関係が本格的に根をおろしているとは思われない賃貸借については、当事者の自由を制限してまでも借家人を保護しなければならないほどのことはないと考えられますので、これらの借家関係にはこの特別法はいずれもその適用がないものとされています。この結果、借家契約が、一時使用の賃貸借であるか、ふつうの建物賃貸借であるかによって、その取扱に次のような重要な違いが生じてきますので、この区別はたいへん重要な意味を特っています。
甲が乙から建物を賃借していたが、後日、その建物の所有者が乙から丙に変わった場合に、甲は新しい建物所有者である丙に対して、建物を利用する権利があるのだと主張することができるかという問題について、借家法の適用を受けるふつうの賃借関係では、借家人がすでに建物の引渡しを受けていれば、そののちに建物の所有権を取得した者(丙)や地上権や抵当権などの物権を取得した者に対して、借家契約の効力を主張することができます。これに対して、一時使用の賃貸借では借家法の適用がないため、新しい建物所有者やその他の物権者に対しては、この賃貸借契約を登記しておかなければ、その効力を主張することはできません。
借家法の適用を受ける賃貸借契約については、契約の期間の短期に制限があります。すなわち、一年未満の期間を約束した賃貸借は期間についての約束がなかったらのとされ一年未満の期間は定めえないことになっています。これに反し、一時使用の賃貸借については、最短期についてなんら法律上の制限がありません。したがって、数カ月でも数日でも賃貸借の期間として契約することができます。また、借家法の適用ある賃貸借では、期間が満了しても、その前六ヵ月ないし一年内に当事者の一方から賃貸借を継続しない旨か、または、契約の条件を変更するのに同意しなければ継続をしない旨の通知をなされないかぎり、賃貸借契約は前の契約と同一の条件で継続するし、これらの拒絶の通知を賃貸人からする場合には、賃貸人が自らその建物を使用する必要があるなどの明渡しを求めるに足る正当な事由がなければできないこととされています。さらに、たとえこの拒絶があっても、期間満了の後なお賃借人が建物を利用している場合には、賃貸人が遅滞なくこれに対する異議を述べないとやはり契約は更新されてしまいます。これに対して、一時使用の賃貸借は、期間が満了する前に、賃貸人から賃借人に契約の更新拒絶の通知をしなかった場合でも、また、借家人が期間の経過したのちに相変わらず建物の利用を継続していたとしても、賃貸借契約が当然に更新されることはありません。ただ、約束の期間満了後なお借家人が建物の利用を継続しているときは、借家契約が更新されたものと推定される場合がありますが建物の利用が一時的なものであることが客観的に明確な場合ですから、この更新の推定は容易に覆えされるのが通常です。
借家法の適用を受けるふつうの賃貸借の場合には、借家人は、賃貸人の同意を受けて自分の費用で建物に付加した畳とか建具とかの造作物を、家主に時価で買い取るよう請求することが認められていますが、一時使用の賃貸借の場合には、このような権利は与えられていません。ただ、借家人は自分の付加した造作物を収去する権利が与えられているだけです。また、ふつうの賃貸借の場合には、経済事情が変動して、当事者開で約束してあった借賃がその後不相当となったときには、当事者は借賃の増減を請求することができますが、一時使用の賃貸借の場合には、たとえ当事者が約束した借賃が後日不相当となっても、この点についての当事者間の特約か取引界の慣習がないかぎり、増減変動を相手方に請求することは認められません。

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