一部の無断転貸と全部の契約解除

賃借家屋の一部について無断転貸が行なわれた場合に、賃貸借契約を全面的に解除することができるかどうかという問題は、間貸について起るのが通例ですが、二種の建物の賃貸借のうち一種の転貸などの場合にもおこりうる問題です。学説、判例は賃貸家屋の一部の無断譲渡を理由に契約の全面的解除を認めています。
その理由は、民法六一二条による契約の解除は無断譲渡、転貸が信頼関係を破るものであることを要件とするものであり、しかもその背信性は不可分のものであるから、契約の全面的解除を認めるのは当然であるといえるからです。最高裁判例も、借家人が、空襲により住居を失って困っていた夫婦に二階六畳一室を間貸した場合、「家屋の一部の転貸を理由として家屋全部の賃貸借を解除して戻り、権利濫用とはいえない」とし、また一個の契約で敷地番も異なる二種の独立した建物につき賃貸借がなされ、そのうち一棟の建物につき無断転貸が行なわれて解除原因が存する場合につき、「一個の賃貸借契約によって二棟の建物を賃貸した場合には、その賃貸借により、賃貸人、賃借人間に生ずる信頼関係は単一不可分であるこというまでもないから、その賃貸借関係全休の信任は裏切られたとみるべきである。したがって、賃貸人は契約の全部を解除して賃借人との間の賃貸借関係を終了させ、その関係を絶つことができる」とし、「他に別段の事情のない限り、賃貸人は賃貸借関係全部の解除権を取得する」と判示しています。
なお、最近、賃借地上の三種の建物のうち一種を他に売却するに伴い敷地の借地権を無断譲渡したことを理由とする契約の全面解除を認めたものがあります。

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一部の無断転貸に基づいての契約解除には、契約の全面的解除か否かの、どちらか一つであって、一部についてだけの契約の解除を認めないかどうか。民法六一二条による解除は、賃借人の背信行為の存否を判断の基準となすべきですから、全面的解除 か否かの二つのうち一つであって、一部解除を認める余地がないようにも解されますが、一部解除の可能性をまったく否定する理由もないと思います。学説は賃借物の可分、不可分、制裁としての軽重等から一部解除の可能性もまったく否定してはいません。そして判例にも、これを積極的に否定しているものは見当たりません。全面解除を認めた前記判例も「他に別段の事情のない限り、契約全部の解除権を取得する」という言い方をしています。以前には二者択一説をとっていましたが、一部解除を認めるだけの強い「特段の事情」のある場合には、それを認めてもよいと考えられます。しかし実際には、そういう場合はきわめて稀にしかおこらないでしょう。背信性の程度が、契約の全面的解除の制裁を課するには足りないような場合、一部解除が具体的妥当と考えられる特段の事情の存するときには、転貸のあった部分だけについて、契約の解除が許されてもよいのではないかと思います。そして前に述べた判例の事案などは、二棟の建物のうちの一棟について転貸が行なわれたという事情からして、むしろ一部解除を認めてもよく、またそのほうがいっそう具体的妥当な解釈ではなかったかと思われないでもありません。
借家法一条の二の「正当事由」による解約については、戦後はやくから判例、学説は、賃貸借契約の一部を消滅させ、一部の明渡しを認めています。しかし、先に述べたとおり、民法六一二条の無断譲渡、転貸を理由とする解除にはまだこのような判例は現われていません。
なお、最高裁は、土地二筆の賃貸借における一筆の用法違反の場合について、契約全部の解除を認めていますが、この事案もまた義務違反の程度から一部解除という方向で検討してみてもよかったのではないかと思われます。

借家人が、八畳、六畳、六畳、四畳半の四間の借家のうち八畳一間を、家主の私に無断で、他人に転貸しました。この場合、私は借家契約を全面的に解除することができるのですか。それとも無断転貸をした八畳一間の分だけしか解除ができないのですか。
借家人が八畳、六畳、六畳、四畳半の四間の借家のうち八畳一間を家主に無断で他人に転貸したとあります。その転貸の事情や態様がよくわかりませんが、もしそれが本当に転貸といえるものであり、かつ背信性を除去するに足りる特段の事情、例えば、借家人と間借人との間に近親関係があるとか、間借人が火災その他で住居に困窮しているとか、間貸が一時的のものであるとか、すでに間貸が終了していて将来そのおそれがないなどでしたら、家主はその無断転貸を理由に借家契約を全面的に解除することができます。
またもし、他人を長期間、高額の権利金または家賃より高い間代をとって置いているような場合であれば、その間貸(転貸)には、背信性が認められますから、全面的に契約の解除ができます。ただし、この場合でも、その一室だけの解除はできないと考えてよいでしょう。

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