造作買取請求権の効果

私が造作買収請求権を行使したら、家主は、もう自分が買い取って自分のものになったのだから造作に手を触れるな、ぐずぐずいうなら外して持ってゆくといいます。まだ引越しも終わらない前にそんなことをされてはたまりません。どうしたらいいのでしょか。
この場合では、借家関係が終了し、借家人が造作買取請求権を行使したが、まだ借家の明渡し、したがって造作の家主への引渡しが行なわれない状態についての問題だと思います。そこで、造作買収請求権の行使は有効なものと前提して問題を考えていきましょう。問題は、借家人の買取請求に対して、家主がまだ造作代金を支払っていない場合と、すでにこれを支払った場合とに分かれます。
買取代金がまだ支払われていない場合。この場合は、ちょうど、ふつうの動産、例えば時計について、売買契約は成立したが、まだ代金の支払も時計の引渡しもなされていない状態に匹敵します。この場合にも、物権の変動は当事者の意思表示のみに因りて其の効力を生ずるという日本民法の建前からいえば、たしかに家主(買主)のいうとおり造作は彼の所有物になっている、ということに一応はなります。しかし、そうはいっても、家主(買主)が代金を支払うまでは、借家人(売主)は、造作時の引渡しを拒絶し、かつ、これを自分の手もとに留め置くのに必要な範囲で使用できるわけです。それゆえ、造作は家主のものになっているといっても、それは形式的なもので、「造作に手を触れるな」とか「ぐずぐずいうなら外してもってゆく」とかいう家主の言い分は、この場合には、まったく根拠のないものだ、ということになります。

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買取代金がすでに支払われている場合。この場合は、造作について、売買契約が成立しただけでなく、代金も支払われたのに、売主が時計を引き渡さない場合に匹敵します。この場合には、造作が一応家主(買主)のものになっているだけでなく、借家人(売主)には造作の引渡しを拒絶すべきなんの権利もないわけです。つまり、借家人は、借家権がすでに消滅しているのですから借家をただちに明け渡すべき義務があるとともに、買収請求の効果として、造作をただちに家主に引き渡すべき義務もあるわけです。この場合には、「造作に勝手に手を触れるな」という家主の言い分も、造作を即刻引き渡せという主張の意味でならば、正当であるといわざるをえないわけです。
だからといって、造作の売買で、すでに代金が支払われ、売主は義務があるのに造作を引き渡さない場合に、買主が実力を行使して造作を売主から奪取することは許されません。買主があえてこれをすると、私法上は、売主の占有権を妨げたことになって、売主は、占有回収の訴を行使して、一応は時計を取り戻せますし、また、刑法上は、買主が窃盗罪ないし強盗罪に問われることになります。造作買収の場合の家主および借家人の立場も、これと同じことになります。
したがって、本問のような場合には、家主としては、たとえすでに代金も払って、造作の引渡しを受ける権利をもっていても、借家人がどうしても自発的に引き渡さないときは、実力行使で「外して持ってゆく」ことなどは避け、訴訟によって、家屋の明渡しにあわせて造作の引渡しを求めるようにしなければなりません。他方、借家人としては、借家の明渡しの義務のみならず、代金の支払を受けているかぎり造作の引渡しの義務もあるのですから、すみやかにそれを履行するよりしかたがありません。ぐずぐず頑張ってみても、訴訟になれば結局は負けるのですし、明渡しや引渡しが遅れれば遅れるだけ、義務不履行を理由として家主に支払わねばならない損害賠償額が増大するのです。

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