解約申入と更新拒絶の要件

解約申入と更新拒絶は、同じように借家関係の消滅を欲する意思表示ですが、両者がもちいられる場合はそれぞれ異なります。解約申入は、一般に契約で借家期間を定めなかった場合になされます。もっとも、借家期間を定めた場合でも、次のような特別な場合には解約申入ができます。一年未満の期間を定めた場合、解約権が留保されている場合、借家人が破産の宣告を受けた場合です。もっとも、最後の場合には、解約申入について借家法一条の二の適用がないといわれています。
借家期間を定めない場合には、かつて民法六一七条によって家主は何時でも解約の申入ができたのですが、借家法は借家人保護の立場からこれを修正して、家主の解約申入の自由に制限をくわえました。その制限は、借家法一条の二によれば、「正当の事由」がなければ、家主は解約の申入をすることができない、と定めています。したがって、正当事由が家主の解約申入の要件となっているわけです。なお、借家人にはかかる制限がありませんから自由に解約申入ができます。

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家主は、正当事由があれば、いつでも解約の申入をすることができますが、さらに、借家法三条一項は、「六ヵ月前に」解約の申入をしなければならないとしています。この意味は、解約の申入をしたときから六ヵ月の猶予期間を経過すると、借家契約は消滅するという趣旨です。このような猶予期間をもうけた理由は、解約の申入は一般に期間の定めがない借家関係についてなされるので、借家人の予想しないときに解約申入があります。そこで、借家人が借家関係の終了のための準備をするだけの猶予期開か必要なのです。したがって、この期間を短縮する特約は無効です。例えば判例は、家屋の敷地を他に売却すると借家契約は消滅するという特約は、借家契約の経過年数のいかんをとわず無効であるとしています。
解約申入の形式については法律上の制限はありません。裁判外や家屋明渡訴訟や調停などで、解約申入の意思表示がなされることもありますし、また借家契約の存続を否定する意思表示も解約の意思表示を伴うと解されています。判例は、家屋明渡しを求める調停の申立は、賃貸借の存続と相容れないものであるから、特別の事情のないかぎり、その申立の理由のいかんをとわず、解約申入の意思表示を伴うとしています。また裁判外での解除の意思表示は、特別の事情のないかぎり、解約の申入をなす旨の暗黙の意思表示を伴う、としています。
なお、解約申入によって借家契約が消滅したのちに、借家人が建物の使用または収益を継続している場合に、家主が遅滞なく異議を述べないと、従前の借家契約が存続するものとみなされます。
更新拒絶は、契約で一年以上の借家期間を定めた場合に行なわれます。その意味は、期間の満了によって消滅する借家契約の継続を否認することです。例えば「期間が満了したら必ず家屋を明け渡してくれ」との意思表示は更新拒絶であり、また期間の定めのある賃貸借において解約申入、解除など賃貸借の存続を否定する趣旨の主張は、更新拒絶の通知を合むと解されます。更新拒絶は家主、借家人いずれからもできますが、家主が行なう場合には、解約申入の場合と同じように拒絶するにたる「正当事由」がなければなりません。しかし借家人が行なう場合には、正当事由がなくても更新を拒絶することができます。
次に、借家法二条一項によると、借家契約の更新を拒絶するには相手方に対して借家期間満了前の「六ヵ月ないし一年内」に拒絶の「通知」をしなければなりません。この六ヵ月ないし一年内という通知期間を短縮するというような特約は、家主については無効です。しかし借家人についてはかかる特約は有効です。さらに、この法定期間内に通知を行なわなかったり、また期間内に通知をしたとしても家主に正当事由がなかったりしますと、借家契約は自動的に更新され、前の借家契約と同一の条件で引き続いて契約をなしたものとみなされます。「みなす」というのは、当然に、自動的にという意味で、法律上強い効力をもちます。これがいわゆる「法定更新」とよばれているものです。
更新拒絶の通知がなされ、借家期間が満了して借家契約が消滅した場合でも、なお借家契約が更新されることがあります。この点について民法六一九条は、賃貸借契約の期間満了後も賃借人が建物の使用、収益を続けているのに、賃貸人が「それを知りながら」異議を述べないときは、前の賃貸借と同一の条件で契約を更新したものと「推定する」と定めていましたが、これが借家法二条二項で次のように修正されています。それによると、借家期間満了後も借家人が引き続いて建物を使用している場合に、家主が遅滞なく異議を述べなければ、前の賃貸借と同一の条件で契約をなしたものとみなす、として「法定更新」を認めています。だから、借家法の場合には、家主が建物使用の事実を知らなかったことを立証しても、契約は更新されます。なお、判例は、法文にいう「前賃貸借と同一の条件」の中には期間の定めは含まれないとしていますから、更新後は民法六一九条一項但書と同じように期間の定めのないものになります。
借家法二条は、前述の更新拒絶のほかに、「条件を変更しなければ更新しない旨の通知」をしないときにも、法定更新となるとしています。条件の変更とは契約内容の一部を変更することです。通知自休には「更新しない旨」を明示する必要はないとされています。また法文上、明示的ではないが、家主の条件変更の通知には、正当事由のあることが必要であると解されています。そして、このような通知をしなかったり、また家主が通知をしても正当事由がなかったりしますと、法定更新となるということや借家法二条二項の適用があるということは、ふつうの更新拒絶と同じです。そこで、この種の拒絶を条件付更新拒絶とよびます。
ただ、家主の条件変更の通知と借家人の承諾の有無との関係で、若干問題があります。まず第一は、家主の条件変更の通知が正当事由に基づかない場合ですが、これを借家人が拒絶してもしなくても法定更新となります。しかし、借家人がかかる家主の条件をすすんで承諾した場合には、合意による更新となります。第二は、家主の条件変更の通知が正当事由に基づく場合ですが、これを借家人が拒絶すると借家契約は期間満了によって消滅します。また借家人がこのような家主の条件を承諾すると合意による更新となります。そして借家人が承諾も拒絶もしないときは、異論もありますが借家契的は期間満了によって消滅すると解すべきでしょう。ただし家主の条件が正当事由に基づく場合でも、なおそれを承諾するかしないかの自由は依然として借家人にあります。ところで、このような条件変更の通知は、実際には期間満了を機会に家賃値上げとして行なわれることが多いでしょう。確かに家賃の変更は、他の条件と同じように契約条件の変更にあたりますが、家賃変更については、改正借家法のもとでは同法七条の問題として解決すべきで、契約の更新とは切り離して考えるべきでしょう。
後半の問題は、解約申込、更新拒絶をすれば、すぐに建物の明渡しを受けることができるか、ということですが、以上の説明からも明らかのように、通例すぐに明渡しを受けることができません。なぜなら解約申入、更新拒絶には、それぞれ申込期間、通知期間の制約がありますし、また家主の場合には正当事由の問題もあります。したがって、いくら家主が正当事出があると信じて解約申込、更新拒絶をしても、住宅難に苦しむ借家人は必ずしもそう信じません。そこで争いが起こり、問題は裁判所に持ちこまれます。とくに、最近の最高裁判所の正当事由に対する判断は、終戦直後の激しい住宅難の時代とはかなり異なる態度をとっているといわれています。それだけに、明渡しを受けることができるか否かは、裁判所の判断にかかっているといえましょう。

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