建物の賃借人が共同事業者に建物を使用させる場合

私はAに建物を貸し、Aはその建物で喫茶店を営んでいましたが、経営が思わしくなくなったので、第三者Bを加入させてBとの共同事業とし、主としてBをその経営にあたらせているようです。このような場合、無断転貸として契約解除ができるでしょうか。
建物の賃借人が、共同経営者にその建物を使用させる場合、それが転貸になるかどうかは、共同経営の実態、使用の状況いかんにより異なり、一律に決せられない問題でありますが、一般にどういう場合に転貸になるかということ、そして、具体的場合について、無断転貸として契約解除を認めるかどうかは、賃貸人に対する背信性の有無によって決せられます。
一般に賃借権の譲渡または賃借物の転貸とは、第三者をして現実に賃借物を使用収益させることであり、それは第三者が、独立占有を取得することであると解されています。ゆえに借家人が妻子中使用人を同居させる場合などは転貸にあたらないことはいうまでもありません。
営業用建物の賃借人が第三者との共同経営を始める場合には、その共同経営において賃借人が主導的立場にあるときは、第三者は建物の独立占有を取得していないから、一般には転貸にはならないのです。しかし共同経営にあたる第三者が、賃借人と対等な立場ないし、みずから主導的立場に立つような場合には、第三者が賃借家屋の独立占有を取得し、従来の借家人が第三者と同等な立場ないし同居人のようなかたちになって、賃借家屋の使用について主従が顛倒したことになるのですから、転貸があったとみるべきでしょう。

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最高裁判例も、賃借家屋で喫茶店を開いていた借家人A会社が、トンカツ屋を共同経営する話合いのもとに、Bが調理販売を担当し、Aが場所、什器を提供して、売上高の五パーセントを取得する契約をして営業を始めた場合、「BはAとの共同経営の契約に基づいて、共同経営者の一人として、Aと対等な立場において建物の一階を飲食店経営のため占有使用していることがわかるのであって、Aの使用人その他Aの占有補助の機関として占有使用しているものでないことはもとより、Aに対する従属的な関係において占有使用しているものでないことは明らかである」とし、A会社の権限の範囲内で占有使用させているとした原審判決を破棄し、転貸を認定して賃貸人の解除を認めています。またカフェを営んでいた賃借人Aが営業不振のため、Bから出資を受け、Bが名義人かつAが管理人となるという共同経営契約のもとに、遊戯営業をしている事案につき、原審は解除を認めなかったが、最高裁はこの「出資、管理、等の語及びBが営業の名義人となったという事実等からみて、Bが営業の主人であり、AはBの為に管理する占有機関に過ぎないものと見る余地も十分にあり、又それ程でなくとも、共同使用、共同占有等の関係があるものと認むべき場合であるかもしれない」として、だいたい解除を容認する態度を示しています。
このように共同経営にあたる者が、賃借人と対等の地位ないし自ら主導的立場に立つような場合には、転貸があったとみるべきであろうと思います。下級審判例も、家屋の賃借人が使用人に店舗を完全にまかせ、自分は営業利益の三割を受けている場合に、家主の転貸を認めています。
しかし転貸があっても、それが背信行為とみられない特段の事情があるときは、民法六一二条二項による解除権は発生しないことはもとよりでありますが、最高裁判例の二事案はともに営業の種類も変わっており、したがって賃借家屋の使用方法においても、従前よりは賃貸人の経済的利益を害するおそれがあるとみられるのであり、他に背信性を除去するような特段の事情も認められないのでありますから、この二事案の無断転貸は、背信行為にあたるものとして、賃貸人の契約解除は是認できると思います。
これに反し、共同経営において原質借人が依然、主導的地位にあるとき、したがって賃借家屋 の使用において独立占有の地位にあるときは転貸がないとして解除を認めない判例としては、借家人AはBと共同で工場を経営、Bに二階を転貸したが、それは共同 事業のためになされたものであり、かつAが共同事業上、依然、主要な地位を占めている場合、該転貸借は事業のためになされたもので、当初からあらかじめ家主の承諾があったとすべきだとして家主の契約解除を認めていません。もっとも、これは承諾の有無の問題ではなく、共同経営者の使用収益が賃借人自身の使用収益権限の範囲内のものとして転貸とならないとすべきであります。
さて本問にあっては、借家人Aはその建物で喫茶店を営んでいましたが、経営が思わしくなくなったので、第三者Bを加入させてBとの共同経営とし、主としてBをその経営にあたらせているとのことでありますから、この場合は、共同経営にあたる第三者Bが借家人Aと対等な立場ないし自ら主導的立場に立っているように思われますので、転貸があったとみるべきではないかと思われます。しかもこの場合、共同経営、転貸の事情としては、経営の不振ということでありますけれども、ただそれだけでは、この無断転貸が信頼関係を破らないものであること、つまり背信行為と認めるに足りない特段の事情があるとも思われませんから、この場合、無断転貸を理由としてAとの契約の解除ができます。

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