移転料、更新料、名義書換料の意味

借家の契約関係は、民法では賃貸借契約といわれるもので、民法六〇一条によれば、貸主が「或物の使用及び収益を為さしめ」、借主が「之に賃金を支払ふこと」を約束することにより成立するとされています。しかし、実際の借家契約においては、いろいろな名目で、賃金(賃料)以外の金銭が授受されています。そうした金銭のうちには、契約締結の際に授受される権利金、敷金と、契約の途中、または終了の際に授受される移転料、更新料、承認料等があります。
もっぱら人に貸して家賃収入をあてにする借家の場合は別として、賃家人としても、自ら使用するとか、他の特別の人に貸したいという理由で、借家を加えしてもらう必要の出てくることがあります。ところが、借家人の権利は、借家法によって強く保障されていて、借家契約に期間の定めがあって、その期間が満了する場合、賃家人が六ヵ月前に明渡しを請求しても、貸家人に明渡しを必要とする正当な事由がないと、借家契約は法律上当然に更新されたことになり、明渡しは認められません。期間の定めのない借家契約において、貸家人が急にその家を必要とするので、六ヵ月の予告期間をおいて解約の申入をする揚合にも、家主に正当事由がなければ明渡しは認められないとされています。

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借家の明渡しを欲する貸家人は、期間の定めがあれば期間満了の六ヵ月前、期間の定めがなければ適宜六ヵ月の予告期間をおいて、借家人に明渡しを請求することになるわけですが、借家人側としても、おいそれと適当な転居先がみつけられるわけではなく、簡単には明渡しに応じられないのがふつうでしょう。最終的には訴訟で、貸家人側に正当事由があるかどうかの判断をあおぐことになるわけですが、裁判所の判断が出るまでには、相当の時間と金がかかるうえ、訴訟をすることは当事者双方にとって精神的にも愉快なことではありません。そこで、一定の金銭の授受によって、明渡しの交渉を円滑にしようというので生まれてきたのが、移転料あるいは立退料といわれるものです。
移転料の支払は、単に期間が満了して更新を拒絶する場合とか、解約申込の場合のみならず、存続期間中貸家人が急に借家を必要とする場合とか、期間が満了し借家人が明け渡すことに同意しながら、なお頑張っているような場合にもなされることがあります。したがって、移転料の額も一律ではなく、これといった基準もないようです。要するに、貸家人と借家人の交渉次第です。しいていえば、貸家人側がどれだけ当該家屋を必要としているかにかかっているといえるでしょう。
このように、移転料は、法律的に明渡しを請求できるかどうかとは別個の観点から、授受されるものであって、極端にいえば、法律的な明渡請求の可能性を無視して明渡しを実現するための手段ですから、借家人が裁判所に訴えてとれるというものではありません。しかし、調停とか和解においては、当事者の意思の合致が優先しますから、調停とか和解によって、明渡しの合意が成立する場合には、必ずといってよいほど、立退料の支払が条件とされています。さらに、明渡訴訟において、家主が、これこれの移転料を提供するから明け渡せという請求をしてきた場合、裁判所は正当事由を補強するものとして、移転料の支払を条件として明け渡せという判決をすることもあります。
これに対して、更新料といわれているのは、借家期間が定まっている契約において、期間が満了したが、その後も引き続き借家を使用したいという場合に、契約更新の対価として、借家人から家主に支払われる金銭のことです。本来、借家契約は期間の定めがあって、その期間が満了した場合でも、貸家人に特にその家屋を必要とする正当な事由がないかぎり、前の契約と同一の条件で自動的に契約が更新されるわけです。ところが、現在多くの借家契約においては、契約締結のさいに、期間に応じて権利金が授受されており、その期間が満了した場合、家主は更新される期間に応じて、権利金にあたるものを更新料として請求するわけです。ただし、権利金よりはずっと少額です。正当の事由がないかぎりは契約は自動的に更新されるわけですから、貸家人は更新料を要求する法律的な根拠はまったくなく、また、契約当初に授受される権利金のように、払わなければ貸さないというかたちで支払を事実上強制する手段もないわけです。したがって、正当事由があるとされないかぎり、借家人は更新料の支払を拒絶しても法律的にはかまわないわけですが、もし正当事由があるとされれば明け渡さなければならないので、明渡しの請求をされる危険を除く意味で、あるいは正当事由の有無の訴訟をさける意味で、貸家人側の要求にも基づいて支払われているようです。貸求人側では、確実に更新料をとるために、契約を更新した場合にはこれこれの更新料を支払うという契約条項を契約書に書くことがあります。
借家権は、賃貸人たる家主の承諾がなければ譲渡したり、転貸することができません。もし、これに違反して無断で譲渡、転貸すれば、家主は契約を解除することができます。しかし、借家人としては、せっかく権利金を支払って手に入れた借家の権利を、自分が不要になった場合、そのまま家主に返せば権利金はもどってきませんから、権利を人に譲ったり、人にまた貸して権利金の一部なりとも回収することができればそれにこしたことはないわけです。そうした場合、借家権を譲ることの承諾を家主に求めても、家主はなかなか承諾しないでしょう。なぜなら家主としては、借家を加えしてもらって、あらためて権利金をとり、より高い家賃をとって、自ら別の人に貸すほうが有利だからです。しかし、どうしても承諾してほしいと要求すれば、家主はいくらいくら出すならば承諾しようという条件を出してきます。家主の要求するこの承諾の対価を、承諾料とか、譲渡すれば借家人の名義の変更をするという意味で名義書換料とよんでいます。名義書換料は、もし支払わず無断で借家人が交代すれば契約を解除されるおそれもあるわけですから、更新料とちがって支払を要求され、かつどうしても承諾がほしければ、支払わざるをえないでしょう。名義書換料も法律的には根拠のないものですが、支払わなければ契約を解除されるおそれがある、ということが背景となって、現実に授受されているわけです。

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