移転料、立退料の算定方法

立退料の経済的性質については、いろいろな説があります。主なものとしては、借家権買戻対価説、移転補償費説、貸家明渡訴訟の場合の正当事由補強説、などが挙げられます。借家権買戻対価説の場合については、借家権の鑑定評価ということで、不動産の鑑定評価基準のなかに示されていますので、問題はないのですが、その他については、特に貸家明渡訴訟の場合の正当事由補強説については、正式の鑑定評価はできないといえるでしょう。
家主側に正当な解約事由がなく、また契約更新拒絶もできないような場合に、借家人を立ち退かせる一つの方法として、借家人に帰属しているとみられる借家権を家主が買い取る方法が考えられます。ここであらかじめ注意したいのは、借家権価格というものは、その形成要因がきわめて複雑で、長い期間の間に契約の硬直性等のために実際の支払家賃が建物およびその敷地の経済的賃料に追随し得なくなって生じたものや、借家人が建物の修繕費などの必要費や有益費等を長い間立て替えてきたことによってその対価的なものが含められるようになったとか、また店舗の場合などは暖簾代、造作代、営業権の対価等を含むことがあり、その評価は非常に困難なものとされているということです。また借家権取引の慣行、その慣行の成熟の度合等についても、借地権のそれらと比べ、地域的な格差も大きく個別性も非常に強いので、画一的な慣行割合で一律に判断することも不可能なことです。ここでは、営業権の対価、暖簾代、造作代等の含まれない単純な借家権価格について述べることにしますが、これについての鑑定評価基準は次の三つの価格を関連づけて得た価格を標準とし、授受された借家権利金の額や、いろいろな契約内容、条件等を総合考量して定めることとされています。

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間取り

(1)建物およびその敷地の完全所有権価格から当該、貸家およびその敷地の収益価格を控除した価格、貸家およびその敷地の収益価格とは、いわば家主に帰属する価格、家賃から家主の負担する諸経費を差し引いた純収益を資本還元して求めた価格、いいかえればその純収益をうみ出す元本価格 で、これが家主に帰属する価格とみられるわけですから、これを当該建物および敷地の完全所有権価格から差し引けば、借家人に帰属する価格の目安が得られるわけです。
(2)比率価格、近隣に借家権の取引事例を求め、その取引価格に比率して当該借家権価格を評定するもの。
(3)当該建物およびその敷地の価格に近隣における借家権割合を乗じた価格
以上、三つの価格を関連づけた価格を標準とし、最近、授受された権利金があればその額やその他いろいろな事項を総合的に考慮して決めるわけです。以上、三つの価格を関連づけるという必要性は、(1)の場合については、現実の家賃が非常に安い場合は、控除される収益価格が非常に低くなり、したがって借家人に帰属する分が過大になりすぎる嫌いがあるということ、(2)の場合は、借家権の取引価格に、営業権の対価、暖簾代、造作代などが入りまじっている場合が多いことに注意しなければならないということ、また(3)の借家権割合なるものは、借地権割合に比べ地域的にも成熟したものが少なく、かつ一般化していないだけに説得力も弱いという欠点がある、したがって以上それぞれの持つ欠点を補い合う必要があるとみられるからです。なお、(3)の場合の一応の目安としては、相続税評価基準や東京都の公有財産規則等では、建物価格の四割と敷地の借地権価格の四割とを合計したものとされており、民間評価先例では、建物価格の五割と借地権価格の二割ないし六割との合計とされた例が多いようです。
住宅の場合と店舗の場合とにわけて考えてみましょう。
住宅の場合の立退料、従来の住宅と立地条件の似た同規模の別な建物に移転させる場合は、新旧両建物についての実質賃料の差額が一応標準となります。実質賃料の内訳としては、権利金、敷金、保証金等の預り金、毎月の家賃の三つが考えられます。
権利金については、移転先に支払わなければならない額となります。ただ従来の権利金が解約に際して期間配分して割り戻される例があり、そのような場合にはその割戻額を控除した額となるでしょう。
敷金、保証金等の預り金については、新旧の預り金の差額。ただし、預り金のなかには、解約に際して償却ということで一部返還されないものがあり、これは、前述の権利金と同じです。したがって、敷金、保証金等の預り金についても差額預り金実費ということになります。
毎月の家賃については、新旧差額家賃ということになりますが、その何カ月分をみるかについては、その二年分とした先例と、四年分とした先例とがあります。
以上のほか、プラスアルファとしての、引越しに伴う荷造費や運搬費については、一応客観的な額が評定されるでしょう。庭木の補償料や、ごたごたしたり煩わしい思いをしたりといった精神的苦痛に対する慰謝料などについては、鑑定評価の対象とはなり得ません。
店舗の場合の立退料、明らかに借家権価格の認められるものについては、借家権価格と営業補償料とを加えたものであるということになります。
借家権価格、この場合の借家権価格は前に述べたところと同じく、同種の店舗を近隣に求める場合の実質賃料の差額補償費が基準となりましょう。
営業補償料、この場合の営業補償料については、特に小売店舗等の場合に考えられる得意先喪失補償というややこしい問題があります。場所を変える場合は、移転期間中に生ずるであろう直接的な営業上の損失と、移転先において生ずるであろう将来の営業損先を補償しなければならないことになるでしょう。この損失補償の計算は、従来の売上高、その売上高に対する純利益率、固定経費率等により一定期間について見積もられることになります。また同種の営業を再開する場合と、転業せざるを得ない場合とで、その補償額に差違がでてくることになるでしょう。

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