名義書換料の算定方法

名義書換料といえば、通常、借地名義人が変わる場合に地主にその承諾料として支払われる金銭のことをいいます。借地名義人が変わる場合といえば、戦災直後の焼跡の借地権売買のように、借地権だけの譲渡もあり得ますが、通常の場合は、借地上の建物の売買のように建物の所有権の移転に伴って借地権の名義も変わることが多いわけです。
借地名義の書換料は、東京、大阪などの大都市では、借地権価格の一〇〜一五%、地方都市では、五〜八%程度が慣行的な額となっているようですが、理論的にどの程度の額が適正なものといえるのか、正式に鑑定評価といえないまでも、客観的な一応のめどを評定することもなかなか困難なようです。私は、旧借地人が利得する金額のうち、地主にどれくらい配分したら当事者間の衡平の原則が保たれるか、といった観点で、一応のめどを評定すべきではないかと考えています。具体的にいえば、その借地権価格が自然発生的なものであれば、譲渡人の利得は大きいから平均的な額より多い額を地主に配分してやるべきであり、創設的借地権、当初その地主に借地権利金を支払ったような場合や、継受的借地権、第三者から買い受けたような場合であれば、自然発生的借地権の場合に比べて、その差益は少ないから、平均的な額より少なくてもよいし、また地代が従来、格安であったかどうかなども、その額を決める判断の一つの材料とすべきではないかと考えています。

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借家権の取引の慣行は、借地権取引の慣行に比べ全般的にはその慣行は成熟していないとみるべきで、地域的にも非常に限られているようです。
借家権の譲渡も、もちろん家主の承諾を得なければならないわけですが、借地権の譲渡の場合と違う大きな特色は、その承諾が、あらかじめとりつけてある場合が多いことでしょう。すなわち、その時点で家主の承諾を求めるのではなく、あらかじめその承諾を得ている場合が多いということです。俗に譲渡権利などとよばれるゆえんのものも、このへんの事情を物語るものと思われます。したがって自然発生的な借家権については少なく、ほとんどが有償で借家権を設定したもの、いわゆる借家権利金を支払って借家権を取得したものについて、その取得した時点で将来の名義書換、借家権の譲渡が承諾され、その書換料、承諾料の額も取り決められるケースが多いことになります。したがってこのような借家権利金は、譲渡自由という権利が特別につけ加えられた借家権価権ともいえましょう。
さて、借家権譲渡の場合の承諾料、すなわち借家名義書換料も、借地名義書換料が慣行的には借地権価格の一〇〜一五%または五〜八%といわれるように、借家権価格の何パーセントというふうに評定されるものかどうかというと、そう簡単にはゆかないようです。ということは、借家権価格というものは、その形成の要因がきわめて複雑で、店舗の場合には営業権の対価や暖簾代、造作代等を含んでいることがあるといわれるからです。すなわち、特殊な場所的利益や、永年老舗として世間に著名であったというような営業上の要素に対する評価として支払われる金銭や、またはこれら無形の経済的価値のほかに既設の飾窓、陳列棚その他有形的な造作を加えて一体とし、それらに対する対価として支払われる金銭も含まれる場合があるわけです。
賃料の鑑定評価では、これら営業権の対価や、暖簾代、造作代といったようなものは、たとえ賃貸借等にあたって授受されるものであっても賃料とは一応無関係なものとして実質賃料の概念にも入れておりません。これらのものは、不動産そのものの経済価値とはみられないので鑑定評価のち外におかれるわけです。
ただ、前に述べた譲渡権利とよばれる権利の譲渡に当たっては、その承諾の対価としてあらかじめ取り決められる名義書換料は、慣行的には、売買価格の一割という例が多く、また造作代の一割とした例もあります。ところが売買価格の一割といった場合の売買価格を調べてみると、営業権の対価的なものが多く含まれ、ふつうの借家権価格を上回った価格が多いのです。したがって売買価格の一割という書換承諾料のなかには、それら営業権的なもののウエートが大きいということになるわけです。
単純な借家権価格の評価については、別記したとおりです。名義書換料がその何パーセントというのであれば、これを鑑定評価することはできますが、これが前に述べた営業権の対価や暖簾代、造作代を含んだ複雑なものであれば、鑑定評価は困難であるというべきでしょう。

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