家賃の滞納、借家の使用方法での正当事由

家賃は毎月末日かぎり持参払という約束になっているにもかかわらず、借家人は請求しなければ家賃を持ってきません。しかし請求すれば、たいていは払ってくれます。それで家賃の滞納を理由に賃貸借契約を解除するわけにもいかず、そうかといって約束と違うので家主としては困っています。また借家人は平気で台所中にごみを投げちらかしたままにしておき、子供らが泥足で家の中を駆けずり回っても別に叱りもしません。こののような場合、その一つ一つの単独事情では契約解除の原因とすることは無理かと思われますが、こうしたいろいろの事情が重なりあえば解約申入の正当事由として取りあげることはできるのでしょうか。
法律的にみると、このような借家人の軽微な義務違反行為は、一つ一つでは契約を解除することはできません。判例も借家人の違反行為が「背信行為」とならないときは、契約を解除することができないとしています。

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正当事由の有無は、家主、借家人双方の一切の事情を比較して決めますから、本問のように家賃の支払が遅れたり、軽微な用法違反や保管義務違反となるような行為があれば、それが民法の解除原因とはならぬとしても、正当事由の有無を判定するさいの資料とはなります。そして、このような義務違反行為の総体によって正当事由が認められる場合もあります。判例も、これを認めて、借家人が二年四カ月の長期にわたって家賃を延滞し、そのうえ無断転貸をしたような場合には、家主は借家契約の更新を拒絶する正当事由があるとしています。また、下宿業を営む目的で賃貸した場合でも、下宿人が設備のない部屋で炊事をするので、延物の汚損が激しく、火災の危険も多いなどの事情があれば、解約の申入をすることができるとしています。
本間でも、右の判例のように正当事由が認められるでしょうか。この判例と本問を比較すると、本問ははるかにその義務違反の程度が軽いと思います。確かに用法違反の行為は、無神経とはいえ問題があると思いますが、これとても家屋にかなり重大な毀損を与えているようにも思われませんし、また家主がそのような行為の停止を求めたこともないようですから、本問にあらわれている諸事情を総合したとしても、ただちに正当事由があるとは思えません。もっとも、本問では、家主側の事情にはふれていませんが、もし家主の側にその家屋を必要とする特別の事情でもあれば、この違反行為とあわせて考慮されますから非常に有利になります。
もし、本問の諸事情を総合しても、家主に正当事由が認められない場合には、家主は泣き寝入りをしなければならないのでしょうか。そうではありません。解約ができないというだけで、家主としては、このような借家人の無神経な行為に対して法的な責任を追及することができます。家賃の支払の遅延については、遅延賠償を請求することができますし、用法違反や保管義務違反については、損害賠償を請求することができます。

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