解約申入と更新拒絶に必要な正当事由

解約申入または更新拒絶には正当事由の存在が必要ですが、その正当事由とはどういうことをいうのでしょうか。正当事由とは、借家法一条の二によれば、家主が自ら使用することを必要とする場合その他正当の事由ある場合と定めています。問題となるのは、家主の自己使用の場合です。これについて裁判所は、当初、法文どおり家主に自己使用の必要があれば、それだけで正当事由ありとしていました。例えば、家主が自ら使用することを必要とする場合とは、必ずしも家主の利害が借家人の利害より大なることを要するものではないとしていました。ところが、第二次大戦の激化によって住宅難が深刻になると、大審院は従来の態度をあらためて、家主が自から使用することを必要とする場合とは、家主、借家人双方の利害得失を比較考察するの外なお進んで公益上社会上その他各般の事情をも斟酌して決すべきであると判示しています。そして、戦後もなお激しい住宅難が存在していたので、最高裁判所もこの新しい解釈を引き続いて採用しています。したがって今日でも、単に家主が自分のほうで使う必要があるというだけでは、正当事由を認めないという建前をとっています。もっとも裁判所にあらわれる家主、借家人の事情はそれぞれ複雑であり、多種多様ですから、どのような事情があれば正当事由となるかは、一見して明らかではありません。さらに、昭和三一年の地代家賃統制令の改正以降、裁判所の正当事由に対する判断のニュアンスも変わってきているようです。学者によっては、昭和三一年以降は借家法の危機で、最高裁の判決はその文言では家主、借家人双方の事情を考慮しているかのようにみせかけながら、その実体においては住宅事情の好転を口実に家主側に有利な判決をしている、とまでいわれています。
しかし、問題によっては、裁判所の態度がかなり明確な方向を示しているものもあります。例えば事業専用建物の借家関係については借家人の事情をほとんど考慮せずにもっぱら家主側の事情だけから正当事由を認定しています。またいわゆる新家主の場合には借家人に相当な移転先が保障されていない場合には家主の正当事由を認めないという態度をとっています。さらに、新家主に限らず、借家人に相当な移転先が保障されている場合には、家主の必要と比較されたうえではありますが、ほぼ 正当事由が認められる、といえるでしょう。これらは、借家法の課題が借家人の居住権の保護を主眼としていることから考えれば、当然でしょう。
ともあれ、家主と借家人の事情が具体的にどのように考慮されているかを知るには裁判例を手がかりとするのがよいと思います。

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